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69 とある日の暗躍活動記録~ヤンデレ3人衆②

2人はいつの間にか戦闘態勢に入っている。


爛諭の目は蛇のような獲物を狩る目に変わり、口元は妖しく微笑んでいた。空中を漂う小光玉ライトの光に薄っすらと照らされる姿は、陰気で腹の底までドロドロとしている印象を抱かせる。


地の底から聞こえるような不気味な笑い声も、今の爛諭にはよく似合っていた。



一方、アラトマは血に飢えた瞳になっている。


先程までの人の良さそうな面構えをした仮面は剥がれ、代わりに狂気と暴力の香りがする仮面に付け代わっていた。長い舌を出し興奮気味の息遣いは、狂気の沙汰だ。恍惚の表情に突き上げるような衝動が入り混じっている。





そして、私はと言うと……。


爛諭とアラトマの2人がこのように変貌する事を予測し、その面倒を私に押し付けたロゼスとガゼロに対する怒りからなのか。それとも、私との約束をキャンセルしたロゼスがガゼロを選んだ事への嫉妬からなのか。はたまたこの一連の詳細をロゼスではなくアラトマから聞かされた事への憤りなのか……。



――――どうしてかしら……? どす黒い気持ちが溢れてくるわ。



そんな仄暗い気持ちに包まれてしまった私は、気付けば隠しナイフをボキッと折っていた。アラトマの言う事が本当だとしたら、ロゼスは私よりもガゼロを選んだ事になる。


怒りに鬱々とした気分が混ざり、無意識に出したアウラが毒々しい色に変化した。


やがて私のアウラはそれ自身を変化させて無数の花を生み出した。その花が寄せ集まると、私の背中には花で出来た翅が生えた。





「ふふ、ふふふふ、ふふっふ……」


込み上げてくる感情のままに笑った。



――――訂正する。やっぱり私は……。ううん、私たちは、ヤンデレ三人衆と言われても文句言えない病みっぷりの似た者同士なのだわ。



気持ちに呼応するようにアウラの翅が羽ばたくと、男子生徒たちはやっと私たちの存在に気が付いた。



「あ、今のリコリス、食べちゃいたいくらいすげー良い顔してる」


アラトマに顔を覗き込まれ、長い舌で頬を舐められた。普段の私なら顔を赤く染めたり青く染めたりしたけれど、今の私は崖っぷちに咲く雑草のように逞しい。そんな事で一々顔色を変えたりはしない。


何なら手でアラトマの顔を払いのける。


「アラトマの言う通り、貴女は少し毒を帯びていた方が綺麗ですよ」


爛諭が私の手にキスを落とした。親愛のキスに深い意味を求める事を止めた私はただ一言こう言った。



「さあ、派手にやりましょう?」






私の合図で最早暗躍の「あ」の字もない、半ば自棄くその密やかではない暗躍活動が始まった。


爛諭とアラトマは、もうすでに生徒たちの目の前に移動している。爛諭は同じユリネス大公国の生徒4人に狙いを定めていた。最初は驚いて恐怖の色を顔に滲ませていた4人だったけれど、すぐに平常心を取り戻したようだ。



「この学園では身分や位なんて関係ないんだ。邪魔をするなら例え貴方でも容赦はしない! 僕たちの命は全部、ユリネス大公国の為に!」


その言葉で結束を強めているのか、4人は簡単に爛諭に牙を剥いた。そんな彼らに爛諭も容赦はしなかった。


4人は覚えたての拙い魔法を爛諭に放っていたけれど、爛諭はそれを軽やかに躱していく。それから爛諭は反撃に出てルーガス家の令息に的を絞ると、何度も呪いのような言葉を浴びせて否定して、短剣で手首だけを狙い同じ個所に小さな傷を付けていった。


執拗に狙う爛諭の戦い方に耐え切れなくなったルーガス家の令息が気絶すると、それを見ていた仲間3人が悲鳴を上げて逃げ出した。



「まだ終わっていませんよ。ユリネス大公国に生まれた者同士、仲良くしましょう? 私の愛情かんがえ全てを受け止めてもらいますからね?」



爛諭の呪術は逃げる者を許さなかった。


小瓶に入っている黒い液体を地面に数滴たらすと、影が本体と離れて意志を持って動き出した。私の影や爛諭の影、他の男子生徒たちの影さえ爛諭は意のままに操る。逃げようとした3人は影に簡単に捕まった。



――――さすがは爛論。無駄な攻撃が一切ないわね。男子生徒たちが気の毒になるくらいだわ。




3人の末路もルーガス家の令息と同じだという事を分からせるためか、爛諭は短剣を向けて男子生徒の1人の手首に傷を付けようとする。それを見た男子生徒の喉がヒュッっと鳴り、恐怖のあまり呼吸が荒くなった。




「分かれば許してあげましょう。今後、私に従うと誓いますか? それともまだ企み、戦争に加担し、富や地位、名声を得る気でいますか? 私としては馬鹿のままでいられると困りますが……。本音を言うと馬鹿も好みですよ」


爛諭がにやりと笑うと、同時に3人の意識が途切れた。



「…………やれやれ、大きな事を口走る者ほど根性がありませんね。私の攻撃など痛くもない幻術の類に過ぎないのに、雰囲気に吞まれ過ぎですよ」


満足したのか爛諭の笑顔に先程の毒気はない。爛諭は私に「彼らを連れて先に帰りますね。彼らが起きたら再教育をしなくてはいけませんから」と言い、特別寮へと消えていった。


もちろん男子生徒たちはアウラで束ねられ、雑に運ばれていった事は言うまでもない。







一方、アラトマはアンドーラ国出身の生徒2人と割と本気な戦いをしていた。暗躍と暗殺を得意とするアンドーラ国の特徴が色濃く出ている戦い方だった。


テトラと呼ばれた生徒と少し気弱な発言をしていた生徒は、隠し持っていた沢山の武器で立て続けに攻撃をしていく。その武器は四方八方から飛んできて思わぬ方向へ抜けていくので、私もまた気を付けなければいけなかった。


後方から飛んでくる長細い針のような武器を背中の翅ではたき落とすと、私はアラトマを見た。


「完全に遊んでいるわね、アラトマは……」




歩く凶器のような2人をアラトマは嬉しそうに相手をしている。


「久し振りで制御出来なかったら、ごめんね。ハァハァ、気持ち良過ぎてヤバイ仮面やつになっちゃいそ。遊び殺しそうになったら逃げてね。あ、もちろんリコリスも」


「……ええ、安心して。アラトマには殺されたくないから、そこの2人を連れてすぐ離脱するわ」


「それって……。ロゼスになら殺されても良いって聞こえるよ? はは、何だかムラムラしてきた」


「相変わらずの変態仮面ね……。もっとマシな仮面をストックしておきなさいよ」


「……んー? 仮面の話リコリスにした事あったっけ? まぁ、いいや」


アラトマは一瞬だけ真顔になった後、ふわりと笑ったような気がした。



――――き、気付かれた? ああ……。気を付けなくちゃいけないって思っていたのに、またやらかしてしまったわ。前回しか知り得ない情報を言っては駄目なのに。馬鹿を通り越して阿呆ね、私。



アラトマに気付かれないように冷や汗を手で拭う。



アラトマが持つ複数の仮面ストックの事や素顔の事を私はやり直す前の出来事で良く知っている。でも、今の私はその事を知らない事になっている。爛論同様、今回の私はアラトマとそんな話をしてはいないから。


さらに言えば、アンドーラ国の民が仮面を使い分けてる事を私が知っている事も、アラトマは知らない。私とアラトマは前回では互いを探り合った仲だったけれど、今回の私たちはそこまでいかない一歩距離を置いた仲だ。


素顔をたまに見せてくれる程懐いていると感じていても、所詮はその程度。アラトマがこの事について深く言及しなくて本当に良かったと私は胸を撫で下ろした。




目の前では仮面を被ったアラトマと、同じく仮面を被ったテトラたちの攻防が繰り広げられている。テトラと呼ばれた生徒の仮面は、強気で目立ちたがり屋の仮面、もう一人の仮面はオドオドしていて気弱な仮面だと判断した。



――――優勢なのはどう見てもアラトマね。



テトラたちは攻撃すればする程心を削られて、追い詰められているように見える。考えられる理由は一つ。テトラたちの仮面が剥がれそうになるくらいに、アラトマの仮面が狂暴で強いのだ。



アラトマは2人が投げた武器を受け止めて、わざと一つ一つ丁寧に折り、最後には壊した武器の数を口にした。武器が尽きるのをカウントしながら追い詰めていく。見せつけるように、格上であると分からせるように、2人の心を折るように、武器を圧し折っていった。



――――うん、えげつない。敵に回したくないわ。




もちろんそんな事をされた2人の顔は苛立ちと苦痛に歪んでいる。



「クソッ! 何で放っておいてくれない! アンドーラ国の民は個人主義で結束しない規則だろ? 治者と言えど、僕たちのやる事には口を出せないはずだ。身分も位も関係がないアンドーラ国では、治者なんてものは名ばかりだからな」


「テトラの言う通り。……だと思い……ます。アラトマ……」


「でもねぇ、アンドーラ国には暗黙の裏規則うらルールがある事、忘れちゃった? 君たちはまだ雇用先を見つけていないんだから、長い物(治者)には巻かれとくべきだよねぇ?」



最後だと思われる武器を圧し折ると、アラトマはテトラの両腕を軽々と縛り上げた。取るべき行動が一択だと言わんばかりに、目で圧力をかけていく。






「そこまでです!」


ふと背後から声がした。気弱な発言をしていた男子生徒が、私の首に刃物を突き付けている。先程とは違う仮面――ずる賢くて、目的のためなら手段を厭わないと思わせる仮面ものに付け替えたのだろう。


背後から殺気がひしひしと伝わってきた。視線をアラトマに向けると、想像通りの嬉しそうな顔をしている。



――――嫌な予感。



「ルピ、いいぞ。その女をれ」


「……足手まといのテトラは黙ってて。アラトマ、僕は本気ですよ」


「いいねぇ、こんな展開を待ってたよ。リコリスをどうやって料理してくれるのか楽しみだ。綺麗に殺るんだよ?」


「……。本当に腐ってるね、アラトマは。それじゃあ遠慮なく――――」

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