第三十六話
カズミを問い詰めたあと部屋に戻ったハヤトは、ユウジに誘われそのまま温泉へとやってきた。
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「ハヤト。随分と戻ってくるのが遅かったな! 何してたんだ?」
「え、あー、ちょっとアカネたちと話を……」
脱衣所で服を脱ぎながらも、さっきのカズミの話が気になっていた。
ユウジが俺のことを好き?
ま、まさか、そんなわけない……よな?
今までにそんな話を一度も聞いたことない。
そもそもユウジは、女好きなはずだし。
いや待てよ?
俺に気付かれないために、わざとそういう振りをしていたのかもしれないじゃないか。
ユウジが彼女を作らない理由が、そういう理由だったとしたら……。
どうしよう、ユウジは良いやつだけど、俺にその気は全くない。
「ん? ハヤト、どうかしたのか? アカネになんか変なことでも言われたのか?」
「えっ!? いや、何でもない、何でもないって!」
うう、俺はどうしたらいいんだ。
ルシアやアカネ、ケイコのことだけでもいっぱいいっぱいだというのに。
そういえば、元々この温泉旅行を企画したのはユウジみたいだし、最初からそれが目的だったとしたら……。
もしかして、これ絶体絶命のピンチってやつじゃねえか?
「ふー、温泉は気持ちいいなあ! 心まであったまるぜ! ん? なんでハヤトそんな遠くにいるんだ?」
「え、あ、ああ、べ、別に特に意味はない」
温泉に浸かりながらユウジが年より臭いことを言ってるが、今はそれどころではない。
身の危険を感じている俺は、ユウジと少し距離を取っていた。
よし、こうなったらユウジの真意を確かめてやる。
「なあ、ユウジ。どうしてお前彼女作らないんだ?」
「んー? どうしたんだ急に?」
ユウジに少しだけ近付き、とりあえず遠回しに聞いてみた。
俺が突然そんなことを聞いたせいか、ユウジは驚いてる様子だ。
「い、いやさ、ユウジは俺なんかよりモテるし、イケメンだし、性格もいいのに不思議だなーって……」
「ぶは、なんだそりゃ。モテモテのハヤトにそんなこと言われても皮肉にしか聞こえねーよ!」
あ、しまった。これじゃあまるで俺が、ユウジに気があるみたいな言い方じゃないか!
誤解されたりしないだろうな?
「い、いや皮肉じゃなくてさ! ユウジならその気になれば彼女の一人や二人くらいすぐに出来るだろ」
「さーて、どうかなあ? まあ少し前までは彼女を作る気がなかったのは確かだな」
俺は焦りながらも、引くに引けなくなってしまった。
ユウジは空を見上げながら、真面目にそう答えた。
「少し前、ってことは今は作る気はあるってこと?」
「まあ良い人がいたらそれもあり、ってとこだ。それよりなんだ、俺の心配より自分の心配したほうがいいんじゃないか?」
え、それってどういう意味?
やっぱりカズミの言ってたことが……。
「そ、そ、そうだよな。る、る、ルシアのことを真剣に考えてやらないとまずいよな」
「何を挙動不審になってるんだよ、よし、じゃあハヤト、ちょっとこっちこい」
待って、それはダメええ。俺には思いを寄せる異世界の王女様が!
と思ったら、何やら女湯がある壁のほうへと歩いていくユウジ。
「おい、ユウジ? お前まさか……?」
「ふふふ、温泉に来たからには覗いてやるのが男の宿命! そのために覗きやすい温泉を選んだのだ!」
得意げにそう語り出したユウジ。
どうやら俺はカズミに変なことを吹き込まれて、とんでもない勘違いをしていたようです。
「おい、まずいって。バレたらシャレにならねーって!」
「なんだよ、ここまで来て何も見ずに帰れるかってんだ! イヤならハヤトはそこで大人しくしとけ!」
俺の制止を振り切り、ユウジは桶を踏み台にして壁の向こうにある楽園を覗き込む。
その様子をじっと見守る俺。
ユウジはそのまま無言で覗き続けている。
おい、なんとか言えよ! 何が見えてるというんだあああ!?
耐え切れなくなり、俺もユウジの横へ行き同じように壁の向こうを覗き込んだ。
「な、何も見えないじゃねえか!」
「ああ、去年はばっちり見えたんだが、対策されたみたいだな……」
壁の向こうにさらにもう一枚高い壁が設置され、何も見えなくなっていた。
ふ、ふざけんなあああああああ!




