襲撃
そんな私の方を見て、ケイトは「訂正しろ」とか「馬鹿じゃない」と延々喚き散らかすもので、見掛けによらずプライドが高いのだと実感させられる。魔法使いってファンタジーモノだとプライドが高かったり、高飛車で人を見下す性格で書かれてることもあるけど、まさしくケイトはその類いの人間だ。
彼は錬金術士として、それ以上にガルゼンのパーティメンバーとして少なからず自分に誇りを持っている節がある。決して見下すような発言はしてないけど、実験とやらが成功し功績を残せばそれにすがり続ける彼の姿が容易に想像できる。
「なんですぐ人の事を馬鹿っていうんですか。そういうの魔物の貴女より知識は持っていると思うのですが。」
「うーん……」
私はケイトの質問に少しばかり考えることになった。確かにケイトはこの世界の住民として、この世界の理だとか地理だとかそう言ったものに詳しいのは百も承知だ。
そんなの住んでる年数が違うんだから当たり前だと思っているし、なんならその知識を教わりたいと思っているくらいである。
「やっぱ馬鹿だからじゃないかな。うん。」
「……は?」
だけど私が言いたいのはそういうことじゃない。とはいえこのまま口論を続けてもただただ平行線を辿りそうだし、何よりあちらさんがそれを許してくれそうになかった。
「はぐらかしてないでちゃんと納得できる理由を述べてください!」
「……。」
──気配感知が反応している。横で愚痴垂れているケイトとは別に、背後から何かが真っ直ぐ近づいてくるようだった。私はケイトを無視して気配のする方へ振り向き、すぐさま[デッドレコード]を当てた。姿が見えなくても相手の素性を割り出せるものであり、情報戦でアドバンテージを取るのに欠かせないものになっている。
《オイルコック》ランクD+
〈可燃性の油を排泄する巨大な蜚蠊で、その油を利用した《炎焔》属性の攻撃を行う。食事の際にも好んで炎を扱い焼けた食材を食すとされ、学者は人間の生活に紛れ込んだ蜚蠊が何処かでその文明を吸収したのではないかと推測している。〉
[デッドレコード]に頼んだところ帰ってきた答えが以上の解説だった。D+ランクと高くなく単体なら苦戦することなく倒せる筈だ。気配感知に引っ掛かった瞬間相手の特徴を掴めるというのはかなり便利だよな。
だが百聞は一見に然ずとも言うし、実際のサイズやスキルを目にしたわけでもない。ランクが低いからといって警戒は解かず、アドバンテージを生かした安定行動を取ることにしよう。
「なっ……なにか来る!!」
すぐ近くからガサガサと草木を掻き分ける音がしたことでケイトも敵襲に気づき、背中に納めてあった茶色の木の杖を手に構える。見た目は何の変哲もないように見えるが、とっさに構えたあたりあの杖が本来の武器ってことか。ざっとどんな物か確認したかったが、カサカサと猛スピードで突っ込んでくる銀色の何かを見てしまってそれどころではなかった。
「!!」
「なっ……危ない!」
大きく横に跳んで回避した私達の間を倍以上の体格をした銀色の甲殻を持つ虫らしきものが駆け抜けていった。光を反射して輝くそれは新品同然の金属の鎧であり、その見た目からして物理防御力はかなり高そうに見える。
再度[デッドレコード]を当てた結果、このモンスターが間違いなく《オイルコック》だということを把握した。油というか金属的な見た目をしてるけど、コックってあれか?鉄人シェフ的なあれかな?
そんで解説を見ると人間的な行動をするとかあったけど、これが食材を料理するん?見た目どうみてもダンゴムシっていうか説明文通りゴキブリだけどね……トラック並みの大きさをした知性の欠片も感じさせない、どっちかと言うと猪突猛進といった風に立ち塞がるものを粉砕するという本能だけで動いてそうなモンスターだった。
少なくともその見た目から料理人というのはギャップが強すぎる。
『クキキキキキキ』
《オイルコック》が牙を鳴らし、不気味な音を出してこちらを威嚇する。ご丁寧に顔まで鉄に覆われているかのように銀色で、メカメカしく目は真っ赤でツルツルだ。ゴキブリとかコオロギに見られる触覚らしきものは伸びていない。
というかあれ、何処かで見たことある姿してるな。ああ、オ○ム……もしかしてあの王○なのか?あれと違って殻は銀色だが眼が赤くなる特徴は似通っている。それにモチーフになってる物は違えど分厚い外殻を纏う姿がダンゴムシにしか見えない点は完全に一致している。
……確かあっちはそういや人工的に造られた生物なんだっけ?こっちはこっちでゴキブリの見た目をした機械にしか見えないけどね。関連性はあったりするんだろうか。
『グギィッ!!』
物思いに耽っていた私に向かって、異常なまでに興奮している《オイルコック》が口からボウリングの玉くらいの大きさの何かを勢い良く吐き出した。大きく軌道が逸れて当たらなかったものの、通知が間に合わなかったあたり予備動作を見て判断することがかなり難しそうだ。
《ヘヴィオイル》
〈粘性の強い油の塊を相手に向かって吐き出す攻撃。着弾した後は性質が変わるのか、空気に触れると発火する。〉
あの予備動作のないスキルの通知が今になって届く。正直手遅れではあるがスキルの説明をしてくれるだけありがたいと前向きに考えるべきか。
恐らくあれが《オイルコック》のメインウェポンにあたるスキルなのだろう。硬くて速くて遠距離攻撃持ちは総じて強い。そうウィキペディアにも書かれているし結構苦戦する事になりそうだ。
新作のほうを書き上げていて相当期間が開きました……まじすんません(。・ω・。)
気づかぬ間にアクセスも増えて感謝しかないですほんと……




