表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍は吟じて虎は咆え  作者: 南紀和沙
第二章
11/39

あちらの事情

<登場人物>

虹玉髄コウ ギョクズイ……主人公。峰国王づきの侍従。

朱剛鋭シュ ゴウエイ……峰王国前衛将軍。龍を操る力を持つ。豪傑だがやや短気な性格。

至英凱シ エイガイ……峰王国後衛将軍。龍を操る力を持つ。飄々とした性格の優男。

 また次の日も、玉髄(ギョクズイ)は牢へ行く準備をしていた。虜囚用の食事の膳を、取りに行くのだ。

 だがその途中、声をかけられた。

「おい、玉髄」

(シュ)将軍……」

 厳しい表情のまま、大柄な将軍が迫ってくる。

 前衛将軍・朱剛鋭(シュゴウエイ)だ。殺気と間違えそうなほど、刺々しい雰囲気をまとっている。

「あの女の世話、してるんだろ。なにか、聞き出せたか?」

「いえ、まだ……なにも」

「なにやってやがる!」

 その瞬間、玉髄は胸倉をつかまれて壁に押しつけられた。ダン、と壁が音を立てる。

「朱、将軍……!」

「いいか、あのガキは間違いなく、(バツ)の秘密を握ってやがんだ」

 玉髄が顔を歪めたのにも構わず、剛鋭(ゴウエイ)は詰め寄った。ギリ、と堅強な拳に力が込められる。

 玉髄はさらに身を硬くした。

「のんびりやるな。とっとと吐かせろ!」

「剛鋭、そのくらいにしといてあげなよ」

 剛鋭が怒鳴ったのと同時に、飄々(ひょうひょう)とした声がかかった。後衛将軍・至英凱(シエイガイ)だった。仕事中に通りかかったのだろう。書簡をいくつか持っている。

「そんなに目くじら立てなくてもいいじゃない?」

英凱(エイガイ)! 手前(てめえ)は黙ってろ!」

 獅子吼(ししく)、と称される剛鋭の怒鳴り声だ。普通の人間なら、すくみあがってしまうだろう。

 しかし英凱は慣れているのだろう。たじろぐ気配も見せなかった。

「アンタの悪い癖だ。戦じゃないんだから、もっと気長になりなよ」

「なれるか!」

 剛鋭はまた咆えた。

「跋には、花白(カハク)まで抜かれたんだぞ! 同じ失態を犯さぬためにもだな――」

「犯さぬために、玉髄君はあのおチビちゃんの世話してるんだろ?」

「そいつが駄目だから、言ってるんだろ!」

「それ以上言いなさんな。玉髄君に命令したのは、晃曜(コウヨウ)様だろう? アンタ、晃曜様のご意向に楯突くことになるよ」

「……チッ」

 剛鋭は、ようやく玉髄を離した。

 少年は、床にへたり込む。息苦しさと緊張からか、軽く咳き込んでいた。

「いいか、急げよ! 晃曜様のお優しさに、甘えるな!」

 鋭く言い放つと、剛鋭は足音も荒く去っていった。

 剛鋭の姿が見えなくなると、英凱が玉髄の肩に手をかけた。

「ごめんねぇ、アイツは昔っからああでねぇ」

「いえ……()将軍、ありがとうございました」

 心配をかけないように、薄く笑ってみせる。

 英凱はそれ以上、玉髄を介抱しようとはしなかった。

「で、どこまでいったの?」

「ど、どこまでとは?」

 英凱の問いに、玉髄はとまどいながら訊き返す。

 英凱の笑顔には、つかみどころがない。

「あの子の名前くらいさ、聞き出せてるんじゃないの?」

「……いえ、本当になにも」

 そう答えると、英凱は軽く息をついた。さすがの彼も、すこし失望したのかもしれない。

「ま、なにか力になれることがあったら言ってよ。アタシも、あの子には興味ある」

「なぜ、そこまで?」

「んー……将軍の勘、かな? いや、どちらかと言うと、騎龍の勘かな。あの子が断京(ダンケイ)に力を与えたなら、それは結構すごいことなんだ」

 とぼけたような表情で、英凱はヒラヒラと手を振りながら言う。

「ま、とにかくさぁ。晃曜様だって、お気に入りのアンタに世話まかしてるんだ。あのおチビちゃん、結構重要な人間なんだろ?」

「そう、なのでしょうね」

「じゃ、頑張ってねぇ」

 無責任で軽い言葉を残して、将軍は去っていった。

「……急がなきゃ」

 はーっと大きく息を吐いて、玉髄は足を速めた。

初出:2009年己丑09月14日

修正:2013年癸巳05月03日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ