総集編(第6話~第11話)
引き続きルシア視点での総集編です。
ハヤトと一緒に学校へ行くことになった。
なによりハヤトと一緒にいられるのがとても嬉しかった。
けどハヤトのほうを見ると私とは対照的にあまり嬉しそうではない。
「どうかしましたか、勇者様。さきほどから下を向いてなにやら独り言を呟いていらっしゃますが」
「あ、そうだ。とりあえずその勇者様ってのはナシで。普通にハヤトって呼んでくれ」
勇者様は勇者様なんだけど何かおかしかったのかな?
「あと、そうだな。異世界の話は俺以外にはしないように。この世界ではいろいろと問題になるから」
「わかりました、気を付けます」
そういえば、ロギも似たようなことを言っていた。
違う世界のことを必要以上に話して混乱させるのはよくないとかなんとか。
私には難しいことはよくわからなかったが、二人がそういうなら気を付けることにしよう。
「とりあえず職員室に行くぞ、ルシアのことを許可とらないといけないからな」
「ショクインシツ? 許可がいるのですね。すみません、私迷惑でしたでしょうか」
「いやいや、俺が自分から言い出したことだから。全然気にしないでくれ。まあなんとかなるさ」
わからないことだらけだった。
軽い気持ちでついてきたが、問題があったのだろうか?
でもそんな心配をよそにハヤトが優しく微笑んでくれた。
すると、その途中で見知らぬ男性がハヤトに声をかけてきたのだった。
「おう、ハヤト。女の子と一緒なんて珍しいな、ついに彼女ができたのか? あ、昨日告白するっていってたやつか?」
「なんだユウジか。悪い、今忙しいんだ、後にしてくれ」
ハヤトは普段、女の子と一緒にいることがないのかな?
彼女だなんて、ちょっと恥ずかしい。
それにしても告白ってどういうことだろう?
もしかしてハヤトは他に好きな人がいる――?
だとしたら私が今してることは――。
職員室につくと、ハヤトとタンニンのセンセイは何やら話し込んでいた。
でも私にはその会話は耳に入らない。
さっきのことが気になっていた。
「記憶喪失か、君も大変だったろう。記憶が戻るなら学校に通ってみるかい? なーに、心配はいらない、先生が責任を持つから」
「……あ、ありがとうございます」
いきなり両手をつかまれて驚いた。
話を聞いてなかったのでどういう状況なのかがよくわからない。
でもその言動からは協力してくれていることだけは伝わってきたのでお礼をいっておいた。
制服というものを渡され着替えることになった。
ハヤトは優しいから何も言わないけど、もしかしたら私がいると迷惑なのかもしれない。
そう思うと不安だった。
「お待たせしました、慣れない服に時間がかかってしまいました」
「よし、それじゃ教室行くぞー。もうすぐチャイムも鳴るし急がないとな」
「は、はいっ!」
ハヤトに悪いと思いつつもしばらくは様子を見ることにした。
「えっと、話をどこまで理解してるかわからないけど、ルシアは記憶喪失ってことになってるからな。異世界のことはもちろん余計なことはあまりしゃべらないように!」
「うーん、よくわからないけど頑張ります」
あ、さっきの話のことかな?
今更聞いてなかったなんて言えない。
記憶喪失かあ、なんでそんなことになってるんだろう?
やっぱり、私がいると迷惑なのかな……。
「どうしました勇者様? ここがそのキョウシツなのでしょうか」
「ああ、そうだよ……って勇者って呼んだらダメだってば!」
キョウシツという場所についたらしい。
ついつい勇者様と呼んでしまう。
慣れというのもあるけれど理由は他にもあった――。
――ハヤト、と名前で呼ぶのがなんだか照れ臭かったのだ。
「よー、ハヤト。また彼女とラブラブか? うらやましいなあ!」
「か、彼女じゃねえよ! てか大きい声だすな」
「んー? ハヤトの彼女、さっきも制服着てたっけ? にしてもすげえ可愛い子だなあ、どこで知り合ったんだよ」
「だから彼女じゃないっていってるだろ。まあいろいろあったんだよ」
さっきの人だ。ハヤトのお友達なのかな?
やたらと彼女であることを否定された。
うん、やっぱり私のほかに好きな人がいるとみて間違いない。
これはまずいなあ。私何やってるんだろう?
「ほえー、記憶喪失かー。そんなの実際にあるんだな。あ、自己紹介遅れたわ。俺ユウジ、ハヤトの親友だ。よろしくな!」
「は、はぁ……こちらこそよろしくお願いします」
ハヤトの親友でユウジという名前らしい。
どうしよう。ロギが早く迎えに来てくれないかなあ。
これ以上ハヤトに迷惑かけたくないよう。
「えー、突然だが今日からこのクラスに転校生がやってくることになった! 記憶喪失のルシアだ。みんな仲良くしてあげるんだぞ!」
「え、えっと記憶喪失ということになったルシアと申します。よろしくお願いします」
さきほどの担任から紹介される。
けれど頭の中は帰ることでいっぱいで、深く考えずに発言してしまった。
今の言い方少しまずかったかな?
何やってるんだろう、私――。
「よし、挨拶は済んだな。ルシアはハヤトの隣に座っていろいろ教わるといい。教科書とかはあとで先生が用意しておくから」
ハヤトの隣かあ。
嬉しいけど、でも……。
「ハヤトくん、ちょっと話があるんだけど」
そういっていきなり見知らぬ女の子がハヤトを連れて行ってしまった。
今のが例の告白した相手なのだろうか?
誤解されないようにしないと――。
私とハヤトはなんでもないと――。
「記憶喪失て本当ー?」
「珍しい名前だね。記憶喪失なのに名前は覚えてたんだ?」
「可愛いな、俺と付き合わない?」
気付いたら、男子に囲まれていた。
なんて応えたらいいんだろう?
私は記憶喪失で、えっと? なんだったっけ?
異世界のことは話しちゃダメで、えっと……?
「おいおい、ルシアちゃんは記憶喪失なんだぞー。あんまり質問攻めにしたらかわいそうだろ!」
私が応えに困っていると、ユウジが私をかばってくれた。
その後ろにハヤトが戻ってきてることに気付いて声をかける。
「どうかしましたか、ユ……、あ、ハ、ハヤト……」
「おーハヤトー、アカネとの話はもういいのかー? モテ期ってやつか、うらやましいなあ!」
「いや、別になんでもないよ。大体モテてるわけじゃねーから!」
何やら困惑した様子のハヤト。
やっぱり私がいるせいで――。
「あ、そうだルシア。授業は理解できないかもしれないが大人しく座って先生の話を聞いてるんだぞ」
「お、ハヤトなんか教師になったみたいだな!」
ハヤトがそう言ってくれたが、私はもう元気がなくなっていた。
私は、私はどうしたらいいんだろう?
授業が始まったというのに全く話が入ってこない。
そして、ハヤトに他に好きな人がいるという事実が私の胸を引き裂いていく。
自然と涙が込み上げてきた。
まずい、こんなところで泣いてるのを見られるわけにはいかない。
私は咄嗟に顔を隠すように机にうつ伏せになった。
「お、おい、ルシア寝るなー。起きろー」
ハヤトに肩を揺らされ声をかけられた。
どうやら寝てると勘違いされたらしい。
目をこすって涙を隠しながら、少し起き上がりそのまま涙をこらえていたがすぐに堪えきれない涙が込み上げてくる。
そして私はまたうつ伏せになって一人泣いていた。
そしてそのまま泣き疲れて本当に眠ってしまったのだった。




