特別編2
30000PV記念特別編、ハヤトが何故か将棋でばとるをする意味不明なお話。
本編にはほとんど関係ない話です、ご注意ください。
「僕とルシアさんを賭けて将棋で勝負だ!」
いきなり何を言い出すんだこいつは。
てか誰、この人?
「誰ですか、あなた」
「な! ぼ、僕を知らないだと……僕は将棋部の部長にして前回の関東大会で準優勝したマナブだ!」
うーん、まためんどくさいやつが現れたなあ。
適当にあしらっておくか。
「将棋部の部長が俺になんの用ですか? 今忙しいんで帰っていいですかね」
「だ、だから! 僕と! ルシアさんを賭けて! 将棋で! 勝負だ!」
いや、そんな力んでもらわなくても結構なんだけど。
そもそも、それさっき聞いたし。
聞きたいのは何故そんな勝負をしなければならないのかというところだ。
「大体、ルシアを賭けるというのがよくわからん。物じゃなくて人なんだが」
「おっと、これは失礼。僕としたことが配慮にかけていたかな? はっきり言おう! 僕のほうがルシアさんに相応しい男だ! だからこの勝負で白黒はっきりつけようじゃないか!」
はー、つまり、ルシアのことが好きになったというわけね。
それでなんで将棋なのかがさっぱりわからないが。
「白黒つけるならオセロでいいかー? うん、さっさと終わらせようぜ」
「だめだだめだ! 将棋で勝負だ! 将棋以外の勝負は認めん!」
おいおい、マジでめんどくせーやつだな。
大体、将棋部の部長が将棋で一般人に挑むって不公平極まりないぞ?
普通の『一般人』ならな!
「あーあー、わかったわかった。その勝負受けてやるよ。ただし俺が勝ったらお前は何をしてくれるんだ?」
「ふ、やっと受ける気になったか! そうだな、もし負けたらなんでも言うことを聞いてやる! 負けることなどないがな!」
ほー、なんでもねえ。
まあ、ちょっと暇だったし遊んでやるとするか。
「んー? 駒落ちじゃなくていいのか?」
「ふ、僕はどんな相手だろうと手加減はしない主義なのさ! ルシアさんのためにも僕は君に完封勝利をしてやるのだ! ふははははは!」
この人、ちょっとヤバい人なんじゃないかなあ。
俺とんでもないやつと関わってしまったのだろうか。
「いや、そうじゃないよ。平手じゃ俺が大差で勝っちゃうから駒を落とさなくていいのかってことさ」
「な! 馬鹿な! 君は素人だから何もわかっていないようだね。まあそんなふざけたことをいってられるのも今のうちだけさ!」
ふ、馬鹿なやつだ。
俺の実力は全国クラスだ!
――そう俺は将棋が実は得意なのだ。
将棋部には入ってないし、入る気もないが。
ゲーム好きな俺としては、オンラインの将棋をやっていたことがある。
そして、そこで極秘に活動してたプロ棋士に教わっていたのだ!
「どっちがふざけたことをいってるのかわからせてやるぜ!」
「ふはははは! 後で後悔しても知らんからな!」
――こうして無意味な将棋バトルの幕が切って落とされたのだ!
ちょっとおかしなやつだが実力があることは確かだ。
久々に真剣に指さないといけないな。
ふむ、マナブは四間飛車で美濃囲いか、いかにも定跡通りといったところか。
急戦を仕掛けてもいいが、どうするか。
もう少し様子を見るべきか……?
否、ここは積極的に主導権を握るべきだな。先手だし。
さすがに露骨な攻めだと対処される、か。
まあ部長だしこのくらいは当然といえば当然だが……。
あ、この手は――!
中盤まで隙を見せなかったマナブがついに隙を見せた。
俺が素人だと思って油断でもしたか?
一瞬のすきを突き局面をリードしたまま終盤戦を迎える。
もはや勝ち目なしだぜマナブくん?
マナブは下を向いたまま、ぶるぶると肩を震わせている。
「く……! ま、参りました……」
ちょっと大人気なかったかなあ?
負けるわけにもいかなかったので、完膚なきまでに叩きのめしてしまった。
将棋部の部長のプライドを傷つけてしまったかもしれない。
でも、これでもう絡まれることもないだろう。
「ぼ、僕は井の中の蛙だったようだ……。将棋部で一番強いからと調子に乗っていた……」
あー、なんかさっきのテンションどこへやらっていうくらい落ち込んじゃってるや。
悪いことしたかなあ。
「こんな身近に! こんな強い人がいたなんて! よし! ぜひとも我が部に入ってくれ! 君なら次の大会で優勝間違いなしだ!」
ちょっとでも心配した俺がアホだったようだ。
凹むどころか勧誘してきやがった。
「入らねーよ! 俺が勝ったらなんでも言うことを聞くんだろう? なら俺やルシアにはもう二度と関わらないようにしろ、わかったな?」
「な、なんだと! ぐ……、君の実力を活かせないのは勿体ないが仕方ない。 男に二言はないからな! 今日のところはこれで退くとしよう! ではさらばだ! ふはははは!」
将棋部の部長マナブは笑いながらどこかへ去って行った。
今日のところは、ってなんだよとつっこむ暇さえなかった。
「お待たせしました、ハヤト。あれ? どうかなさったのですか?」
「ん? いやなんでもないよ! さてそれじゃあ帰るとするか! ふはははは!」
あ、ちょっとやつのテンションが移っちまった……。
こうして意味もないバトルは静かに幕を閉じるのだった。
――と思いきや翌日。
「さあ! 僕とルシアさんを賭けて勝負だ!」
おい、二言はなかったんじゃねえのかよ。
こうして毎日挑まれ続けることになってしまう俺なのであった。
~登場人物紹介~
名前:マナブ
職業:高校生
年齢:17
超ハイテンションな将棋部の部長。
将棋をこよなく愛する少し残念な人。ルシアに一目惚れしたらしい。




