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第四十七話

 レグシーの家へとやってきてすぐに倒れてしまったハヤト。

 目覚めたのは翌朝のことだった。


---


 俺が目を覚ますと、見覚えのないベッドの中ににいた。

 すぐ隣でレグシーがすやすやと眠っている。


 はて、俺はここで一体何を……?

 朝、ベッドでレグシーと二人きり……。


「うわあああああああああ」


 驚いた俺は思わず叫び声をあげてしまう。

 あれ? あれれ? どういう状況なんだこれは!?

 落ち着け、落ち着いて昨日何があったかを思い出すんだ……!


「ひゃぅ、ど、どうしたんですかいきなりぃ。驚かさないで下さいよぉ」


 レグシーが飛び起きて、目をぱちくりさせている。

 その様子を見て、ようやく冷静になってきた俺は、昨日のことを思い出し始めた。


 ルシアを追いかけて異世界にやってきて……それから……。

 俺は異世界で魔物に襲われてたところをレグシーの母親に助けられたんだった。

 それで前日にほとんど眠れなかった俺は、安心した瞬間に……。

 そうだ、ただ疲れ果てて寝ていただけだ、何も……何もないよな?


「あ、ごめん、別に驚かすつもりはなかったんだが。そんなことより、なんで同じベッドに寝てるんだ?」

「なんでって、あたしのベッドを占領しておいて酷い言い草ですねぇ。あたしも疲れてたからついウトウトしてしまっただけですぅ」


 ふー、何を焦っていたんだろう俺は。

 特に何かがあったわけでもないらしい。


「あれ、俺、こんな服着てたっけ?」

「ああ、勇者さんが着てた服なら洗濯して乾かしてるところですぅ、魔物との戦いで汚れてましたからねぇ」


 なるほど、服を洗ってくれたのか。

 わざわざそんなことしてくれなくても良かったのに。


「ん? 待て、服を洗ってくれたのはありがたいんだが……その、なんだ、それってつまり……」


 俺がそういうと、レグシーが頬を赤らめてそっぽを向いた。

 ちょ、おま、俺が寝てる間になにしとんじゃああああ。




「さて、今日の作戦会議といきましょうかぁ。名付けて結婚ぶち壊し大作戦! ぱんぱかぱーん」


 朝食を食べ終えた後に、レグシーがノリノリで言ってきた。 

 なんか作戦名がそのまんまだな。


「あ、あのさ、ここまで来ておいてなんだが、ぶち壊すかどうかはルシアの気持ちを聞いてからだぞ? ルシアが本気でロギと結婚する気なら、俺は止める気はないからな?」

「今更そんな弱気なことを言ってどうするんですかぁ! ルシアさんは絶対にこの結婚をよく思ってませんよぉ! だからこそぶち壊すんです! これはルシアさんのためでもあるんですからね!」


 やけに気合いが入ってるな。

 レグシーは、俺とルシアのために何故ここまでしてくれるのだろう?


「もしかして……、お前さ、ロギのことが好きなんじゃないの?」

「え、え、ええええええ!? な、な、な、な、何を言い出すんですかいきなり! あ、あ、あたしはべ、べべべべ別に、ロギ様のことなんて、す、すすすす好きなわけ……」


 すげえわかりやすいやつだな。

 レグシーが危険を冒してまで、結婚をぶち壊したい理由がようやく判明した。

 まあ、いうなれば利害の一致ってやつか。


「その作戦とやらはどうするんだ? 何かいい案でもあるのかよ?」

「えーと、そうですね、特に何も考えてませんよぉ」


 考えてないんかい!

 もしや、何も考えずに勢いだけで行動してるのか?

 魔法石が魔力切れだったり、迷子になったりしてるのはそのせいだな。


「おいおい、そんなんで大丈夫なのかよ。もう手遅れだったりしないよな?」

「うーん、どうでしょう? まだ結婚は正式発表されてるわけじゃないですし、今ならまだなんとかなると思いますけどぉ」


 そうなのか。

 俺はてっきり、もう今すぐに結婚しちゃうのかと思って内心焦りまくってたんだが。


「とりあえず、だ。ルシアがいるのは地上世界の城で間違いないんだな? そうだとして、どうやってそこへいくんだ? 転移魔法は一度行った場所じゃないと無理なんだろう? レグシーの母ちゃんに頼むにしたって、地上世界には転移できないだろう」

「あら、私は地上世界へも転移魔法でいけるわよ? 昔住んでたし」


 遠くで家事をしてるかと思ったら、いちきなり話に割り込まれた。

 ネックレスを付けていてもさすがにこの距離なら聞こえてしまうわけか。

 ん、そういや、このネックレス……。


「なあ、もしかして、このネックレス外して助けを求めてたら、あんな怖い思いしなくても済んだんじゃ……」

「ええ、そうね。もし、レグシーの声が聞こえる状態だったら、あそこまで危険な状態になる前に迎えにいけたわね。帰ってこないレグシーを心配していたら、魔物の叫び声が聞こえて急いで駆け付けたんだもの」


 なんてこったい。

 俺は気が動転してて、一番簡単な方法をうっかりしてたのか。

 ま、助かったから良しとするか。


「このネックレスつけないで会話してて大丈夫なんですかね? えっと、レグシーのお母様は付けてらっしゃらないようですけど……」

「ジェリスでいいわよ。魔界の家は、魔法を遮断する壁でできているから問題ないわ」


 名前はジェリスさんか。年齢も聞いてみたいところだけどやめとこう。

 つまり家の中なら盗み聞きされる心配もないってことだな。

 そりゃそうだよなぁ、聞かれ放題だったらプライバシーも何もあったもんじゃないし。


 さて、話を戻して、どうやって結婚をぶち壊すか、だが……。

 やはりジェリスさんの転移魔法で地上世界に行きルシアを説得、これが一番手っ取り早いだろう。

 具体的にどう説得するか、なんてわからない。

 ルシアが一体何を考えているのか、それをまず知る必要がある。


「よし、とりあえずルシアに会いに地上世界に行こう!」

「待ちなさい、私はまだ連れて行くとはいってないわよ?」


 あれ、ジェリスさんはこの作戦に反対なのか?

 てっきりレグシーの味方で、協力してくれると思っていたのだが。


「だ、ダメ、なのですか?」

「そうじゃないわ、あなたに結婚をぶち壊す覚悟がない状態では連れていけないわ。話がこじれそうだもの」


 う……覚悟と言われても……。


「お、俺はルシアがロギと結婚したいならそれでも……」

「問題はそこよ、さっきから聞いてればあなたは自分の意志がないの? あなたはどうしたいのよ? そこをはっきりさせておきたいの」


 俺がどうしたいか……?

 俺はいつもそうだな、他人を言い訳にして自分の意志で動こうとしなかった。


「そ、そりゃあできることなら結婚をぶち壊して、ルシアを連れ帰って一緒に暮らしたい……」


 俺は、尻すぼみに声が小さくなっていった。

 自分で言っていて恥ずかしくなったのだ。


「そう、ちょっと頼りないけど、まあいいでしょう。行きましょうか、地上世界に」

~登場人物紹介~

名前:ジェリス

年齢:34

職業:魔王の執事

レグシーの母親で上級魔法の使い手、氷魔法を得意としている。

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