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ヴォルダーノ【初心者ファンタジー】  作者: うぶいずむ
エピソード 0

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1/7

  1話 荷物持ち以上、魔法使い未満


【エピソード0】の位置づけです。


とりあえず7話だけ目を通してみるか、

と思っていただけると嬉しいです。



 少女が触れた魔法遺具が、金色に光りだす。


(もうちょっと、かな?)


 状態を探る指先は、まるで医師の触診だ。


(ここを……こう!)


 淀んだ血液が再び流れるかのように、内部の魔力が活発に巡り始める。


 国宝が納められた薄暗く小さな部屋に、虹色の輝きが満ち、またたく間に消えた——




(できたっ!……よね?)


 目を輝かせて達成感に浸りたいところだが、実感が無さそうだ。

 とりあえず、聞いていた通りの反応は発現した、と安堵のひと呼吸。


「……よしっ!」


 途切れかけた意識を奮い立たせるように勢いよく立ち上がり、それを器から拾い上げると、きゅるんと反転。


 ひとつに束ねた黒髪を跳ね上げ、膝下丈の制服スカートを靡かせながら、急いで扉から駆け出した——







 城門の外には、腕を組みウロウロと落ち着かない少年が徘徊している。


「ぅ〜〜〜ん……」


 開城前にここへ来て、お日様は傾きはじめている。持ってきた1冊の本は読み終えてしまった。


「!」


 城から飛び出す人影に気がつき、大きく両手を上げる。


 ……が、庭の方向へ行ってしまった。


「ルイーナ! こっち、こっちーーー!!」


 急旋回するポニーテールを迎え入れるべく、慌てて馬車の扉を開ける。


 車体が傾きそうな勢いで飛び込む2人を確認した御者は、手綱を上下に鞭も入れ、急発進!


 馬のいななきが向かう先は、西の荒野だ——







「バスティ……」

 肩で息をしながら俯き、前髪の隙間から向かいに座る相棒を見つめ、続ける。


「どこにいるのよ! 朝の場所と違うじゃない! 1秒も無駄にできないのよ!」 


「ごめんごめん、すぐ出発できるように馬車の向きを変えておいたんだ」


「……それならそうと、言っておいてよね! ありがとっ!」


 魔法遺具の調整中は立ち入り禁止、と自ら伝えていた天然気味なルイーナの発言にも、慣れた様子のバスティ。




「調整、できたんだね、良かったね!」


 彼女が手に持つ物を見て、笑顔で労う。


「うん! なんか、パァァって光った! すぐ消えちゃったけど、これで大丈夫!……たぶん」


「ついに、マシルス卒業かぁ……おめでとう」


「ヨハナ先生の試験をクリア! ついに私も、夢のキラキラお城勤めが始まるのね〜♡」


 息が整い、ようやく目を輝かせ達成感に浸り、長年の空想に胸を躍らせる。


「魔法が使えない魔法使い、なのに、ね!」


「ま、まぁ、いつか使えるわよ、魔法なんて! 教本を開かなくても覚えたし……大切なのは、卒業した後ってことで!」


「みんな、だいたい10年……9年だっけ?で修了なんだよね?……17年間、よくがんばりました」


 バスティはいたずらな笑顔で茶々を入れる。


「それは赤ちゃんの時から数えて、でしよ! 正式に学び始めてからは……11年よ」


 ルイーナは「みんなとそんなに変わらないわよ」と言いたげに、少しはにかみ、強がる。

 

「バスティも、早くグレンディア卒業できると……いい、わね……」


「あ、あぁ……僕は攻撃課程さえ合格できればいつでも……いつか……ハハハ……」


 乾いた笑いで自信無さげに誤魔化す。


「私達には、これしかないもんね……」


「うん……被災孤児から自立して、先輩達みたいにそれぞれの国に散らばっていく……」




 夢が叶う——




 いよいよ現実味を帯びてきた状況に初めて身を置いてみると、喜びよりも淋しさに似た感情が押し寄せたことに、戸惑う2人。


 併設する施設に在籍中の彼らにとって卒業は目標だ。


 それはつまり、別々の道へ進むことでもある。




 ルイーナは窓の外をぼんやり眺めながら、孤児院兼魔法使い育成機関で過ごした日々を思い浮かべる。


 身体に眠る女性特有の魔法の素質を、後天的な魔法使いに開花させる教育を受けた、仲間達の顔。


 バスティも同様に、男子兵士育成機関での出来事を振り返っている。


 彼らは、それぞれの技能を身に付けた後、復興の為に各地へ派遣される。

 半壊した世界で、この境遇の子供達に選択の余地はほぼ無い、と言っても過言ではない。




「しんみりするのは早いわね! まだ、何も解決してないんだ!」


 ひとしきり森を駆ける風景がゆっくり流れ始めたことに気づいたルイーナが沈黙を破ると、馬のいななきと共にガゴンッ!と大きく揺れ、馬車が止まる。


「だね! ヒデッカータ将軍が待ってる!」


 見習い魔法使いと荷物持ち兼話し相手は弾かれるように飛び出し、振り向きざまに宮廷御者へ礼を言いながら走る!


 国宝を入れた彼女の麻の肩掛け鞄は、両手にきつく抱えられている。




 行く先の空には、無数に爆ぜる魔法射撃の爆炎が広がっている——


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