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邪神転生ガール  作者: megajoy
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転5 〈邪神〉だけど、引き続き過去をプレイバック。

幼女あゆら、動きます。

まことにもって頓珍漢とんちんかんな結論に至った当時の私は、だがしかし、

滅茶苦茶に真剣だった。


どこで仕入れた知識だったか、まあ、おそらく情報元ソースは絵本。

幼い私から見た、ヒメカという女の子の特徴が、“座敷童ざしきわらし”と

断定せざるをえなかったのだ。


①:普通、人間は見ることができないが、子供には見えることが多い。

②:人間の子供と遊ぶのが好き。

③:姿を見た人間を、幸せにする存在である。


うろ覚えで知っている、そんな“座敷童ざしきわらし”の概要に、ヒメカは、

(私の中で)ピッタリ当てはまってしまったのである。


特に③が、決定的であった。

なにしろ、ヒメカと出会ってから、本当に毎日が楽しかったから。


ヒメカのことが、不思議とか、怖いとかは、まったく思わなかった。

むしろ、怖いというなら、ヒメカと会えなくなることのほうが怖かった。


(どうしよう? どうなるんだろう────?)


お母さんとおばあちゃんが、ヒメカに会える公園へ、私を行かないようにさせるのではないか………。

そんな、嫌な不安に、私は囚われた。


そして、その不安は、的中してしまった。


『あゆちゃん……? 明日は公園がお休みだから、おばあちゃんと一緒に、水族館に行こうか』


夕食後に、おばあちゃんが、やんわりと、そう言ってきたのだ。


(────やっぱり……! こうえんに、いかせないようにするつもりなんだ……!)


私は、ますます確信してしまった。


……こちらが、おかあさんとおばあちゃん、ふたりの思惑を知っていると、

気づかれてはいけない。

頭が残念ながらも、小さい私は、必死でどうするべきか考えた。


『ええー? なんで? なんでこうえんがおやすみするの?』


とりあえず、まずはすっとぼけて、探りを入れることにした私だった。


『……公園はね、明日は、道を工事するんだって。だから、お休みなの。ほら、あゆちゃん、ラッコさんを見たい、って、前に言ってたでしょ? ね? 水族館に行きましょ?』


(あしたもヒメカとやくそくしてるもん!)


おばあちゃんの答えに、あやうくそう叫び返すところだったが、私はぐっとこらえた。

もし、ヒメカの名を口に出したなら、家に閉じこめられてしまうかもしれない、

と考えたのだった。


ヒメカに、会わなくては。


焦燥感に駆られながら、私は、そう決意した。

そのための作戦を、子供の頭で、急速に練り上げる。


『……ん~、じゃあ、すいぞくかんより、デパートにいきたいなあ~』


そう言って、チラリと、上目遣いでおばあちゃんを見た。


『デパートに?』


『デパートのおもちゃやさんに、ラッコさんのぬいぐるみがあったの。あれが、ほしいの』


普段だったら、お母さんから『おばあちゃんにおねだりしちゃ駄目でしょ!』と

言われたかもしれない。


けれど、私を公園に行かせないようにするためなら、容認するのではないか。

そんな打算的な考えからの、子供だから許される、駄々っ子発言であった。


おばあちゃんは、お母さんを見たあと、私に笑って、うなずいてきた。


『そうねえ、じゃあ、明日は、デパートに行きましょうか』


『やった~!』


満面の笑みで、はしゃいでみせる私であった。

………………イヤな子供だなあ。


だが、五歳児の私が、お母さんとおばあちゃんの目をあざむくには、他に方法がなかった。


────明くる日、私とおばあちゃんは、お昼前に、街へと出かけた。

デパートでぬいぐるみを購入後、同デパート内のレストランで昼食、という予定であった。


デパートへは、バスで移動後、徒歩。

おばあちゃんとよく行くデパートなので、道順は把握済みだ。


デパートのおもちゃ売り場も、行きつけの場所であった。

おばあちゃんのほうも慣れたもので、売り場に私を連れていき、さあぬいぐるみを

買いましょうか、という態勢だ。


そこで、幼い私は、わざとぐずってみせた。

その表向きの理由は、というと。


『このまえみた、ラッコさんとちがう!』


子供のわがままらしい、勝手な言い分である。


もっとも、私が欲しいというラッコのぬいぐるみ自体が、そもそも存在しないのだ。

当時、私とおばあちゃんに応対してくれたデパートの店員さんには、

正直スマンかった、と思う。


『で、でも、あゆちゃん、こっちのラッコさんも、かわいいわよ? ね? ほら』


おばあちゃんは、困った風で、オロオロと、店頭に置いてあるラッコのぬいぐるみを示してきた。


(……おばあちゃん、ごめんなさい────!)


私は心を痛めつつも、駄々っ子を続けた。


『コレジャナイ! コレジャナイもん!』


まったく聞き分けのないフリで、イヤイヤと声を上げ、その演技に熱が入って、なんだか

涙も出てしまった記憶だ。

……そうしながらも、おもちゃ売り場のレジ近くに置かれている時計を、

しっかりチェックする私。


そう、私がやっていたのは、時間稼ぎであった。


普通に買い物して、普通にお昼ご飯を食べては、時間が合わなくなる。

なんの時間に? 無論、ヒメカと公園で待ち合わせている、約束の時間に、だ。


三十分以上、おもちゃ売り場でごねて粘った。


それで、『あのラッコさんじゃないなら、いらない!』と最後に叫んで、結局、なんの

ぬいぐるみも買わなかったのだった。

店員さんたちからすれば、ひどいひやかしもあったものである。


うん、重ねて、正直スマンかった。


しかし、三十分程度の遅延だけでは、まだ、約束の時間には早すぎる。

なので私は、デパートの往来の最中さなかで、うずくまって泣く、という暴挙に出た。


『ああ、あゆちゃん、そんな泣かないで。ないものはしょうがないでしょ? わがまま言わないで……』


と、おばあちゃんは、涙目で私をなだめてきた。


────うん、ごめん、おばあちゃん、ホントごめん。

孫想いの祖母を泣かすまで困らせるとは、演技とはいえ、とんだ悪たれである。


それから、頃合いを見計らって、おばあちゃんに提案するのだった。


『……じゃあ、おくじょうにいく!』


『ええっ? 屋上に? このデパートの?』


脈絡のない突然の私の言葉に、おばあちゃんは面食らったようであった。


子供って文脈の前後をすっ飛ばすことがよくあるよね。

でも、この時の私の発言は、すべて、計画通りであった。


『おくじょうの、きかんしゃにのるの!』


〈きかんしゃ〉とは、デパートの屋上にあるミニ遊園地の、〈こども機関車〉のことであった。

〈機関車〉とは言っても、もちろん電動の、屋上の端の一区画だけをグルグル回る、

かわいい乗り物遊具だ。


それで機嫌が直るのなら、と、おばあちゃんは私のわがままな要求を呑んで、一緒に屋上へ向かった。


屋上へ到着するや、私はゴキゲンなフリで、〈こども機関車〉に乗り込み、はしゃぎ騒いだ。


そして、遊具で楽しみながら、時間を潰す。

これぞ一石二鳥────うん、やっぱりヤな子供だわ、私。


そのあとも屋上で、あっちへフラフラ、こっちへフラフラし、時間稼ぎ。

屋上に設置されている時計を確認し、おばあちゃんに告げた。


『おばあちゃん、おなかすいた~』


またまた勝手な子供の言い分。

だけど、おばあちゃんは、苦笑しながら、うなずいてくれるのだった。


『そうねえ。おばあちゃんも、お腹すいちゃったわ』


そんなノリで、屋上真下のレストランへ直行。

レスラン店内で案内された席では、さりげなく、私から時計の見やすい位置取りも忘れない。


ここでもまた、時間の調節だ。

目的の時間になるように、食事を済ませる私。


食事も済んだし、さあ帰りましょうか、とふたり席を立ち。

おばあちゃんが、レストラン出入り口レジにて、支払いをしようと、財布を取り出した────。


それは、私から、どうしても意識が離れる瞬間だった。


(おばあちゃん、ごめんなさい……!)


またも私は心の中で謝って、猛然とダッシュした。


『あゆちゃん!?』


と、おばあちゃんは声を上げたが、その時にはもう、私はレストランを飛び出し、

通路をまっしぐら。


そのまま、くだりのエスカレーターへと、一目散に駆け込んだ。

エスカレーターを利用する人の隙間を、小さな体ですり抜けて、その階段を、跳ぶようにして降りていった。


転んだら終わりだ、と、幼いながらに、必死に、慎重に、だが急いで、デパート一階を目指した。


運動神経が並の、ましてや幼児の私にしては、まったく奇跡という他ない動きだった。

誰にもぶつからず、また、転ぶこともなく、一階にたどりついたあとは、

問題なくデパートを脱出。


それから、目当ての場所まで、ひた走った。

────────バスの停留所へと。


海外から素晴らしいと言われる、日本の路線バスの時間厳守率は、

その日も確かなものであった。

道順と、時間も把握していた私は、時刻表どおりにやってきたバスに、

息せき切って、飛び乗った。


無賃乗車? ノン!


『じぶんでピッ!ってやる!』とねだって、前日からお母さんより、バスカードを

借りていたのだ。

行きのバス乗車も、これで済ませていた私だ。


よっこらしょっ、と、幼い私がバスの席に座ったところ、つつがなく、バスは発進。


目的地までの途中、見知らぬ、親切なおばさんから、


『お嬢ちゃん、ひとりなの? お母さんは?』


と、かれたりもしたが、


『だいじょうぶです。おうちにかえるとちゅうなので』


などと、そう笑って返した。


幼児が笑っているのを見て、問題はないと思ったのだろう。

あらそう、とほっこりした顔でおばさんはうなずいたので、事なきを得た。


まあ、おばさんには、嘘は言っていなかった。

ヒメカのいる公園に行ったあとで、お母さんのいるおばあちゃんの家に帰るわけだから。


小さい私の頭の中では、そういうことで完結しており、発言に、まったくためらいがなかった。

我ながら、幼児の時の方が心臓強かったんじゃなかろうか、と思ってしまう強メンタルだ。


やがて、公園最寄りのバス停で、バスを降りた私はまたもダッシュ。


春の日差しの中、全力で走れば、もう汗だくだった。

それも意に介さず、私はひたすら走った。


よく熱中症にならなかったものだ。


当時はまだ全然、〈邪神〉覚醒していなかったけれど。

デパート脱出の時の、奇跡の運動能力といい、持久力といい、その片鱗は、すでに

幼児の肉体に宿っていたのかも。


………汗まみれで走り続けて、公園にたどり着いた。


ヒメカは、いつもの、大きな木の下で、私を待っていてくれた。

息を切らせ、汗びっしょりな私を見て、ヒメカは驚いた顔をした。


『どうしたの、あゆちゃん?』


私のただならぬ様子に、そうたずねてきたヒメカ。

だけど私は、それには答えずに、ヒメカの右手を、両手で握った。


『ヒメカ。わたしは、ヒメカのこと、だいすきだよ』


ズバリと、改めて、私は告白した。


『ヒメカは、わたしのこと、すき?』


『え、うん───すき……わたしも、あゆちゃんのこと、だいすきだよ』


ヒメカは、顔を赤くして、そう答えてくれた。


『それじゃあ』


すう、と私は一呼吸して、言った。


『わたしと、ケッコンしてください……!』


求婚プロポーズ

どストレートな、求婚プロポーズであった。


何故、小さな私は、こんなことを言い出したのかというと─────。


(ヒメカとケッコンして、ヒメカが〈ざしきわらし〉なことをひみつにしていれば、いっしょうヒメカのそばにいられる!)


────そんな謎の確信を、胸に抱いていたからであった。


………今だから、客観的に、自分の思考を分析できるけれど。

幼い私は、絵本の“雪女”のお話と、“座敷童ざしきわらし”の話を、ごっちゃに

していたのだ。


絵本では、主人公の男が“雪女”のことを誰にも言わずにいれば

“お嫁さん”=“雪女”はいなくならなかった→だから“座敷童ざしきわらし”も

きっとそう! みたいな。


自分の中で、ごちゃまぜになってしまった昔話による確信を、熱く信じ切っての、

求婚プロポーズであった。


私の求婚プロポーズを受けて、ヒメカは、目を丸くして、固まってしまった。

そして次の瞬間には、顔を真っ赤にして、あわあわと口を動かした。


どうにも、応える言葉が見つからない様子だった。

そんな表情もかわいいなあ、なんて、私は胸をドキドキさせながら、また惚れこんだりした。


『あ、あゆちゃん? どうしたの? いきなり……』


ヒメカはようやっと、それだけを口にした。


『いきなりだけど、ヒメカのことがすきだから、ケッコンしたいの。わたしの、およめさんになってください!』


うーん、このませガキ……!


思い出しただけで、地面を転がりのたうち回りたくなるほど、恥ずかしくなってくる。

けれども、この時の私は、一から十まで本気だったので、微塵みじんも恥ずかしくなかった。


……いや、ちょっと嘘。

気恥ずかしいのは、やっぱり、間違いなかった。


『お、おちついて、あゆちゃん。おんなのこどうしじゃ、けっこんは、できないんだよ?』


『そんなことは、ありません!』


『ええっ!?』


断固とした口調で言い切る私に、驚愕&狼狽するヒメカ。

そんなヒメカに、私は、畳みかけた。


『せかいでは、どうせいどうしでケッコンすることは、めずらしいことではないのです!』


テレビで聞いた知識と、アナウンサー口調で、私は力説した。

そのあと、すぐに、これではイカン、人聞きの言葉では駄目だ、と、子供心に直感して、

うつむいた。


自分の気持ちを、ちゃんと伝えなければ、と。


『……ヒメカといっしょにいると、わたし、すごく、しあわせなきもちになるの─────』


ヒメカとは、ほんのわずかのうちに、知り合った仲だけれど。

その気持ちは、とてもとても、大切なものだった。


『ヒメカとあえなくなるのは、イヤなの。ずっとずっと、いっしょにいたいの! だから……!』


顔を上げて、ヒメカの目を、まっすぐ見つめて、言った。


『だから、わたしとケッコンして! ヒメカ!』


─────私の見つめるヒメカの瞳が、涙でうるんだ。


『あゆちゃん。あのね、わ、わたし……わたし、ほんとうは、“ふつうのこども”じゃ────』


『っ───!』


その先の言葉を、言わせてはいけない。

そう思った幼い私は、ヒメカを、夢中で抱きしめていた。


『いいの!』


『───あゆちゃん?』


『ヒメカは、ヒメカなの! わたしがいちばんだいすきな、いちばんたいせつなおんなのこなの!』


気づけば私も泣きながら、ヒメカにそう言いつのっていた。

……ヒメカは、なにも言ってくれなかった。


途端に、私は、怖くなった。


ヒメカに、嫌われてしまったのだろうか。

ヒメカを、困らせてしまっただけなのだろうか、と。


けれど、違った。


ヒメカは、声を殺して、泣き続けていたのだった。


『ヒメカ───』


言いかけて、体を離そうとした私を、ヒメカは強く抱きしめ返してきた。


『………………ありがとう、あゆちゃん──────だいすき』


そして、ヒメカは、続けて、言った。


『──────わたしを、あゆちゃんのおよめさんにしてください』

ふたりは運命のきざはしをすでに一緒に上ってた、っていうね……そういうの、ええやん?///

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