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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第二幕 貴子と辰之助 第一章 日記帳
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第五話

 現在、二月十三日二十三時十五分。明日はバレンタインデー。明日は平日なので普通に授業があるため放課後あたしの部屋に辰之助を招待した。辰之助は顔が強張っていたが⋯⋯。おそらく日記帳をあたしが使ってくると思っているのだろう。まあ、やるだけのことはやるが、そこまで期待してはいない。どこからが違法行為と認識されるかわからない以上、確実なところで手を打つしかない。あたしは日記帳を開く。


二月十四日 橋本辰之助と野村貴子はキスをする。


よし、これで手を打ってやる!


問題はチョコだ。

完全にチョコ作りを舐めていた。

今日、帰宅後からユアチューブの動画を観ながら何度も挑戦したが、結局チョコ作りは失敗して諦めた。何日も前から準備しておくべきだったと反省している。さっき近所のコンビニでバレンタインデー用のチョコを買ってきた。今年はこれで手を打つしかない。


ああぁ、あたしの初めてのバレンタインデーだったのに⋯⋯。


 当日の放課後、あたしは学校から帰宅後、身を清める。


シャワー浴びたところで今日はエッチなしなんだから必要ないのだが⋯⋯。


ハミガキは念入りに。

今日はそこが勝負どころなんだから!


とりあえず下着と洋服は今日のために買ってきたもの。なぜかあたしは手作りチョコのラッピングのために買ってきたリボンを頭に付ける。


なんで?


十七時に辰之助はやってきた。すぐに部屋に通して椅子に座らせた。あたしはこの間と同じくベットに寝転んだ。


ん、なんで?


「辰之助って本命チョコもらったことはあるの?」


あたしは探りを入れる。


「本命チョコは本命チョコであることが重要なんだ。それが手作りチョコであろうと、ブランドもののチョコであろうと、チロルチョコ一個であろうと、男にとっては本命チョコ一個ということが重要なんだ。ブランドチョコでもばら撒いていたら、そんなもんは本命チョコではない。ってことで、オレは本命チョコはもらったことはない!」


よかった。

手作りチョコしか本命チョコとして認めんって言われなくて。


「それでね⋯⋯」


あたしはそう言って、ベットの下に隠してあったチョコを取り出す。包装紙を外して⋯⋯。


アレ、なんであたしチョコくわえてんの?


「そうきたか⋯⋯。じゃ、いただきます」


辰之助はそう言ってあたしがくわえているチョコを食べながら、あたしの唇にキスをした。


ファーストキスはチョコの味がした。


「そういや携帯買ったんだよ。連絡先入れておいてよ」


辰之助はあたしに携帯電話を渡してきた。


「なんだ。今どきスマホじゃないんだ。っと、電話とメールの連絡先入れておいたよ」


マイハニーって、辰之助どういう反応するかな?


あたしは辰之助に携帯を返す。


なんだよ⋯⋯。

無反応か。


「そういや今夜は雪らしいよ」


あたしは窓に顔を近づけて外を確認する。


「なんかパラついてるよ。今日は帰ったほうがいいよ。辰之助」


泊まっちゃうって言いたかったのに⋯⋯。


辰之助はそのまま帰った。しばらくすると、雪は次第に大粒になってきた。


やっぱり泊まってもらったほうが良かったのかも。


翌朝、目を覚ますと外は一面の銀世界だった。


学校行く前に雪かきするか!


 朝八時、あたしは店先の雪かきを始めた。雪国であればこの程度の雪なんかほっときゃすぐ融けるくらいなんだけど、ここは埼玉。最近では雪が降らない年もあるくらいの非雪国だ。雪かきを始めて三十分くらい経った頃、急にあたしの名前を絶叫する声が聞こえた。


「たかこおおおおお!」


その声に驚き、あたしが顔を上げた瞬間、あたしは思いっ切り突き飛ばされた。


直後、トラックがスリップしてあたしの目の前を通り過ぎ⋯⋯。


空中で一回転した人があたしの目の前で地面に叩きつけられた。


辰之助!

なんで。


「しんのすけえええ!」


あたしは目の前の辰之助に駆け寄っていったが、辰之助は息をしていなかった。


辰之助。

辰之助!


辰之助がいない世界なんて⋯⋯。

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