44話 ハイン一同、帰還する
「嘘……あのアウルベアを一撃で……?」
その場に崩れ落ちるアウルベアを目にしたルビークが驚愕の表情を浮かべる。無理もない。自分も今のテートの一撃には少なからず衝撃を受けた。
『雷』の属性を得意とするテートの技の中でも今の技は別格だった。おそらく、自分の使う雷の技では悔しいがテートには遠く及ばないだろう。
(……分かっちゃいたが、ハキンスは当然としても、こいつにもまだ俺は敵わないだろうな。まだまだ精進しなきゃいけねぇな)
胸中でそんな事を考えていると、こともなげにテートがこちらに近付いて言う。
「うむ。上手く一撃で仕留められた様だな。ハインの一撃で向こうの動きが止まり、そこに加えてルビークのあのナイフの一撃だ。おかげであの技を放つ事が出来た」
アウルベアが完全に絶命しているのを確認し、テートが剣を収める。
「あの技は……軌道を見るからに追尾系の雷の技なのか?」
自分の問いかけに、テートは頷きながら言う。
「あぁ。強いていうならば半追尾系といったところか。目標を指定してそこへ向かう雷の剣撃だ。無論、限度はあるがな。今回は文字通りルビークのナイフを避雷針として狙いを定める事が出来た。よくやったぞルビーク」
そうテートに言われて、恐縮しきりと言わんばかりの表情でルビークが慌てて言う。
「い、いえいえ!私はただハインさんが隙を作ってくれたので、無我夢中でナイフを投げただけですので!」
「いや、それにしたってお手柄さ。テートの一撃で仕留められたのは運が良かったが、万一逃がしても追いかける事が出来た訳だしな。あのタイミングで正確に狙いを付けて命中させられたのはお前の手腕だよ」
そうルビークに言うと、ようやく納得したのか胸を撫で下ろす。
「……そう言って頂けるとありがたいです。……改めて、お二人とも本当にありがとうございました」
ルビークの言葉に頷き、アウルベアの亡骸を指差して言う。
「おう。じゃ、早速あれを持って施設に戻るとしようぜ。所々雷で焼け焦げたとはいえ、新種の魔獣の素材だ。かなり好条件の報酬が貰えるだろうしな」
自分の言葉に二人も頷き、アウルベアを持ち帰るべく準備を始め、早々に施設へと戻る事となった。
「……はい、これで手続きは全て完了です。お三方の名前は第一発見者として、名前を登録させていただくことになります」
あの後、無事に施設へと辿り着き、新種の魔獣を発見、無事仕留めたという報告を済ませてルビークの緊急クエストは無事達成扱いとなった。テートと自分は本来のクエストに加えて追加の戦歴に加算される形となる。
「それでは、国と施設で調べる為の分を除き、支給素材の配布は等しく三等分にという事ですが、皆様異論はございませんか?」
施設の職員にそう言われ、ルビークだけが申し訳なさそうな表情でおずおずと言う。
「えっ……?わ、私はお二人に助けられただけなのですが、本当に良いのですか?それに、止めを刺したのはテートさんですし、私がお二人と同じ配分の素材を受け取るのは申し訳ないのですが……」
そう言ったルビークに、自分は勿論、テートもごく自然に言う。
「うむ。確かに仕留めたのは俺だが、お前のあのナイフの一撃があったからこそだ。気にせず受け取るといい」
「あぁ。それにそんな事を言うなら俺だって大して役に立っちゃいねぇしな。仕留めたのはテート、そのきっかけを作ったのはお前だしな。ま、次の弓を作る為の素材に使えばいいさ」
ルビークがそれを恐縮しつつも受け入れ、達成後の諸々の手続きを済ませ、処理後の分配を終えてようやく開放の運びとなった。
「よし、それでは俺はこの足で素材屋へ向かうとしよう。また機会があればパーティーを組もうではないか。それではな」
そう言って豪快に笑いながらテートが去っていく。相変わらずマイペースな男だ。だが、今回のクエストで改めてテートが強く、勇者に相応しい人間であると再認識した。
「よし、じゃあ俺もそろそろ行こうかな。またな、ルビーク。その素材で新しい弓、良い奴が作れるといいな」
そう言って自分もその場を後にしようとしたその時、ルビークが慌てたように言う。
「あ!ま、待ってくださいハインさん!も、もう少しお話ししませんか?その、戻ってきてばかりでお腹も空いているし、軽くご飯かお茶でもしながら……」
ルビークにそう言われ、確かに少し空腹感もあるため、その誘いに乗る事にする。
「ん?そうか?ま、別に構わねぇぜ。じゃ、軽く飯でもいこうか」
「は、はい!是非是非!」
そうして、ルビークと食堂に向かう事となった。
「……へぇ。射手クラスではそんな形で演習があるんだな。参考になるよ」
「は、はい。他にも遠距離での戦闘時の心得はこんなのもありまして……」
普段あまり馴染みのないクラスの話は興味深い内容が多く、ルビークとの会話に花が咲く。話し込んでいると、後ろから声をかけられる。
「ここにいたのですか、師匠。探しましたよ」
振り返るとヤムたち三人が立っていた。




