表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/138

82 死亡フラグに殺される日~後半④~

血やグロが苦手な方は、注意してチラ見してくださいね。

アラトマはわき腹を触りながら、瞬間移動でロゼスから離れた。ガゼロも爛論もそれに続いてロゼスから距離を置く。


ロゼスが完全に沈黙している事を確かめてから、私も後方に飛んだ。それからアラトマの横へ移動して、こっそりアラトマのわき腹に目を遣る。



「昨日アラトマが言っていた事は、それかしら?」


アラトマは上着をたくし上げてわき腹を見せてくれた。


「これが俺の称号」


そう言って見せてもらった称号は、肉眼で確認出来る称号ものだった。黒くて歪な模様をしている。私が持っている盾の称号は目に見えないし、「感じる事で知れる称号もの」だ。そういう意味でも、それは全く違っていた。



「俺たちの称号は体のどこかにこの模様がある。それは心臓だったり、眼球だったり……」


「簡単には見えない所にもあるのね……」


「取り出さなきゃ見えない人もいるね」


物騒な事を喜々として言うアラトマにも、どこか物憂げな感じがある。その称号で知れたロゼスの心の機微や表情が、アラトマから余裕を奪っているのかもしれない。



まだ動かないで横たわっているロゼスを見た。


エリューが死ぬとロゼスの強制出来事(イベント)が始まる。


引き金になるような事があってもなくても、死亡フラグが立っている限り、強制終幕させられると私は考えている。ロゼスが沈黙してダークサイドに落ちかけている事がそれを裏付けている。


ゲームのシナリオ上、そうプログラムされているのだろう。元のゲームと今のこの状況はどのくらいかけ離れたものになっているかは分からないけれど、言える事は死亡フラグの力は絶対かつ絶大で、ロゼスの称号の力もまたそれに同じだという事だ。




「アラトマ、今のロゼスはどんな感じなのかしら?」


地面に横たわるロゼスの髪は銀髪へと変わりつつある。それを見つめながら聞いた。


「ロゼスの意識は辛うじて薄っすら残ってるけど、ほぼ称号が支配している感じかな。確実に俺たち死ぬよ。()()()()()()()



アラトマが珍しく震えていた。両腕を忙しなくさすっている。


「何でいきなり変貌するか分かんねぇな。良い感じに決着付いただろ? エリューの事は」


暫く静観していたガゼロがこちらへやって来て不満を口にした。あからさまに不機嫌になるガゼロにアラトマは説明する。 



「完全無欠の称号を手に入れると、莫大な力と引き換えに感情が希薄になる。それは揺るがない事実だよ。でも……ロゼスには感情があった。それが原因かな」


「どういう事だ?」


「無理をしていたのでしょう。感情を取られないようにと称号に抗い、命を削っていたかもしれません」



――――やっぱりそうだわ。それで死亡フラグが立った。称号に抗おうとした事が死亡フラグを立てたんだわ。私のためにロゼスは無茶をした。



「つまり、タイムオーバーだ」





地面に横たわっているロゼスは、まだ動く気配はなかった。ただ迂闊には近付けない。ロゼスの周りの空気は水底に溜まった泥に酷似している。一歩足を踏み込めば、引き摺り込まれかねない雰囲気だ。


「称号に乗っ取られたロゼスが、なぜ俺たちを殺す?」


「難しい事を考えるとキリがないけど、もうあれはペテロ帝国の人間兵器だと思った方がいいよ。国のために使われる末路にある悲しい存在。幹部の子孫の道具っていう言い方もあるかもしれないけど」


「チッ、胸糞悪い」



私は制御装置を外した。髪を結び直し腕を捲り、それから深呼吸を繰り返す。


「おい、リコリス! お前何して……」


「準備よ」


「まさかアレと闘うの?」


「いいえ、死亡と決めつけられた運命と闘うのよ。一方的にやられるのは、私だって腹の虫がおさまらないわ」


アラトマは「うへー」と苦虫を嚙み潰したような顔をして、私を見ている。


「おいおい、完全無欠の称号をどうやってる? あんな化け物を……」


「ガゼロだって化け物じゃん」



ガゼロの拳がアラトマの上に落ち、たんこぶを作った。2人はそれがきっかけとなり、言い合いを始めた。じゃれ合いとも言うけれど、状況が状況だけにピリピリしているのかもしれない。そんな2人を目に映しながら、私はぽつりと呟いた。


「怖いと言ったら噓になるわ。でも、ご褒美をもらった分情報を集めないと……」


私が今こうして何とか前を向いていられるのも、集めたご褒美を心に貯めてあるからに他ならない。今の心境は自分でも怖いくらい冷静だ。



「手伝いましょう」


ガゼロやアラトマとは違い、爛論は素直に協力してくれた。



――――こういう無謀な事、爛論は一番嫌がると思っていたわ。



ガゼロもアラトマも私と同じような気持ちを抱いていたのか、目をぱちくりさせて驚いている。爛論に触発されたのか、その後すぐに2人は表情を引き締めた。



「どうせ死ぬならさ、せめてロゼスの腕一本取ってからでも良いよねぇ?」


「グルルㇽー」



単純な、いや覚悟を決めたガゼロとアラトマの変貌ぶりは、見ていて爽快だ。


アラトマは執着と狂気と偏愛、つまり変態の仮面に付け替えている。自分を奮い立たせるために付けたのだろう。その仮面が最強で最凶だと考えたくはないけれど。


一方、ガゼロの姿は赤い毛を持つ双角の野獣だった。初めて見る姿だったけれど、それが称号の力だとすぐに分かった。


ガゼロに感じていた気配の正体を知れた事で、私はやっと理解が追いついた。




私たちの準備が出来ると巨大植物ジャイアントプラントが決闘場から離れていく。逃げ遅れた蔓はどういう訳かもう枯れていた。


ふいに視界の端で不気味な影が立つ。





「――――来ます!!」


爛論が言葉を発するや否や、それは一瞬で間合いを詰めてアラトマに覆い被さった。すかさずアラトマのわき腹に二本の指を突き刺す。



はやっ――……。



「ぐぅああぁぁはッ、上に乗っかられる趣味ないんだけどねぇ? ロゼス」


アラトマは隠してあった小型の内反りナイフを出して、ロゼスの顔面を突き刺そうとする。躱したロゼスの顔に掠り傷が付き、薄っすら血が滲んだ。両肩が地面に付いたのは一瞬で、アラトマは直ぐに体勢を整える。



「目で追うのがやっとだわ……」


影の跳躍(シャドウリープ)で移動した私は今、ロゼスとアラトマの間にいる。アラトマを庇うように前へ出てアウラで威嚇すると、ロゼスは後方へと下がった。



「わき腹の称号が狙いだったのかなぁ。抉りやがって」


「……休んでいて。動けるようになったら期待しているわ……」


「俺に……そんな優しい事……言っちゃうの? リコリス、ははっ、嬉し……」


息遣いで辛そうなのが伝わって来る。



アラトマに目線を向けた後、私とガゼロと爛論は同時にロゼスに攻撃した。ガゼロは神炎で焼き払い、爛論は補助魔法や呪術で援助する。私はアウラで千本の剣を作り、それを愛する人へ投げ付けた。1対1では勝てない事を悟り、3人がかりでえげつない攻撃を繰り返す。


でも、ロゼスはそれを嘲笑うようにガゼロを狙った。私と爛諭の攻撃を避ける事もなくロゼスは攻撃を受け、派手に血を流す。でも、それがすぐ無駄な事だと気付いた。



「傷を付けても、すぐに傷口が閉じていくわ……」


「称号の力でしょう。一時的に治癒能力が高くなるのだと思います。あとで付けを払わされる可能性はありますが……。いえ、あれはもうロゼスではなく称号そのものでしたね」


「グル……ゥゥ」


ロゼスはガゼロにとどめを刺す事だけを狙っているのが分かる。執拗な攻撃に双角の獣姿のガゼロに焦りが見えたような気がした。



――――あ、また指先。



ロゼスの指先が向けられるのと同時に、影の跳躍(シャドウリープ)で移動した。今なら間に合うかもしれない。



「だめぇえええー!!」



なりふり構わずロゼスの腕にしがみ付く。



――――なんて力なの……。ごめんなさい、その指先を1ミリでもずらしたかったのに……。



そのままズブッとロゼスは二本指で肉を突き刺した。


「手に取るように分かりやすい攻撃……です……よ」


ガゼロを庇った爛論が傷を負った。血飛沫で目の前が赤くなる。



「ぎゃっ……あっ」


その瞬間、吹き飛ばされた。思いの外痛くない。口の中が血の味がする以外は平気だった。興奮して神経が昂っているのかもしれない。


顔に付いた血を拭うと視界が良く見えた。ロゼスは天に突き出すように片手で獣の首を絞め上げている。もう片方の手は指二本が獣に向いていた。怒り狂い暴れている野獣にとどめの一撃を加えようとしているのだろう。



「だ……め」



――――せめて急所は。




アウラの塊をロゼスの腕にぶつけると、二本指は急所から外れた所に突き刺さる。獣の血が飛び散り視界はまた赤く染まった。



――――止める事が出来なかった。出来なかったわ……。



その赤い指先が今度は私に向けられる。


「皆……やられてしまった。ロゼス……。貴方の称号が強過ぎて、これと言った弱点が見つからない。どうすればいいの?」


瞬きもしないで赤く染まったロゼスの指先を見た。攻撃から逃げる事をやめて、私はじっとその時を待つ事にした。



――――私ね、もしかしたら、立ってしまった死亡フラグを叩き折れるかもしれないと思っていたのよ。何かを変えられるかもしれないと……。でも、そんな事出来る訳がなかった。馬鹿だよね……。



私に向けて放たれる攻撃が空気を裂いて、私の横をもの凄い速さで通り過ぎた。



「……え?」


「だから残念な男って言われるんだよ、ロゼス」



私を抱き寄せて攻撃から守ったのはユラだった。

読み終えて「頑張って」や「続きは?」と思った方は、ブックマークして下さいね。広告下の☆☆☆☆☆☞★~★★★★★にして評価宜しくお願いします。正直な感想に飢えてます。『111回以上婚約破棄されましたが、まだ婚約者の座を死守しています』☞https://ncode.syosetu.com/n1599he/の方も読んで下さると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ