ニ。
私の発言が他に漏れている。
このことは危機感を覚えた。
兎に角早急に父上と会う手筈を整えるように侍従に目配せする。
レガートのいる前でテリーモがこのようなことを言い出すことも信じられないし、どこから私の発言が漏れたのか調査を入れなくてはならない。噂になるほど、私の発言が広まっているのか、ということも含めて。
それに。
もしも、王城内でのことを軽々しく口にする者が勤めているとしたら、良くて馘。悪くて罪人扱いだということを忘れたのだろうか。
契約を交わしているはずで、それは宰相や大臣を含む文官や王族の護衛騎士だけでなく、侍女・侍従・執事・メイド・下男・下女に至る全ての者が対象なのだ。
だと言うのに、どこから漏れたというのか。
……というかテリーモは本当に公爵家の者か? このような発言をしたら私の足を引っ張るだけでなく、この話が嘘だった場合、自分の足を引っ張ることになるだろうに。
私の専属侍従・アザーは私が三歳の時に付けられた七歳年上の者で爵位としては子爵家の三男だが、代々王家の使用人の家柄であるので高位貴族に勝るとも劣らないマナーや知識が身に付いている。言わば私のお目付け役でもある。
けれど年齢差があるだけに既に学園にも通っていて、それ故にアザーが居ない間の公的な部分での側近選びという意味合いもこの茶会にはある。
ただ、私がアザーと比べてしまうので三年前から茶会が開催されても側近が未だに決まらない。
身分から考えれば同じ年のテリーモだが、今のように足元を掬うような発言を彼方此方でされては堪らないので爵位はテリーモの下である侯爵位だが一歳下のレガートの方に分がある。
……とはいえ、レガートも高位貴族の子だからか滅多に本心は見せない。まぁそういうものではあるが。
取り敢えず、レガートを第一候補としてアザーのように信用出来るかどうか、様子見をしている段階といったところだ。
そんなことを考えながら、再び令嬢達の方へ足を進める。
私の不用意な発言がテリーモに知られているのであれば、高位貴族の令嬢達も知っていると考えるべきだろうから、令嬢達の様子を探るために。
「セスター様ぁ。婚約者とは名ばかりのレバーム公爵令嬢は、このお茶会に何故いらっしゃいませんのぉ?」
侯爵家のユリエ嬢か。
私の婚約者の座を狙っていることは、三年前の私のためのお茶会から嫌でも理解している。
三年前はまだ五歳だったから、という理由を話せたが今年は既に八歳。年齢的な理由で参加が出来ない、とは言えない。
実際、一応の婚約者だからレバーム公爵家にも茶会の招待状は出しているが、公爵自ら父上と私に目通りを願い出てきたと思ったら、公文書扱いの契約書に記された通りの交流はしているので、それ以外はお断りします、と昨年丁重な言葉で断られた。
……以来、招待状は出さないよう父上が私にも母上にも宰相にも通達した。
レバーム公爵がかなり怒っていたからだろう。
それは当然だ、と私も理解している。
ーー何しろ、私は暴言を一切謝っていないから。
謝る機会がない、とは言わない。ーー会っているから。
顔を合わせては、言えない。ーーだったら手紙でもいいのだ。
それを理解していて尚、私は直接でも手紙でも、公爵にさえ謝ることをしていない。王族は簡単に謝るものではない、と教えられていることもある。
だが、多分、謝ったらなんだか負けた気がするから、だと思う。
この件については父上も母上もアザーも常々早く謝るように促されているのだけど、どうしても謝ったら何かが負けた気がして、言い出せない。
……だから、最低限の交流以外の交流はさせる気がない、と公爵が怒っているのも分かっているのだが。
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