じゅう。
どうやら“普通の”ことだ、と判断した私は、それならばお茶会に出ても大丈夫そうだと判断。噂話とか覚えていられることは覚えておいて。……いや、本当に覚えていられるのかな。買い物行った時に新しいお菓子……あ、覚えてるわね。この訳わからない能力に関して、私自身が分かってないことの方が多いからなぁ……。まぁ何とかなる、と思っておくしかないわね。
「では、お母様と誰のお茶会に参加するのが良いか話し合います」
お父様が頷いてじゃあお母様早速……となったところで「それは明日話し合いなさい」と、お父様に邪魔された。
……ああ、お祖母様に婚約解消を勧められた件について話し合いたいのか。
お母様を連れ出すお父様を見送って私は弟で五歳年下のパッドリーを見て二人で笑い合った。
私が殿下との初顔合わせをしたあの日、本来ならお母様もご一緒する予定だった。でもパッドリーがお腹の中に居て、いつ生まれてもおかしくない状況だった事からお父様と私が、お母様は屋敷に居て下さいと反対したのである。
それから三日後。
パッドリーはこの世に産まれた。
私の可愛い弟。
小さくて柔らかくて泣きっぱなしで、でも私の人差し指をギュッと力強く握った可愛い弟。
今は更に可愛くなって「ねえさま」と慕ってくれている。社交シーズンである今は王都にあるレバーム公爵邸に居てくれるけれど、シーズンオフには領地に帰ってしまうのが寂しい。お母様もご一緒。
私とお父様は私が第一王子殿下と婚約してしまったのでお父様が領地に帰る時に一緒に帰り、王都に出て来られる時に一緒に出て来る。
だからこうしてパッドリーと一緒に居られる時間は貴重で、ついパッドリーを優先しがち。
殿下とお会いして無言が続こうが視線も合わなかろうがパッドリーと時間を過ごすとそれも綺麗さっぱり忘れて癒されてしまうのだから、弟という存在は凄い。
「ねえさま」
「なぁに」
「お母さまがそろそろとうしゅきょういくをはじめましょうとおっしゃってました」
「そう。当主教育を……」
「わたしは、ねえさまをまもるからがんばります」
世界中の人に聞かせたい。
弟が私を守るために頑張ってくれるそうです。
私も弟を守るために頑張ります。
「ありがとうパッディ」
ふふ、とくすぐったそうに笑うパッドリーと私。そこに執事の一人が
「お嬢様、こちらは奥様からでこの三通の招待状のどこを選んでもお嬢様のお茶会デビューに相応しいから、との事でございます」
と、招待状を差し出して来たので三通を受け取ってみる。二通は同じ公爵家。一通は王家。
王家、ねぇ。
ペーパーナイフを受け取って先ずは王家からの招待状を確認する。
内容としては毎年恒例の第一王子殿下と第二王子殿下との交流会、らしい。今年は新たに双子の第三王子殿下と第一王女殿下もお茶会デビューするのでその二人の交流会も兼ねる、と。
要するに殿下方のご学友や側近或いは婚約者候補決めのお茶会、ね。
もう二通の公爵家はお父様と可もなく不可もない付き合いをされている家名だし、どちらの家も第一王子殿下の婚約者の座を狙ってのいざこざは無さそう、という判断かな。
確か令嬢が居たよね、このリカーデって家。それなのに婚約者の座を狙ってのいざこざが無いもの?
いや、考えても仕方ないか。それに。
……それに、おそらくは婚約者狙いの令嬢方が私が到頭社交場に出て来ると知って、参戦して足の引っ張り合いかマウント合戦が繰り広げられそう。
日程としては公爵家、王家、公爵家の順ね。ふぅん……。面白そうだから全てに参加してみましょうか。
パッドリーに部屋に戻ることを告げて、ブランカに手紙を書く準備を整えるよう命じ、招待状を持ってきた執事に返信の手紙のチェックを頼んで「お受けします」と私の直筆で返信。
明日の朝に届けるように手配を頼んで師匠にお茶会デビューを決めました、と報告の手紙を書いて一息ついた。
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