ろく。
「レイラが疑問に思うのも分かるわ。お父様も知らないと言ってた。でもね、私の師匠・ジランが教えてくれた。自分の師匠がハイドだって」
「えっ、それって筆頭魔法士様の師匠ってこと⁉︎ なんでそんな凄い方なのに名前が知られていないのよ!」
この書物の著者・ハイドという魔法士は、私の師匠・ジランの師匠で、今日の食事会に出席出来ないと断られた理由の人でもある。
結局師匠からやっぱり行けなくてごめん、とメッセージカードが届いた。
「それは、師匠から口止めされているから話せないわ。でも師匠が自分の師匠だと教えてくれたから間違いない。先程の夫婦の愛情が子の魔力量を増やすという話も含め、陛下には申し上げていないわ。だから呉々もこの件は慎重に」
「……なるほどね。分かった。でも私の両親からハイドという魔法士について尋ねたら、ジラン様の師匠と答えて大丈夫?」
「レイラの両親にだけ、打ち明けて。そしてそのことを他の誰にも話さないでいてくれるなら」
「それなら、それこそ誓いを立ててもらうわ」
レイラはふふっと微笑んで、両親を説得してみると意気込んだ。
レイラのその意気込みを聞いて私もホッとする。
「でも、この本が正しいなら、あなたと殿下が結婚して子が生まれても子の魔力量は……ああ、だから陛下に話してないのね。レバーム公のご決断?」
そう、と頷く。レイラはなるほど、と納得しながらもそれでも怪訝そうな顔。
「どうかした?」
「ポリーナやレバーム家を疑うわけじゃないのだけれど、それでも私が見ているセスター殿下と違い過ぎて困っているわ。もちろん私が見ている姿が全てだとは思っていないけれど」
レイラの困惑顔に苦笑する。
私も王家主催のお茶会で我が家を訪れる第一王子殿下との差が有りすぎて、目を疑った。ついで自分の頭がおかしくなったのか、と疑った。これが現実と知って、此処まで徹底して嫌われている私ってそんなにブサイクかしら、と悩んだわね。
……いや、未だに忘れられないわ。
お父様に似てもお母様に似ても、自分で言うのもなんだけど美少女なはずの私がブサイクなんて言われた衝撃は。
殿下の目が悪いのか、美的感覚が悪いのか。どちらなのか調べても何の問題も無かった。
でも、殿下の目から見て私はブサイク。ということは、殿下は私だけがブサイクに見えたのか、ブサイクだと文句を言いたかっただけなのか。
自分で言うけれど、お父様に似てもお母様に似ても美人になるだろう私は、十五歳を迎えた現在、お父様似の美人に成長している、と自負している。
ーーだから私がブサイクということは、ない。
だからやっぱり、第一王子殿下は、単に嫌がらせとして私にブサイクと言ったか、私だけはブサイクに見えているとしか思えない。
可能性が高いのは、嫌がらせ発言。
お茶会に出席した私に素っ気ない態度を貫いているのだから。
顔合わせの時から一目見て私のことが大嫌いだったということだろう。だから未だに謝ってもらわないということ……。
「考えても仕方ない、か」
「ポリーナ、どうしたの?」
自分からレイラを招いておいて、ボンヤリするとはとんだ失態だ。レイラに声をかけられて我に帰った私は「なんでもない」と笑って、その後他愛無い話をしながら寝具に潜り込んでいた私たちは、眠りへと引き込まれていった。
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