第五十一話
その夜、盛大な宴が地上世界のお城で開かれた。
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「どうだい、楽しんでいるかな?」
「ああ、こんなに笑ったのは久しぶりだよ。でも、俺なんかが歓迎されていいのかな。結局、結婚もぶち壊した形になってしまったわけだし……」
料理やら踊りやら、異世界でしか味わえないようなものばかりだ。
なにより、ルシアが笑ってくれてる、それだけで俺は心の底から笑うことができた。
ルシアとロギの結婚も白紙に戻すことができた。
そのこと自体は、嬉しいことなのだが、それと同時に申し訳ない気持ちもするわけで。
「ふはは! 相変わらず君は他人のことを気にしすぎるようだね。もっと自分の気持ちに正直になったほうがいいんじゃないかな? 勇者なんだし、もっと堂々と男らしく、さ」
「全然勇者らしくないけどな、ハハ」
他人のことを気にしすぎなのはむしろロギのほうだよなあ。
自分の気持ちよりも、俺とルシアのことを優先したわけだし。
特にわだかまりもなく済んで、素直にありがたいけどさ。
「あー、ロギ様ぁ、こんなところにいたんですねぇ! 一緒に踊りましょうよぉ!」
「なんだ、レグシー、まさかお酒でも飲んでるんじゃないだろうな? お、おい、引っ張るなってわかった、わかったから!」
上機嫌なレグシーが、ロギを引っ張ってどこかへいってしまった。
なんだかんだで、レグシーにも随分世話になってしまったな。
レグシーがいなけりゃ、俺はこの世界にまた来ることなんてなかっただろうし……。
後で、お礼を言っておくか。
いや、待てよ……?
今度は俺がレグシーのためにできることをしてやるとするか。
後でこっそり、レグシーがロギのことを好きだと伝えといてあげよう。
「フフ、あんなに楽しそうなレグシーを見るのは久しぶりだわ」
仕事から帰ってきたレグシーの母ジェリスが感慨深そうにレグシーを見ている。
俺は、改めてジェリスさんにお礼を言っておいた。
危ないところを助けてもらった恩は忘れません、というと大袈裟だと笑われた。
「おや、そなたは……ジェリス、ジェリスじゃないか?」
「あら、王様、お久しぶりですわ。本来ならば、私はここに来るべきではないとは思ったのですが、レグシーがどうしてもというものですから……」
国王リジウスがジェリスさんに話しかけてきた。
ジェリスさんは謎が多い、国王とも顔見知りなのか。
「何を言っておるのだ、お前さんなら大歓迎だよ。私がもう少ししっかりしておればあんなことにはならんかったはずだしのう……」
「いいえ、あのことはもう済んだことです。それに、あの人も、きっと天国で喜んでくれてると、そう思いますよ」
話がよく見えない、しかし、話に入り込めるような感じでもない。
俺が、黙って聞いていると、ジェリスさんが色々と教えてくれた。
ジェリスさんの死んだ夫が、なんと国王リジウスの実の兄レギウス、つまり元王様だったらしい。
レグシーとルシアは従姉妹同士というわけか。衝撃の事実だ。
確かに、二人とも魔法が使えない剣士だし、天然なところが似ている。
ジェリスと王様が話し込んでいる中、ラグールが俺に話しかけてきた。
「…………小僧、あの綺麗な女性は誰だ?」
無口なラグールが話しかけてきたもんだから驚いてしまう。
さっきの話は、あまり口外するのもまずいのだろうか。
俺はレグシーの母とだけ伝えると、ラグールは物凄くがっかりしていた。
ラグールは、ジェリスさんに一目惚れをしたようだ。
俺がこっそりジェリスさんは未亡人だと伝えると少し元気を取り戻していた。
「あ、ハヤト、こんなところにいたんですね。探しちゃいましたよ」
「お、おうルシアこそ、どこいってたんだ? せっかくの宴なんだから楽しもうぜ!」
ルシアがそう言いながら俺の隣に座ってきた。
なんだか、心の棘が取れたかのようにスッキリとした顔立ちをしている。
その笑顔を見ると、俺も本当に幸せな気持ちになれるのだ。
「ええ、ちょっと、ハヤトに渡したいものがあったものですから……これ、こちらの世界の服です。あの、その……以前、服を買ってもらったお礼に……」
「あ、ああ、ありがとう。うわあ、すごい豪華な服だなあ、俺、こんなの似合うのかな? あ、いや、嬉しい、嬉しいよ! そんな悲しそうな顔するなって、着るよ、着るからさ! よし、じゃあちょっと着替えてくるよ」
俺は照れながらも、そう言ってもらった服を両手に抱えながら席を外した。
そして、もらった服へと着替える。
うはぁ、まるで王子様にでもなったような気分だ。
「ふふ、凄い良く似合ってますよ、素敵です」
「そ、そうかなあ? へ、変じゃないかな? 俺、あまりこういうの着慣れてないからさ……」
俺がルシアのところへ戻ると、ルシアがそう言ってくれた。
なんだか物凄く照れくさい。
ユウジがいたら、笑い転げられそうだ。
「おー、確かによく似合っとるな。それで、娘との結婚式はいつにするんじゃ?」
ジェリスさんと話をしていた王様が俺の服に気付き、そう言ってきた。
俺は別にルシアと結婚なんてまだ考えてなかったんだが……。
でも、よくよく考えてみたら、ロギとの結婚をぶち壊しちゃったわけだしだなあ。
「え、えーと、まあ近いうちに、ということで、ハハ」
「おお、そうか、やっとその気になってくれたか、うむうむ、娘のことをよろしく頼むぞい」
冗談のつもりでそう言ったら、意外にも本気にされた。
ふと、横を見ると、感激したのかルシアが涙を流して喜んでいる。
あ、あれ?
もしかして、もう断れない状況だったりする……?
ま、まあいいか、ルシアのことは大好きだし、一緒にいられるならそれもあり……かな?
いや、待て待て!
そんな安易に決めちゃっていいのか?
高校はどうするんだよ、それにもし結婚なんてことになったら、こっちで暮らさないといけなくなるんじゃね?
あ、それはさすがに……、いや、でもルシアとはずっと一緒に居たいし……。
あー、俺はどうしたらいいんだあああ。




