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45話 ハイン、新たな仲間が加わる

「……なるほど、そのような出来事があったのですね」


 ほう、と一息付いてから一部始終を聞き終えたヤムがつぶやく。


 あれからヤム達にルビークを互いに紹介し、人数も増えたため広い席へ移動して、簡単な挨拶の後にクエストでの出来事を詳細に話した。


 何故か普段は新顔に厳しめな気がする三人だが、ルビークは何故か受け入れられた様で会話の合間にも軽く談笑が入るくらいには打ち解けているようだ。


「……うん。新種の発見、素材ゲットも凄いけど……やっぱり、話を聞き終えた中で僕はテートさんの凄さが一番印象に残るな」


 イスタハが紅茶を一口飲んでから言う。自分もその言葉に頷き言葉を続ける。


「そうだな。あれを目の当たりにしたら、大概の隊士は震え上がるだろうな。まともにあいつと戦える隊士はほとんどいないと思うぜ」


 アウルベアと対峙しつつもテートの動きを注視して戦っていたが、明らかにテートの強さは別格である。


 武器のリーチは勿論として、それを容易に使いこなせる腕力も凄いがそこに加え、テートの得意とする『雷』の属性が自身の相性が滅法良いのもある。


(上手く懐に潜り込んでインファイトが出来れば話は別だが、ハキンス級の身体能力が無ければ難しいだろうな)


 そもそもあの長剣を自在に扱える時点で、テート自身の身体能力は推して知るべしである。生半可な勢いで突っ込めば簡単に返り討ちにあうことだろう。


 かと言って、中途半端に距離を置いて戦えば『雷』での遠距離、誘導式の攻撃が飛んでくる。オールレンジでの攻撃が可能な万能タイプ。それがテートの強さである。


「師匠がそこまで言うとは……テート殿の強さは相当なものなのですね……」


 ほう、とため息をもらしながらヤムが言う。


「あぁ。お前も俺より上の存在がこんだけいるんだからもっと精進しなきゃだぞ」


 自分の言葉に殊勝に頷くヤム。普段の様子を見るからに真面目に励んでいるから今後も大丈夫だろう。


「そういや、お前達はどうだったんだ?今こうしているって事は、問題なく高難度をクリアしたんだろうけどよ」


 ついついこちらの話ばかりになって、イスタハ達の話をちゃんと聞いてなかった事を思い出してイスタハに尋ねる。


「え?僕たち?うん、特に問題もなく達成したよ。お互いの欲しい素材も手に入れたし、こうして怪我もなく戻ってきている訳だしね」


 さらっと話すイスタハに感心する。確か三人が受けた高難度は中々条件がシビアだったはずだからだ。


「は……はい。一定数の討伐は骨が折れましたが、終わってみれば割と余裕がありました……」


 おずおずと話すプランに、ヤムも言葉を続ける。


「はい。すぐにフレア・リザードの群れを見つけ、そこを早々に叩けたのが大きかったです。こちらが見つかる前に、イスタハの魔法を叩き込んだのが良かったのか、思っていたより討伐がスムーズに進みました」


「そうだね。その後目撃されていた情報通りに他の魔物も見つけて、無事に素材も手に入ったしね」


 イスタハも事もなげにそう話す。……どうやら、この三人も自分の予想以上に成長しているようだ。これなら、皆で特級に進めるのもそう遠くない話なのかもしれない。


「そうか。お前たちも成長していたんだな。何にせよ、お互い上手くいって何よりだな」


 そう言って、再び全員で素材の使い道を始め会話が盛り上がった。


「へぇ……ヤムさんが二刀流になったのはハインさんがきっかけだったんですね……」


 ヤムの二本の剣を見ながらルビークが言う。それに答えるように剣を鞘に収めたまま机に置いてヤムが話し出す。


「うむ。柄の部分は師匠から譲り受けたものだ。これを使った剣がどうしても欲しくてな。ちなみに、私が二刀に開眼する機会をいただくにあたってはまず、師匠との出会いが……」


 譲った訳ではないんだがな、と言いつつも大分誇張プラス美化されたヤムの話をその都度修正しつつ補足する形でルビークに説明していく。


「ほらほらヤム、話しの勢いが凄すぎてルビークが圧倒されているよ。あ、ねぇハイン、ルビークはこれから新しい弓を作らなきゃいけないんだよね?タースさんの工房、紹介してみるのはどうかな?」


「さ、賛成です。きっとタースさんならルビークさんに合う弓をきっと作ってくださるかと……」

 イスタハの言葉に、プランも同調する。話を中断してヤムもルビークに言う。


「それは名案だな。ルビークが特に今の加工屋に拘りがないのなら私からも是非薦めるぞ。タース殿の仕立てる武器や魔術具は一級品だ。きっとお前に合った弓を仕立てて貰えると思うぞ」


 そう口々に言う三人に、改めて不思議に思ったので質問する。


「……なぁお前ら、何でそんなにルビークに対して好意的なんだ?いや、良いことなんだけどな。普段よそ者ってか、新しく知り合う連中に厳しめなお前らがやけにルビークに対しては親切なのが気になっちまってな」


 そう自分が言うと、三人は顔を見合わせて口々に言う。


「いや、ハインの評判を後から知って擦り寄るような人ならもちろん論外だよ?でも、ルビークはそうじゃないし、何よりハインと一緒にクエストを成し遂げている訳だしさ」


「うむ。話していてルビークはそのような輩ではないというのはすぐに分かったし、先程聞いた志も尊敬に値するものだ。互いに高めあう仲間であれば、師匠にとっても我々にとっても有意義な存在です」


「ど、同感です……ルビークさん偉い……可愛い……うふふ……」


 皆にそう言われ、嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といった感じでルビークが笑う。


「あ、ありがとうございます皆さん!嬉しいです!」


 少し涙目になりながらルビークが言う。何にせよ新しい仲間が増えるのは何よりだ。

 そう思っていると、また三人がルビークに声をかける。


「うん、よろしくねルビーク。でも凄いね。そんなに小さいのにもう上級だなんて。僕たちももっと頑張らないとなぁ」


「うむ。そんなに小さいのに立派だぞルビーク。大人になればきっと願いは叶う。師匠や我々も協力するぞ。お姉さんに任せておくといい」


「うふふ……ルビークさん、小さくて可愛い……なでなでしたいです……」


 ……あ、しまった。そういえばこいつらにルビークの年齢までは伝えてなかった。

 案の定、今まで完全に子供とまではいかなくとも年下と思われていたことに気付いたルビークは、先程とは違った理由で涙目になってぷるぷる震えている。


「あー……そのな……お前ら、言ってなかったがルビークは実は……」


 そこまで言ったところでルビークが立ち上がり、涙目のままテーブルを叩いて叫ぶ。


「わたし!これでももうすぐ十九歳ですっ!年上ですっ!」


 ……これまでの話の中で、三人が一番驚いたのはいうまでもない。


 かくして、自分達にまた新たな仲間が加わることとなった。


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