一角幻獣モドキ
毒を受けているような感覚はしていないが、一応念のためステータスを確認しておくことにしよう。
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名称.《レン》
種族.《ゲノムシーカー》
ランクD+
状態.《通常》
Hexagram.《6》
ATK.38
DEF.48
BMP.32
SPD.45
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……よし、見た限りステータスに異常はなさそうだ。
多分FFは有効だろうし、私の不名誉な称号《吐瀉の姫》が仕事してくれたのだろう。この耐性スキル、普通に優秀なんだよね。
名 前 さ え 違 っ て た ら な !
私は一度ため息をついて気持ちを切り替え、《ゼプラコーン》の方へ向き直った。
奴はしっかり毒を貰っているみたいで、バタバタとのたうち回りながら毒を吐こうと必死になっているのが目に見えてわかる。
「ギャプウウウウウウ!!!」
《ゼプラコーン》が蹄で地面を踏み鳴らしながら、《アースクエイク》をがむしゃらに放つ。衝撃波を受けた数本の木が圧に負けて根本から倒れていた。思ったより余裕がなく焦ったが、木の幹を蹴りあげて足場にしながら、衝撃波そのものは回避する。
その様子を恨めしそうな目で睨み付ける《ゼプラコーン》。無理に動いただけあって、もう余裕ないだろ。自分で自分の寿命をすり減らしてるようじゃわけないな。
「……ギャルルルッ。」
《ゼプラコーン》が赤い瞳でこちらをじっと見つめながら短く鳴いた。あれ……なんか大人しくなった?さっきまでの暴れようが嘘のように、その場でじっと耐えているようだった。毒が回って動けなくなったんならいいんだが、どうもそれだけじゃない気がする。
刹那─金色の角が禍々しく、真っ赤に輝いた。
《絶唱のコルネット》
〈自分のHPとMP.そしてありったけの憎悪を詰め込み、相手を粉砕するためだけに突進する。【追い詰められた獣は必ず、一矢報いる策を持っている。】
またこのスキルを持つモンスターの角から作られる《呪神楽カプリコーネ》は聴いた者を呪う楽器として恐れられ、現在は制作することを全面的に禁止されている。〉
……最後の最後でえげつないもんをぶつけてくるつもりのようだ。ものすごーく簡単に言えば道連れ。死なばもろともってやつだ。
…………
……アイエエエエエッ!?何故私!なんで私なんですか!?ワッツじゃなくてホワイ!?WTF!?私なにもしてないじゃん!なんもしてないのにそんな憎悪向けられてもお門違いといいますか……その……
「ギャプウウウウウウ!!!」
やめてくれぇ──────ッッッッ!?
「ア“ァ“ァ“ァ“ァ“ァ“ッ!?」
逃げることもままならなかった私の左胸の上を《ゼプラコーン》の角が思い切り貫き、そのまま止まらず引っ張られていく。
鋭い痛みに叫びを上げながら、両手で角をへし折ろうと必死になっていた。角は背中まできっちり貫通していて、そのお陰かなんかで出血することはなかったようだ。それでも気休めにしかならんし全然解決してないんですけどぉ!!?
「ギャプウウウウウウ!!!」
私を殺すという本能で走り回る《ゼプラコーン》の角は明らか呪われているかのようで、触れると焼けるような熱さと爛れたようにヒリヒリした痛みが襲ってくる。
───痛いっ……!!腕に力が入らない。
「クルッ!!クオァァァッ!!」
スバルが奴の後頭部を掴み、必死に引き剥がそうとしてくれているが力の差なのかびくともしない。
やめっ……痛いんじゃこの野郎!!!
「プヒィッ!?」
奴の顔面目掛けて《吐血攻撃》を放ってみたが、驚いたような声を上げるだけで変わらず走り続けていやがった。
……これじゃダメ!!何か……何かこの場を脱するスキルがあれば!!
私は必死に自分のスキル欄を追い、あるひとつのスキルに目が止まった。
《血のドーピング》
〈全身を流れる血液を一部分に集中させることで飛躍的に身体能力を高めるスキル。使用時間が長すぎると様々なデメリットがあるが、不死者に対してはそのデメリットがないため、アンデッドはこのスキルを自然に行使している。
因みに酷使すると最悪血管が破裂する。〉
なんだあるじゃん。この状況を打破する最高のスキルってやつがさ。私の貧弱な腕力じゃ敵わないこいつも……殺れる。
全神経を両手に集中させ、角をへし折るっ!!
「ブギャアッ!!!?」
突然の圧力に怯んだ《ゼプラコーン》の脚が止まった。私の手を振りほどこうと必死に暴れまわっていたが、このくらいじゃ振り落とされない!!
痛いのがなんだ!呪いがなんだ血管破裂がなんぼのもんじゃい!!ここでやらなきゃ死ぬだけなんだよ!!
私の両腕が想定外の圧力に膨らみ、血管が隆起する。既に呪いによる熱により、指は動かせないところまできてしまっているが、今さらそんなこと気にしてはいられまい。今は……
今は奴の角を折るっっっっ!!!
「ギャパアァァァァァァ!!!!」
バキッという音と共に、不恰好にも真ん中で角が折れたのだ。支えを失った私の身体が勢いよく投げ出され、地面を転がる。うぐっ……全身が痛いよお。
「オオオオオグオッ!?ギャプウウウウウウ!!!?パッ……パッ……」
どうやら呪い殺す前に先に毒が回りきってしまったか。悔しそうな目をこちらに向けたまま、《ゼプラコーン》は動かなくなった。その目は閉じられることなく、不気味にも私のことを睨みつけていた。
あの……えっと……だからさ。私そんな悪くなくね?とは思いつつも、私も相当のダメージを受けて既に全身が限界を迎えている。確実に《ゾンビ》のままだったら終わってたかもしれないし、スバルがこれを喰らうことにならなくて本当によかった。
ちょっと休もう。さすがに疲れた。




