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第二十二話

 その夜、夕食を食べながらハヤトはユズに話しかけていた。


---


「なあ、ユズ。おまえ、ユウジに会うの初めてだったよな?」

「え? そうだけど、なんで?」


 やっぱりそうだよなあ。

 ユウジが前に俺の家に来たときは、ユズがいなかったはずだし。


「いや、さっきユウジと親しそうに話してただろ? 初対面には見えなかったからさ」

「あー、そのこと。何々? 私とユウジ先輩が付き合ってるとか思っちゃったりしたわけ?」


 ユウジはアカネとルシアが口論してる間、逃げるように部屋を出ていきユズと仲良くおしゃべりをしていた。

 兄としては心配にもなるわけで。


「いや、そうは思ってないけどさ。もしかしてユウジのことが好きなのか?」

「ぷっ、あははははは! そんなわけないじゃない。ユウジ先輩はハヤトが異世界とやらにいってたときに連絡を取ったのよ。どこにいったか知らないかなーって」


 なぬ、俺が居ぬ間にそんなことをしてたのか。

 ユウジはそんな話してなかったのに。

 妹に会わせろーみたいなことは何度か言ってたが、軽いジョークだと思ってたわ。


「あれ、でもなんでユウジの連絡先なんて知ってたんだ? あの時はユウジと接点ないだろう?」

「あー、お兄ちゃんのケータイにしつこいくらい電話がかかってきてたからそれでね」


 そういえば、着信履歴がいっぱい残ってたなあ。

 ユウジのやつ俺が無断欠席したせいですごく心配してたみたいだからな。


「つまり俺のケータイを勝手に使ってユウジと連絡をとったわけか」

「しょ、しょうがないじゃない! お兄ちゃんが勝手にいなくなったのがいけないんだからね? あ、そのときにメールの履歴とかも見ちゃったけど、別に私気にしてないから! 大丈夫だよ!」


 え。ちょまてやこらああああ。

 俺のメールの履歴って……。


「おい、正直にいえ。どこまで知ってるんだ?」

「ど、どこまでって……べ、別にお兄ちゃんがムッツリでも気にしてないって!」


 終わった。

 俺の人生が終わった。

 ユウジとちょっとアホなやり取りをしてたのをばっちり見られてたなんて……。


「ふふ、仲がいいんですね。なんかロギさんとレグシーちゃんを見てるみたい」

「え、あ、いや、ああああ。いや今のは違うんだ、違うんだからな?」


 何が違うのかわからないが、俺は焦って否定していた。

 今の話をルシアにも聞かれていたのだ。

 だがあまり気にする様子もなくクスクスと笑っていた。


「はあ……俺また風邪がぶり返してきたかも」

「えええ、大丈夫ですかハヤト?」


 せっかく具合もよくなってきたのに精神的なショックが……。

 つーか俺ムッツリじゃねーし。ユウジが勝手に……。

 あかん、ルシアに絶対嫌われた……。

 

 そうして食事ものどを通らなくなった俺は一足先に自室へと戻るのだった。

 しばらくして、ようやく気持ちも落ち着いてきたところで風呂に入ろうとすると……。


「きゃあああ、ハヤト、何やってるんですか!」

「え、あ、すまん! 入ってるの知らなかったんだ! いて、いてて。物を投げるな! 火の玉を飛ばすな! 危ないから!」


 なんということだろう、ルシアが風呂に入ってたのを知らずにうっかり開けてしまったのだった。

 だが咄嗟のことであまりよくは見えなかった。せっかくのチャンスだったのに。


「お兄ちゃん! 凹んでるのかと思ったらそういう狙いだったのね! さすがはムッツリ!」

「ち、ちが! これはマジで事故だから! 違うんだあああ」


 俺の株価が暴落していく、そんな気がした。

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