第二十五話
一時間目を終えたハヤトはふらふらとトイレに向かっていた。
---
まだ少し風邪気味なのかふらふらするなあ。
それとも単に寝不足か?
結局3時過ぎまでケータとチャットしてたし……。
それにしても、ルシアが異世界人ってことがバレたのが気掛かりだ。
ユウジのやつ、あそこまで口が軽いとは思わなかった。
冗談じゃ済まされないんだぞ、全く。
もしネッケツの耳にも入ったら、ルシアが学校に通えなくなる可能性もある。
そうなる前に、ちゃんと、ちゃんと俺の気持ちを伝えないと――。
いやでも、まずは間接的に探りを入れるか。
待て待て、そんなのんびりしてる時間はあるのだろうか……。
やはり直接言ってしまったほうが……。
「うわあ!」
「きゃあ!」
いてて、廊下の出会い頭に衝突、なんというお約束だろう。
「ご、ごめん、大丈夫? ちょっと考え事してて」
「わ、私のほうこそ前を見てなかったから」
ぶつかったのは去年同じクラスだったカズミ。
小柄で妹のユズよりも幼く見える子だ、小さかったので視界に入らなかったのだ。
「あ、あの……、いえ、なんでもないです。失礼します」
何かを言いかけたが、そのままそそくさと走りさっていってしまった。
どうかしたのだろうか。
もうすでに隣のクラスにまで噂が広まってるのか?
おっと、こんなことしてる場合じゃねえ。
トイレに行くんだった。
「あ、ハヤト、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
後ろから呼び止められる。
なんだ今度はケイコか。
「おう、ケイコか、どうした?」
「あ、あのさ……ルシアさんのことなんだけど。一緒に住んでるって本当なの?」
ああ、やっぱりそれもバレてるわけね。
んー、確かに一緒に住んではいるけども。
「うーん、まあ同じ家に住んでるのは確かだが……」
「ねえ、アカネのことはどうするつもりなの?」
う……。痛いところを突かれた。
そう、問題なのはそこなんだよね。
ルシアが現れるまではアカネのことが好きだったのは間違いない。
でも今は――。
「え、えーっと……」
「……も、もしよかったら私が協力するよ?」
協力っていってもなあ。
ケイコは今でもアカネのことを好きだと思っているのか?
でも、やっぱり俺――。
今はアカネよりもルシアのことが――。
「そうだ、ケイコ、お願いがあるんだけど。アカネが俺のことをどう思ってるか、それとなく聞いてみてくれないか?」
「……え、それって――」
とりあえず、まずはそこだ。
アカネの気持ちが知りたい。知っておきたい。
「なあ、頼むよ。こんなこと頼めるのケイコだけなんだ。な?」
「う、うん……わかった。やってみる」
こんなことを頼むのは気が引けるが、俺も必死だった。
これ以上、のんびりしてるわけにもいかない。
ケイコはアカネの親友だし、上手く聞き出してくれそうな気がしたのだ。
「よし、じゃあ教室戻ろうぜ。もう次の授業始まるぞ」
俺たちは急いで教室に戻るともう授業が始まっていた。
あれ? 何か大事なことを忘れているような?
あ、トイレ行ってなかったあああ。




