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第20話 卒業文集を抱いて 前編

※※※お詫び※※※


いつも当シリーズをご精読いただき、誠にありがとうございます。

前話である第19話の最後に加筆修正を行っております。

端の端の端くれではありますが、みすてりーと謳っている以上、文章に加筆修正を入れることは、宜しくないことだと反省しておりまして、ここでお詫び申し上げます。


それほど影響はない部分ですが、ここに記載させていただきます。

今後はこのようなことがないよう、一層精進してまいりますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。




申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。

そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。

誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。


 キーホルダーを入れていたのは、前に座っていた高畑くんだった。

 いや、正確に言えば、キーホルダーが入った紙袋を、そのまま入れ替えちゃったのだ。

 マリちゃんに頼まれたミキティが動き出す前に、事件は解決してしまったのだ。

「気づいて、自分から名乗り出たって感じね」

 なんと、お土産の全てが、まったく一緒のものだったんだって。偶然入れ替わったというか、そのせいで取り違えたってことかな?

「でも、左右に座っていたならともかく、前に座ってて、間違うなんてこと、あるかしら?」

「……まぁそういうことにしといてあげよう」

 ??

 マリちゃんが深いため息をはいた。ちょっとおじさんみたいな。

「受け取り方次第によっては、純粋な話にもなるけど、気持ち悪い話にもなりかねないからね。肝心の高畑君自身が――」


「あ……ははは! ご、ごめんごめん! 偶然、同じだったから間違えたみたいだなぁ!」


 みんなにじーっと見られながら、高畑くんは慌てて紙袋を持ち上げて見せた。

 なんとなく聞き覚えのある声だ。でも高畑くんとは面識がない。彼の名前も、彼と同じクラスの子たちが指さしてそう呼んだのを聞いたからに他ならない。

 さっきみんなで栢森さんを囲んでいた時にもいて、なにかを言ってたってことかな?

「はいこれ」と彼は自分が持っていた袋を栢森さんに突き出す。

 栢森さんは受け取ると、ありがとうやごめんなさいも言わずにすぐ中を探っていた。

「よかった……私のだ。でもほんと一緒だから気づかないかも」

お土産だから、お菓子類が多くなると思うけどさ……。まぁ全く同じ物を買うって確率は0ではないんだろうけどね。不思議だなぁ。

「てことは、高畑が万引きしたのか?」

 と、誰かが言った。

 そーいえば、そんな話だったね。

「ち、違うよ! ちゃんと買ったって! ほら」

 と高畑くんは、ダウンのポケットからくしゃくしゃになった紙の小袋を取り出した。

 キーホルダーが包まれていたと十分に思わせてくれる大きさだ。

「ちょっ、ちょっと見たくなって、取り出してたんだよ」


「――……って、言ってたし」

 マリちゃんは自分のお土産を手にして、歩き出した。他の荷物は、病院で藍さんたちが預かったみたい。

 高畑くん、カワイイキーホルダーが好きなんだね。

「ちょっと意外ね……まぁ男の子でもかわいいものが好きな人もいるってことでしょ」

 ミキティが少し口を尖らせて言った。

 まぁダメってことはないけどね。

「それにほら、今日はバレンタインデーだしね」

 マリちゃんがそっと言葉を添えた。

 そういえば、昨日学校を出る前に、藍さんがそんなこと言ってたね。

「え……」ミキティが目を見開いた!……。

 かと思えば、今度は眉間をぎゅっとしわ寄せた。

「ウソ……そういうこと!? あちょっと! 待ちなさいよ……」

 なになに? どういうこと? 何の話?

 私とミキティもマリちゃんを追うように正門の方へと向かったのだった。




 長かった修学旅行も終わり、私たちは日常へと戻ることになったけど……。

 もうあと1か月もすれば卒業式……そう思うと、なんだか少し不安で、寂しくて。

 でも、その向こうにある、中学生という響きが、ちょっぴり楽しみで……。


 みんなとの会話もそのことでもちきりだった。

 部活は何をする? だとか、塾はどうする? だとか。


 進んでる子はもう高校受験のことを話していたりもして。

 中には中学受験をして、都内の有名な私立に通う子もいるとか。


 色々と落ち着かない時期。

 じりじりと近づいてくるその日を待つだけだった。



 と、思っていたけど、私たちのクラスでは、また一つ大きな出来事が起こったのだ!


 それは、2月も終わる今日、放課後のHRでのことだった。


「すまん」

 次田先生はいきなりそう言った。

 私はもちろん、みーんなぽかんとしている。教室に戻ってきていきなりのその一言。ふてぶてしい次田先生が謝るだけでも珍しくて、目を丸くしちゃうのに。

 ちなみに誤解がないように説明しておくと、次田先生が悪いことをしても謝らないってわけではなくて、なんでも淡々とそつなくこなして、そもそも私たち生徒に謝るような事態を作ることがないって意味だからね。炎上騒ぎになるようなおかしな先生じゃないってことだから。

 さてこんな時、私はどうするかというと、ついマリちゃんのことを見ちゃうのだ。

 マリちゃんの反応が一つの判断材料になってることは言うまでもないね。

「……」

 とはいえ、マリちゃんも今回ばかりは先生のことを見ているだけだった。

 仕方ないので、先生へと視線を戻す。

「いや、卒業文集のことをすっかり忘れていてな……」


 え……。


 えええええ?!


「本当なら、2学期の終わりごろから作成を進めるんだけどな」


 あれ? でも12月ごろ、HRでお話してなかったかな? なんとなくそんな記憶があるけど。

「肝心の作成係を決めるのを忘れてて……」

 えぇ!?

 クラス一同、さすがに1年も一緒にいるので息ぴったりで驚く。

「どうする? もういいか?」

 へ?

「もう先生が適当にやっておくけど、それでいいか?」

 なんで!?

 私たちがやる気ないとかならともかく、どうしてそうなるのさ!

「そうよ、それはおかしいわ!」

 と浅野さんが言う。

 それを皮切りにみんな口々に先生へ文句をぶつけた。

 それもそのはず。

 卒業文集って言っても、ただ作文を書くだけ……ではなくて、色々な企画を練って、みんなの思い出を残す大事な一つの冊子になるのだ。

 例えば、将来の夢を書くとか、クラスのナンバーワンを紹介するとか、担任の先生の恥ずかしい失敗談を書くとか……。

 興味ない人もいるかもだけど、基本的にはみんな楽しみにしているものだ。

 作文は私もめんどくさいけど……。


 でも言われてみれば、他のクラスのお友達とかは卒業文集のことを楽しそうに話していた。私たちのクラスはまだかなぁ……って程度にしか考えてなかった……。

そういう意味では、私たちも悪い…………のかなぁ?


「でもどうする? 今から作成係を誰か決めて、やるのか?」

 うっ……。

 と、クラス一同、すっかり黙ってしまった。

 それをしなさいと言われると、ちょっと……。

「どうだ、菱島」

 

 え?

 

 私?

「随分元気よく『えー』とか言っていたけど、そこまで言うなら、やってみるか?」

 えー!?

 みんなが先生の調子に合わせて笑っている。しまった……。この空気は……!

 いや確かに言ってたけど……私だけじゃないし!

 だけどみんなが、今度は拍手をしている。

 うわぁぁぁ! この流れは……私で決定!?

「よし、じゃあ女子の係は決まったとして」

 えー!? そんな――

「男子の方だけど、誰かいないか?」

 もはや私の悲鳴はかき消された。そんな……。うー……、大変そうだし、まとめるのとか苦手なのに……。

 …………でも、まぁ仕方ないか。

 それに、最後の大仕事だもんね。ちょっと、頑張ってみようかな。

 そうだ。ミキティにも手伝ってもらおう。

「……おっ?」

 などと一人で企んでいると、先生がとぼけたような声を出した。

 誰か手でも挙げたのかな?

 教室の奥を覗くように見ている。あれ?

 クラスの視線がそちらへと向かう。

 教室の片隅で、そっと手が挙がっていた。

 あの子は……。

「真田、やってくれるのか?」

 さなだ……そう、真田くんだ。

 真田くん、って……あれ?

 どんな人だったっけ?

 えっと、その……。ま、真面目。そう、真面目だったね! 暗くはなかった印象だけど……。

 話したことは……ない、かな? 違ったらごめん!

「ぼ、僕でよければ……」

 と真田くんは謙虚だった。


 うーん……。

「どうしたのよ?」

 HRも終わり、みんな帰る準備を始める。私は机にぐでーっと突っ伏した。

 ミキティがさっそくと言っていいほど私の元へやってきたのだ。

「真田くん、真面目でおとなしくていいじゃない。桶川とかうるさい男子だったら、絶対女子に任せっぱなしで手伝ってくれなかったわよ」

 う、うん。そうだろうけどさ……。どっちかっていうと、元気な男子の方が私は話しやすいんだよね。

 まぁでも、真田くんが嫌ってわけじゃないんだけどね。

「とにかく、もう時間がないんだから、頑張ってよね」

 ありがとう、ミキティ。手伝ってくれるんだね。

「え? いやちょっと待ちなさ――」

 ありがとうミキティ! 今度ロー●ンのロールケーキを私が食べる時に見せてあげるね。

「嬉しくないわよ!」

「まぁまぁミキちゃん、手伝ってあげなよ」

 と会長が後押ししてくれた。やったね! 会長にも今度ロールケーキを……。

「だからそれなによ!?」

「私も手伝いたいんだけど、卒業式の準備で忙しくて……」

 会長は、今年は答辞を読まないとダメなんだよね。

 懐かしいね、送辞を緊張していた頃がさ。

「うぅ……そ、そうね……」

 会長の顔色が一気に青ざめた。

「あんた今、悪意なくプレッシャーをかけたわね……」

「あ、あの、菱島さん」

 とミキティの後ろから私を呼んだのは真田くんだった。

 さらっと整った髪型は清潔。少し中性的な顔立ちだ。背は私と同じか、それより少し高いくらいなのかな。

「次田先生が、明日の朝にはデザインを提出してくれって……」

 えぇ!? 明日!?

「相変わらずね、先生……」

「はは……。そ、それで、過去の卒業生の文集をいくつか資料として渡すから、職員室に取りに来てってさ」

 人使いがさっそく荒いったら……。仕方ない、ミキティ、

「はい?」

 頼んだよ。

「アンタの方が荒いじゃないの!」

「じゃあ、真中さん、行こうか」

「なんで私!?」


 結局、私と真田くんで資料を取りに行った。

 教室に戻ってくると、そこにはミキティしか残っていなかった。

 マリちゃんは?

「急な用事ができたとか言って出て行ったわよ。でも帰るとは言ってなかったわね」

 いつもの用事だね。まぁマリちゃんは忙しいから仕方ないか。

「私はいいわけ!?」


 それから、三人で手分けして資料である約5年分の卒業文集を読み漁った。

 なるほど、どの世代もいろいろ凝ってて、会ったこともない人たちの夢や思い出ばかりだけど、読んでいて楽しくなるね。

「菱島さんは、どんなやつを作りたいかな?」

 そうだねぇ。やっぱりかわいいは大事だね。それから、他のクラスと被らないやつ。どうせなら派手にやりたいじゃん。

「注文が抽象的ね……」

 そうだ! 卒業文集動画にしてさ、ユートーブに投稿しようよ!

「動画ってなによ!?」

 みんなで夢を叫ぶ、とか。

「やめて……黒歴史決定だから……」

「ぷっ……」

 へ?

「ほら、真田くんに笑われてるわよ」

 あはは。やっぱりおかしかったかな。

「いや、面白いとは思うよ。実現できるかはわからないけど。菱島さんの発想、柔軟でいいね」

 え? へっへへー! 体も柔らかいからね。

「無関係でしょ」

「ていうか、二人の会話、聞いてるだけで楽しいよ」

 真田くんはふふふと男子っぽくないというか、上品な笑い方をするなぁ。

「……ふーん……」




「……っと、こんなところでどうかな?」

 それから1時間近く。私と真田くんは作業に没頭していた。

 先生から渡された1冊のノートに文集に乗せる企画を書いたり、実際にレイアウトを考えた絵を描いた。極限まで追い詰められているからか、意外と作業ははかどった。夏休みの宿題に追われている8月31日の夜のことを思い出したね。

 ちょっと無難なアイデアにもなったけど、なにせ時間が足りない。みんなにも作文を書いたり、やってもらうことがいっぱいあるし。

 ちなみに、途中でミキティは帰っちゃった。急に用事を思い出したとかで、あっさりと。

 これは次ミキティがロールケーキを食べてる時には半分はもらわないとね!

 ばっちりだね。これで先生に提出できるね。ウシシ。先生驚くぞ~。

「ど、どうかな? 先生のことだから、「お、もうできたか」って言うだけで終わりそうだけど」

 アハハハ。真田くんそれ先生のマネ? 似てるね~!

「え!? あ、はは……」

 真田くんは耳まで真っ赤にしていた。そんな照れなくても……自信もっていいよ、そのクオリティならね!


 教室の施錠にやってきた教頭先生に促されて、今日はしぶしぶ教室を後にすることになった。

 どうせなら、先生にさっさと提出して、明日の朝から取り掛かりたかったけど、これ以上は残れないから仕方ないね。

「二人が最後かな?」

 教頭先生に訊かれたので、そうだと答えた。少なくともランドセルは残っていない。学校内のどこかにはいるかもしれないけど教室に戻ってくる子はいないと思って。

 真田くんはデザインを描いたノートを机の中に入れた。教科書とかじゃないから、置いて帰っても怒られないよね。

「むしろ、明日忘れちゃ台無しだからね」

 そうだね~。

 そんな話をしながら私たちは正門まで向かった。

 正門の傍では……あれ!? ミキティ? と、マリちゃん。

「あ、終わったの?」

 終わったのじゃないよ。帰ったって言ってたのに……ウソついたの……?

「いいい、いや、ウソじゃないわよ!? ただ、帰ってる途中でママから電話があって、もう解決したって言うから、引き返したのよ」

「そこで私が偶然会ったの」

 と、マリちゃんがミキティの言葉に続く。「私も用事が終わって戻ってきたら、ここでミキティに捕まって……」

「人聞き悪い言い方ね……」

 ふふ。冗談だよ。でもロールケーキは――。

「じ、じゃあ、僕はこっちだから」

 と真田くんは、私たちが帰る方向とは反対へ向かって駆け出したのだった。

 私たちも、彼に手を振り見送ると、歩き出した。

 ミキティが「いいの?」とよくわからない質問をしてきたけど。

 文集のこと? もうバッチリだから! 明日の朝、みんな驚くと思うよ!



 ……と、そんな能天気な考えで登校した私は、翌朝、悲しい事件に出迎えられた。


 教室に入るなり、ざわざわと騒々しい。


 出入り口の近くにある席を、数人のクラスメイトが取り囲んでいた。

「どうしたの?」

 私と一緒にやってきたマリちゃんが、みんなの背中に呼び掛けた。

 数人がこっちを振り向いたおかげで、まるで幕が開いたように、事件現場が明るみになった。

 真田くんの机。

 そして真田くんは暗い顔をして机の上を見ていた。

 机の上には、昨日二人であれこれと悩んで作り上げた卒業文集のアイデアノートが置いてあった。

 開かれているそのページはボロボロに破られていた……。

「菱島さん……! こ、これは……」

 真田くんは申し訳なさそうに、悲しい声をこぼす。



 う、うぅ……ひどいよぉ……。



 って、私が大人しい女子なら、ここで大粒の涙をいくつも流す、なんて乙女な反応をしていたのかもね。


 だ、誰よこれやったのおおおおおおおおおおおお!


 私はそんなタマじゃない! 朝からエンジン全開で怒るよ!

 こんなに怒ったのは、この前お父さんが私の朝ごはんのウインナーを勝手に食べた時以来だね! 楽しみに最後に取っておいたのに……「残すなら父さんが食べちゃうぞ」……だって!?

 ふざけないでよね!

「ま、まぁ落ち着いて……」

 と誰かが言ったけど、落ち着いてられるわけないじゃん!


「まず最初に確認したいのは……」


 って、マリちゃんがさっそく動き出していた。


 最初に確認したいのは、もちろん、あれだよね!

隔週日曜日更新していきたいと思います!

回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。


最終回まであと2回!

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