第19話 帰らぬ修学旅行 2日目 ~17:19 時乃瀬小学校 グラウンド内
申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。
そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。
誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。
「全員揃ったか~? ではここで昼食を取ってから、最後の自由時間だ。食事が終わったら行っていいけど、必ず集合時間に遅れないように。遅れたら置いて帰るぞ」
次田先生の合図で、みんなお昼ごはんのカレーを急いで食べ始めた。
今日は午前中にふくべ作りを体験して、その後近くの食堂みたいなところでお昼を食べている。
あの後、旅館に帰ってからはすぐに眠っちゃって……で、午前中はぼーっとしてたから……ふくべの顔がまぁ不細工になってしまった……。
お父さんもお母さんも、これが家に届いたら色んな意味で驚くだろうなぁ……。
でも今はもう目がシャキッとしてきたよ! メガ●ャキだね!
「お土産どうしようかな……」
なんてったってマリちゃんが戻ってきてくれたからね!
午前中にいろいろ検査はあったみたいだけど、なんとかお昼前には退院できたみたい。血がいっぱい出てたから輸血もしたけど、傷自体はそれほど大きな怪我ではなかったみたい。そのまま藍さんたちが車をぶっとばして送り届けてくれたの。
修学旅行の途中だからかな? 難しい大人の都合はわからないけど、退院できたんだからまぁいいや。ただ、明日にも私たちの町の病院には行かないとダメみたいだけどね。
頭に包帯を巻いたマリちゃんは、痛々しくもあり、でも同時にちょっとミステリアスさが増して、かっこいい……。そんな小2みたいな感想を、おそらく私以外も持ってしまったのだろう。
みんなマリちゃんに群がっては口々に質問をしていた。
マリちゃんは頑張って簡単に説明していた。そしてみんなはお昼ご飯を食べ終えている中、マリちゃんはようやくご飯を食べ始めたところであったのだ。
「なにを迷ってるのよ?」
ミキティが尋ねる。
「うん、まぁ色々と……」
まだぼーっとしてるんじゃない? まぁ私が言えたことじゃないけど。
「そうよ。朝だって眠いから食欲ないとか言ってたくせに私のデザートのプリン食べちゃったじゃない」
美味しそうだったから……。
「あんたの分もあったでしょーが! かわりに貰おうと思ったら跡形もなく食べ終えてたけど!」
旅館も色々と大騒ぎになってたみたいだけど、私たちはその詳細を知ることはできなかった。マリちゃんもさすがに病院にいたからわからないよね。
そう思いながらも尋ねてみたんだけど、
「あとはどうなるのかは私にもわからないよ。でもまぁ、二度と、あんな騒ぎは起きないと思う」
だって。結局なんだったのだろう。なくなったものは翌朝にはすべてフロントに届いていたんだって。不思議だよね。そのせいでミキティは余計に幽霊の仕業だと思ったみたいだけど。
変な本ばっかり読んでるからだよ。怪談話の本とかよく借りてるって会長が言ってたもん。
「ほら、買ってきたわよ」
ミキティが紙袋を一つマリちゃんに差し出した。
「はい、こっちはサキの分……」
ありがとう。わーい、お饅頭だぁ。
「ていうか、マリはまぁ、あんまり歩かない方がいいってのはわかるけど。なんであんたの分も私が買うわけ?」
だってマリちゃん一人にしてなにかあったら危ないし……。
「なるほど……。で、あんたたちがその手に持ってるものは何よ?」
「ソフトクリームだけど……え? ミキティ知らないの?」
「知ってるわよそれくらい! そうじゃなくてそれ買いに行けるならお土産も買えるでしょ!」
大きな声出すとマリちゃん頭に響くって。
「うぅ……」
と、一応マリちゃんが頭を押さえる。
「きいいいいいいいっ! 今更白々しいわよ! 冷たい物食べるからきーんってなっただけなんじゃない!?」
とまぁ、色々あったけど、最後は普通の修学旅行になったので良かったかな?
「よし、全員乗ったな? 出発するぞー!」
少なくとも、他の誰にも体験できないことを経験することはできたからね。まぁマリちゃんの怪我は悲しい思い出だけど。こうして今、隣に座って、一緒に帰ることができるのはほっとしている。
あれ? バスガイドのお姉さんは?
帰る時になってようやく気付いた。うん? 今思い出せば、午前中もいなかった……?
「……覚えてない?」
うん。朝眠くてさ、ぼーっとしてたから忘れちゃった。あ、でもマリちゃんが気にすることはないからね!
「ありがと……。えっと……バスガイドさんは、体調不良でお休みになったんだよ」
えぇ!? そうなの?
「私も気になったからすぐに訊いたの。だから、代わりにガイドを先生がするんだって」
えぇ!? できるの先生に?
「……。まぁ、楽しそうじゃない?」
あはは。確かにそうかもね。
「じゃあ体調不良になったらすぐに言えよ。あと、疲れてるやつもいるから静かにな。あーあと、ちょっと遅れてるから、途中でSAには1度しか寄らないからトイレはその時に必ず行っておけよ。以上」
えー!?
とバスの中で声が重なり合う。
「もっとちゃんとガイドしてくれよー」
「説明が速すぎて覚えられませーん」
わざとだ……。みんな先生をおもちゃにしてるね。
かくいう私もつい調子に乗っちゃって、先生着替えなくていいんですかー? と言ってみた。
「昨日色々話してくれただろ? もう帰りは暗いからいいだろ。先生のミニスカート姿みたいのか?」
そして先生は予想通り、特に何も話すこともなく、ゲームをすることもなく、静かにバスは学校へとたどり着いた。
まぁ実際、みんな静かにしていたというか、半分以上寝てたもんね。私とマリちゃんもうとうとして、途中1時間くらい寝ちゃってたもん。
はぁ~長かったなぁ……たった二日間のことなのに、9か月くらい旅行してた気分だね。
「なによその具体的な数字は……」
ミキティが顔をしかめていた。なにって言われてもなんとなくそう思っただけだよ。
学校が近づくにつれてしかにいに飛び込んできた、見慣れた建物や道、そしてこの校舎もすごく懐かしい。
「なに似合わないことしみじみ言ってんだか。『しかにい』じゃなくて『視界』によ。慣れないこというもんだから……ほら、降りるんだから準備始めなさいよね」
「ちょっといいかー」
次田先生が言う。「すぐに帰るなよ。この後終わりの会があるからな。グラウンドに集合するぞ」
ええええええええええええええええええええええええええええええ!?
今度はみんな、本気で叫んだみたいだ。バスの窓が揺れた気がした。
バスを降り、荷物を受け取ると、クラスごとに簡単に整列……、いや、とりあえずわらわらと集められて座らされた。寒いので自然とみんな固まっていく。一応列っぽいものは作ったけど、順番なんて特にない。クラス委員の子が先頭にいるだけだ。男女の並びとかももちろんない。
もう疲れたから帰らせてよぉ~。
「えー、みなさん、旅行は楽しかったですか?」
そう問いかけられても、誰も答えなかった。
反抗期だからとかではない。疲れたし寒いから答える元気がないのだ。
だって2月のもう17時だよ!?
吐く息は白いし、吸い込む空気は冷えてて胸の辺りがちくちくする。
それに暗くて……正確には外灯がいくつか点けられているからまぁなんとか見えるけど、校長先生の後ろに明かりがあるから、先生の顔は真っ暗だ。
先生もそれを察してか、声を荒げたりはしない。けれど気にせず話を続けるのだった。
も、もう許して~……。みんなの頭の中はきっとこの言葉で埋め尽くされていただろうね。
「――はい、それでは、帰るまでが修学旅行です。みなさん、気を付けて帰りましょう!」
その理屈、遠足以外でも通じるんだね……。
ようやく先生のお話も終わり、みんなのっそりのっそりと立ち上がった。
寒くて小さくなってた子ばかりだ。それにいくら明かりをつけていても、グラウンドは暗い。眠くてうとうとしてる子もいたし、ていうか寝てた子もいた。起こされてる子も何人もいたしね。
私も悪いけどぼーっとしてた。ていうか今日はほとんどぼーっとしてるね。
さてと、お母さんは来てくれてるかな……。保護者にはお知らせメールが届いてるから、私たちが学校に帰る時間はあらかじめ伝わってるはず。
私はスマホを確認した。
『ごめ~ん 会社からの帰り道が事故で渋滞・・ちょっと学校で待ってて!』
えぇぇ!? もう疲れたから帰りたいのに……。
でも仕方ないね。事故なんだもん。お母さんが無事なだけよかったと思おう。うん!
「帰らないの?」
自分を励ましていると、さっそくマリちゃんに気づかれてしまった。
あぁ……マリちゃんこそ早く安静にしないとダメだからバレないようにしようと思ったのに。絶対心配するよね?
どうしよう……。
でもマリちゃんにはウソをつきたくないし、ウソをついてもすぐばれるだろうから、素直に話すことにした。
「――ふーん。じゃあ私の家の車に乗っていく?」
え? いいの? ホントに!?
「ちょっとうるさいけど」
うるさい? 車のエンジンとかの音かな……って、あぁ、藍さんのこと?
「そう」
楽しくていいじゃん。それに、私のカンだと、もう藍さんは静かかもしれないよ。にしし。
「え?」
うぅん。なんでもない。
私の前で、お姉さんのフリをする必要がなくなったから……。
と言いかけたけど、や~めた。
だって藍さんが私に、マリちゃんの昔話をしてくれたことを、マリちゃんが知らないかもしれないし。口止めされたわけじゃないけど、マリちゃんがその話をしてほしかったのか、してほしくなかったのか。
わかんないもん。
だから、いつか、マリちゃんが自分の口から話してくれるのを待っていようと思ったの。
そのいつかは、永遠に来ることはないかもしれないけど、もしかしたら、私には打ち明けてくれるのかもしれない。
その時も、私は知らなかったフリをする。
マリちゃんにウソをつくような真似をするのは嫌だ。
でも、マリちゃんのことを大事にするためなら、ウソでもなんでもするよ。
私の命の恩人でもあるからね。
私は、冬の澄んだ空気の向こうにかがやく、星屑たちを見ながら、そう自分に言い聞かせたのだった。
「えぇ!? ウソ?」
え!? もうバレた!?
と思ったけど、その声の主はマリちゃんではなかった。あまりにタイミングが良かったものだから、ドキッとしちゃった。
って、そんなのんきなこと言ってる場合じゃないね。一体どうしたのかな? 冗談を言い合ってる感じではなかったけど。
「ホントだって……私……」
隣のクラスの子かな?
「万引きしたんじゃねーの!?」
おっと……物騒な言葉が聞こえてきたけどお願いだから今日は大人しくしててねマリちゃんきいてなかったよねってあああああああああ……。
もうその騒動の輪の近くに行ってるよ……。もう……。まぁ私も行くけどね!
「ち、違うよ! そんなことしないよ」
おさげの似合う女の子が必死で両手を振っている。
「だってそんなの変だろー!」
「買ってもないし、ほら袋に入ってもないんだぜ?」
「盗んだんだ、万引きだ」
男子が数名わいわいとはやし立てている。女の子の方はうろたえてばかりだ。周りの女子、おそらくお友達もおとなしい感じなのでミキティみたいに「うるさいわね男子!」とか言い返せそうな感じではない。
「悪かったわね、いつも勝気で」
あれミキティ? まだ帰ってなかったの?
「ママが渋滞で遅れるって連絡くれたのよ」
私と一緒だね。
「ていうかどうしたの? あんたたちが走っていくものだからつい追いかけてきたけど……。って、栢森さんじゃない」
かやもりさん?
「そう。塾が同じなのよ。おとなしい子で、すごい真面目なの。私はあまり話したことはないんだけど」
ミキティとタイプが違うもんね。
「悪かったわね!」
と、私たち二人が話す間も、マリちゃんはじっとその栢森さんたちの輪の話を伺っている。
「あらあら、どうしたの?」
騒動を聞きつけたのか、誰かが呼んだのか、安田先生がやってきた。
「あ、先生……私、買ってもないお土産がお土産の袋の中に入ってて……」
と栢森さんが紙袋から取り出しのは、キーホルダーだ。小さくてカワイイこぐまのぬいぐるみがゆらゆらと揺れている。
「栢森のやつ、盗んだみたいだぜー」
男子の一人がニタニタと笑ってそうな声で言う。
「ちが、違うって言ってるのに……」
栢森さんの声が涙ぐむ。泣きそうな顔になってるのは暗くてはっきり見えなくてもわかった。
「じゃあこれはどう説明するんだよ?」
「だから、私も知らないの……」
あーあー、もうほんとに男子は! そんな風に言われても知らないって言ってるんだから! それ以上くだらないこと言うと、ミキティが殴るよ!
「なんで私のなのよ……」
と、騒々しさに拍車がかかっていたが、ここで誰かが言った一言が、場の空気を、冬の寒空に似合う張り詰めたものにさせた。
「でも、栢森さん、これ欲しいって言ってたよね……」
あれだけ騒いでいたみんなの呼吸が、止まった気さえした。
「い、言ったけど……」
栢森さんの声の震えは続く。「お小遣いが足りなかったから諦めたの!」
ただ、その声は泣き声というより、ただただ不安を感じさせる声になっていた。
「それに、バスに乗る前と降りた時に袋の中を確認した時はなかったもの! 誰かがつけてたものが落ちて入ったとかよ!」
誰もなにも返事しない。
その無言の非難の声が、寒気を増加させるようだった。
「ほ、ほら!」最初に口を開いたのは安田先生だった。「みんなはもういいから帰る準備をしなさい」
その先生の妙な気遣いが、栢森さんの涙腺を狂わせた。
でも買ってないキーホルダーがどうしてお土産の紙袋の中に?
「間違えてお店の人が入れちゃったのかしら?」
それとも、レジの横にぶら下がってて、ひっかかって落ちたとか?
「あのキーホルダーは、レジ横とは別のところに陳列されていたやつだよ」
とマリちゃんが言った。
「さすがね……。え? でもどうしてお土産買いに行ってないあんたがそんなこと知ってるのよ」
「ソフトクリームを買ったお店の隣の店頭に飾ってあったから」
あー! そうだったかも。だから私もなんとなく見ただけなのにわかったんだ。
「なんかスッキリはしないけど、じゃあやっぱり……」
「誰かが故意に入れたと考える方が自然かな」
でもどうやって?
「栢森さんが言ってた通りなのかしら?」
「だとすれば、失くした人が名乗り出てくれるからいいけどね。こう暗いと本人も気づいてない可能性があるから。それに、悪いけどそれは栢森さんが言ってることが正しいとした場合の話だからね」
そうだね……。色んな人がいるからね。申し訳ないけど。
でもじゃあ、降りた時にもなかったってことは……ここで、校長先生のお話を聞いていた時に?
「そうなるだろうね。まぁ校庭まで移動している時という可能性もあるけど、もうそうなると探しようがないよ」
なるほど。じゃあ前後左右に座っていた人と中心に考えると……。
「荷物を、例えば栢森さんの右側に置いてたら入れることが一番可能なのは右隣の人じゃない?」
ミキティが言った。「左隣の人なんて届くこともなければ、何かを見ることも不可能に近いでしょ」
そう考えると前の人も結構厳しいかもね。その点後ろの人は左右どちらにあっても腕を伸ばせば、キーホルダーを入れることくらいは簡単だね。
〇
〇☆●
●
私とミキティの考えをまとめるとこんな感じかな? 星が栢森さんね。
私は地面に指で絵をかいて、スマホの明りで照らすと、マリちゃんに見てもらった。
「そうだね。そして栢森さんが荷物を置いた位置で白と黒は入れ替わる」
だね。ということは……栢森さんが一番気づかないのは、やっぱり後ろの人かな?
「サキちゃん、さすがだね」
え? へっへへ~!
「だから、ここかな」
おでこにまかれた包帯のおかげで、今日は前髪が邪魔ではないだろうけど、それでもマリちゃんは前髪を払った。
マリちゃんがさっと丸く囲ったのはどの位置だろう?
「ていうか私は!?」
「ミキティには探し出してほしい人がいるの」
「また私探し物!?」
「それと、ちょっと確認してほしいことがあるの。みんなの親が渋滞で遅れている間に」
「一体だれを探し出せばいいわけ?」
「栢森さんの周辺に座っていた、男子かな」
隔週日曜日更新していきたいと思います!
回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。




