22話脅威の存在
2日目の夜を越えた廻理と真輪が拠点としている家に戻ろうとした時あることを耳にする。
「おい…さっそく死んだ奴が出たらしいぜ?」
「まだ2日目だろ早くないか?」
とヒソヒソと話す声が聞こえる。
廻理は、霊気で耳を強化しているためそれを聞き逃さなかった。霊気は、五感すらも強力にするためとても便利だ。それが使えるか使えないかで生存確率が大幅に変わる。
「誰か死んだらしいぞ」
と廻理は、隣を歩く真輪に声をかける。
「どこでそんな情報を?いくらなんでも死者が出るのはもっと後半になるはずだけど…」
怪訝そうな表情をする。
「他の人が話しているのを聞いたんだ。耳を霊気で強化してるからね!」
「そういうことか、それにしても死んだのがあの人達じゃないと良いんだけど…」
と言う。あの人達とは、夕、星羅、奈々や未怜のことだろう。
確かに仲良くなった人が死ぬのはいい思いがしない。
そんなことを考えながら歩いていると、正面から声がかけられる。
「あ!廻理君、無事だったんだね。良かったよ。君達なら無事だとは思ったけど」
と夕と星羅がやってくる。
「夕!無事だったか。なんか死者が出たとか言う話が出てるけど」
と何か知ってるかもしれないので聞いてみる。
「それが…廻理君が昼間に威圧して追い払った人がいたでしゃ?その人と巫女が戻ってないらしいんだ」
と教えてくれる。戻って来ないイコール死んだということになるのが当然の流れになっている。
「でも2日目に死ぬというのはおかしいって言うのがみんなの意見なんだよね」
と言いながら奈々と未怜が歩きながらやってくる。2人も無事だったようだ。
「昼間見た時に彼らは特に怪我をした様子が見られなかったし、彼の実力は受験者の中ではある方ですので…それが2日目で死ぬのは考えられないみたいです…」
と未怜が説明する。
「ということは、何かあって姿を隠したか…それとも殺されたのかどちらかだな」
と廻理は、推測する。
「殺されたとしたら強力な霊異がいるということよね…警戒しないと不味いわよ。今は日が出てきてるから大丈夫だけど夜になれば…」
と真輪が言う。
太陽が出ている間は大丈夫だが、それも夜が来れば終わる。
みなが命の危機を感じ取った。
「警戒するに越したことはないな…夜は出来るだけ大勢で行動した方が良いかもしれない」
と廻理は言う。
「そうだね、それが一番よ」
「僕もその方が…良いな」
と奈々と夕も賛成してくれる。
また夜になる前に集合することを約束して別れた。
拠点に到着した廻理達は、少しはなしをする。
「とてつもなく強力な敵がいる…そう考えた方が良いよな?」
「ええ、それを想定していた方がいざという時に身体が動くと思うわ」
と真輪が頷く。
真輪が寝息を立て始めたことを確認した廻理は、刀を持って立ち上がる。
そして外に出る。
「もし、本当に強力な敵と遭遇したとして今の俺に真輪を守ることが出来るか…」
師匠である叶絵には、試験なら大丈夫だと言われたが試験とは言えない状態になるかもしれないのだ。
いきなりの実戦…相手は上級霊異なんてこともあるかもしれない。勘が鋭いわけではないが廻理は、嫌な予感がしていた。
「最悪を考えて、最善の行動を…」
どこかで聞いたセリフを思い出し呟く。
「少しでも強くなるぞ…」
と言いながら廻理は、刀振るうのだった。
「受験者の1組が死んだみたいだ……だが、中級に負けたのか?」
と斎喜が呟く。
「試験場の、周囲に待機している霊断士はその霊異を捕捉出来なかったみたいだ。そんなことがあるか?」
と叶絵も驚く。
「叶絵、斎喜」
と主が呼ぶ。
「はっ!」
とすぐさま2人は返事をし、姿勢を正す。
「すぐに2人で試験場に向かいなさい。2人ならばここから1日と少しもあれば着くでしょう」
「御意!」
と言い眷属2人はすぐさま神社を出る。
「行くぞ!斎喜」
「そうですね。急ぎましょうか」
と言いすぐに走り出す。
「まさか、試験の時に仕掛けてくるか……きっと上級が入り込んだな。無事でいてくれ…廻理」
と叶絵は苦そうな顔をして走る。大切な弟子を思いながら。
「気をつけて行こうか……ここからは何が起こってもおかしくない」
と廻理の声に合わせて、奈々と夕のペアが頷く。
3日目の夜が始まろうとしていた。




