はち。
自分の嫌いなものや苦手なものが書かれた手紙は十九通目で終わった。……少ない、ということなのでしょう。二十通目からは国内の全ての領地の特産品や特産品を扱う店の状況に主要街道や領地ごとの景色など、領地の特色が細かく書かれていて更には問題点まで書かれてありその問題点を解決する策を側近の方たちと講じている、とまであった。
視察報告、なのかもしれないですが、これは私に問題点の解決策を共に考えよ、ということなのかしら。それとも側近方と話し合いをされているというご報告かしらね。その話し合いが政……つまり国王陛下や宰相様に受け入れられるような提案にもなっていらっしゃるのなら凄いな、とは思いますが。
あら?
きちんとその辺のことも記してありますね。問題点や現状把握だけでなく、解決策を話し合い草案といった形で文書にまとめて提案されていらっしゃるのですか。なるほど。噂に聞く第一王子殿下がこの手紙からは推察出来ますね。
それが四十一通に及んだのは驚きましたが、まぁ国のことや政を考えていらっしゃる方だと分かったことは、この手紙を読んでいて正解だったかしら。
そして四十一通目の最後には、次からは君のことについて記す、と結ばれておりました。……私のことについて記す?
そこでお母様からお声がかかりました。
「新しいお茶を淹れてもらうけれどあなたはどうする、ポリーナ?」
「いただきますわ」
即答します。
かなり疲れておりますもの。目も酷使しましたが精神的にも頭の中も疲労してますわ。
お母様が新しいお茶を、と頼んだのを見てから私はお母様に二十通目からの手紙について話します。
「なるほどね。お茶会で聞く第一王子殿下の噂話に相違は無い、というところかしらね」
お母様も私の考えと同じことを仰っていますね。つまり、やっぱり私に対する態度だけ、どうしようもなかった、という結論に至ります。謝られてはいますけどねぇ。そして私のことについて、という四十二通目からの手紙を手に取ってみようかと思いましたが。
それより早くパッドリーがやって来ました。
今年十一歳を迎えるパッドリーは、既にレバーム公爵家の跡取りとして申し分ないくらいに優秀だと身内贔屓でなく思っております。婚約の釣り書きも届き始めているようですわ。
お茶会でも優雅に振る舞ってますし、憧れの君みたいな声も聞こえてきますしね。私が第一王子殿下の婚約者であることも影響が無いわけではないですが、パッドリーはそんなことも関係なく優秀です。
でも、私が治癒魔法士として活動していることに加えて、第一王子殿下との関係がアレなものですから、姉大好きな子なものですから、婚約者を作ることは考えていないようで、困ってます。まぁ私も可愛い弟に慕われていることは嬉しいですけれど。
「姉上。ああ母上もこちらでしたか。本日の私の勉強が終わりましたから、私とお茶を飲んで相手をしてください」
可愛い弟の頼みは、第一王子殿下からの手紙よりも優先度が高いものです。私は続きは明日にでもしましょう、とパッドリーを部屋に迎え入れて、お母様と三人でお茶会をすることにしました。
「姉上、第一王子殿下からの手紙を読まれていたのですか」
手紙の山が開封されていることに気づいたパッドリーに頷きます。
そして好きなモノや嫌いなモノなど個人的な点は話せないものの、話せる範囲で内容を伝えますと、領地の視察報告やそこから見えるその領地の特産品や景色についての良い所と改善点には食いついてきました。
さすが跡取りの自覚のある子です。
「我が領地にも問題点があると書かれておりましたか」
「ええ、お父様が長年考えていらっしゃる件よ」
「つまり馬車の轍による道の整備ですか」
これは我がレバーム家の長年の課題です。
有り難いことに長きに渡り筆頭の座に着いていられるほどに我が家は栄えておりますが、それは領民の皆さまの努力が結実したことの表れです。
そして領地を通って往来をして下さる商人にその他の平民に他家の皆さまが素通りではなく、土産を買い求めたり宿を利用して下さったりするおかげ。
一方でそれ故に問題視しておりますのが、馬車が通ることにより出来てしまう轍。
近年、この轍に車輪が取られて馬車が立ち往生してしまうという報告が上がっており、お父様は頭を抱えていらっしゃいます。
道を均す職人がいらっしゃいますが、彼らの仕事を上回るほどの轍。馬に牽かれて乗っている人間の車輪の部分が轍に嵌ってしまい、立ち往生して他家の方なら護衛達の手を借りて轍から脱出。
商人などは近くにいた領民達が手助けする事態となっております。
「その解決策はありましたか」
パッドリーも次期公爵として気になっているようで私に先を促してきました。
「早朝、日の出と共に大勢を集めて一気にやってみてはどうだろう、と」
パッドリーはなるほど、と頷いて父上に申し上げてみましょう、と受け入れました。
轍の酷い部分を職人だけに均してもらうだけでは到底追いつかないので、職人の指導の元、領民の皆さまにお願いして道を均してもらうつもりで話し合いを勧めていたのですが、日中は皆さまご自分の仕事があるために了承を得られなかったのです。
同時に日中では往来も多いので馬車を止めるわけにもいかず……。その辺りはお父様も考えていらっしゃいました。
でも、早朝案は確かに良さそうです。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




