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初星  作者: 音音


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2024  秋

 


 指先についた埃をズボンで拭うと目尻の痛みを指先で押さえる。

 触った瞬間のヒリついた痛みに思わず眉が寄った。


 私の腕一本がギリギリ入る隙間。

 押し入れの床に手をついて、再び手を奥へ伸ばすと、指先に肩紐(ショルダーベルト)のような感触があった。


指をかけてたぐり寄せるように、隙間から肩紐(ショルダーベルト)を引き出す。


 そうだ。

 こんな色だったな。

 

 しまい込んだ場所はハッキリと覚えているのに、バッグの色は忘れていた。

 

 肩紐(ショルダーベルト)をぐいっと引っ張れば上に重ねられた荷物が揺れた。


 揺れた荷物を押し入れの外へどかすと、できた隙間から目当てのものを無理矢理引っ張り出した。



 引っ張り出してきたのは高校の時に使っていた絵の具セット。


 取っておいたというより、仕舞い込んでそのままだっただけの物。


 高校を卒業したことによって、学校で使うから大切に保管して置かなければいけないものから、部屋の中で場所を取るだけの邪魔物となった絵の具セット。

 捨てるにはもったいないような気がして、仕舞い込んだまま、その存在を忘れていてもおかしくないのに、しっかりとどこに仕舞い込んだのかも思い出せて、取り出すことができたのだから、これは一つの縁なのだと思う。



 引っ張り出してきた絵の具セットは想像よりもずっと綺麗だった。


 筆にカビが生えていることもなく、毛の部分を撫でても、抜け落ちる様子がない。

 たっぷりと残っているアクリル絵の具も使えそうだ。





 この選択は、私の我が儘だ。

 一生懸命考えて、悩んで選んだ我が儘だ。

 両親は泣いたし、兄弟は頭を抱えた。


 もしかすると、この我が儘を私が後悔するときがくるかもしれない。



 うん。切実に、そんな未来が来てほしい。




 



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