第四十八話
転移魔法でルシアにいる城へとやってきたハヤトたち。
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「おぉ? 地上世界に住んでたとは聞いてたけど、城の中に来れるなんて思ってなかった。レグシーと一緒に来たことがあるんですか?」
「いいえ、ないわね。地上世界に来るのは十年ぶりだもの」
ジェリスの転移魔法で、地上世界の城へとワープした。
城の中といっても薄暗い、今は使われてなさそうな倉庫のようなところだ。
こんなところに来たことがあるジェリスさんは、一体何者なのだろうか。
まあ、今はそれどころではない。
さっさと、用を済まそう。
「ルシアがどこにいるかわかります?」
「待って、今、『声』を探ってるところだから」
精神を集中しはじめるジェリス。
「案外、楽に侵入できましたね、これなら結婚をぶち壊すのも簡単そうですぅ」
「まだ城の中に来ただけだからな? まだこれからが本番だからな?」
その横でお気楽なレグシー。
油断は禁物だ、ルシアに会う前にロギにばれたら話がややこしくなる。
「見つけたわ、こっちよ」
「よし、じゃあこの姿を消す魔法石で……」
レグシーの持っていた魔法石で姿を消す。
レグシーたちも見えなくなるので、服や体の一部を掴みはぐれないようにした。
「ちょっと、勇者さんどこを触ってるんですか! ルシアさんに言いつけますよぉ」
「え、わざとじゃないから! 姿が見えないんだからしょうがないだろ」
倉庫のような場所を出て、城の廊下を歩く。
途中で兵士がすぐ横を通ったりヒヤヒヤもんだ。
「この部屋のようね、あとはあなたたちに任せるわよ?」
ジェリスが小声で言った。
こ、ここは……ルシアの部屋?
ジェリスは仕事があるからとまた魔界へ帰って行った。
何かあったときのために居てほしかったんだが……。
俺とレグシーは、気づかれないように静かに扉を開け侵入する。
中に入ると、ルシアは誰かと話をしているようだった。
「しかし、本当にこれで良かったのかのう?」
「ええ、いいんですお父様。私はこの世界が大好きです。人間と魔族が仲良く暮らしていくにはこの方法が一番なのですから」
部屋にいたのは、ルシアと国王リジウスだ。
何やら話をしている。
ロギとの結婚の話、かな?
「ふーむ、これでも自分の娘のことは、なんでもわかってるつもりだ。何か隠し事をしておるのではないか?」
「……何も隠していませんよ。……この世界を平和に導くのが、王女である私の役目です。私はできる限りのことをする、と魔王様にもそう誓いました。だからこれで良いのです」
このまま盗み聞きしてるのも気が引ける。
そろそろ姿を現すべきか?
「そうか……お前がそこまで決意をしているのならばもう何も言うまい…………幸せになるんじゃぞ」
王様は少し悲しそうに告げると、部屋を出て行った。
ルシアは黙ったままベッドに腰を掛けて何やら思いつめた表情をしている。
よし、ルシアが一人きりになった今がチャンスだ。
「はいはーい、魔界の戦士レグシーちゃんの出番ですよぉー。その結婚、ぶち壊しに参りましたぁ!」
あのバカ!
考えもなしに出ていきやがった。
急に現れたレグシーにきょとんとして茫然するルシア。
「ふっふっふー、驚いてるようですねぇ。今日はスペシャルゲストも呼んでいるんですから、もっと驚かせちゃいますよぉ」
スペシャルゲストって俺のことか?
なんでもかんでもこちらの手の内を明かさないほうが良いと思うのだが……。
ところで、姿を元に戻すのどうやるんだろうか。
俺は透明になったまま、あたふたしていた。
仕方ない、しばらくレグシーとのやり取りを見ておくか。
「またその話ですか? 私は結婚をやめる気はないといったでしょう。誰を呼んで来ようと私の気持ちが変わることはありません」
「そうでしょうかねぇ? あたしにはルシアさんの気持ちが痛いくらいわかりますよぉ? 勇者さんのことが好きなのでしょう? だから思い悩んでいる、そうでしょう?」
また、ってことはレグシーは以前にもこの話をしてたのか。
失敗に終わり、やむなく俺に助けを求めてきたわけだな。
俺も何か言ったほうがいいのだろうか?
でも透明のままだし、どうしよう。
「何をいってるんですか。私は、ハヤトのことなんて好きじゃないです。だから思い悩んでなんかいません」
え……。
俺のことを……好きじゃない?
淡々と告げられたルシアの言葉、俺は思わず耳を疑った。




