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異端なる白銀の後継者  作者: れとると
——《追想の地》編——
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追想

 時は平安時代 延喜2年

 鬼という存在は概念では無く、額から角が生えている者を人々は角付つのつきと呼び、角が生えているだけの人間として共に暮らしていた。


 次郎坊ぼくが居る場所は山の麓に作られた集落であり、人と鬼が協力し合い田んぼを耕し米やヒエを作る

 一人一人そこまで裕福とは言えないが、皆んな毎日を笑い合い暮らしている様だ。


酒田さかたお前さんたいそう村の皆んなに好かれているじゃねーかい」


「そうか? ……まぁこれも日々天気が良くても原っぱに寝転んでサボらなかった報いだろうなぁ」


「それぇは俺が皆んなに嫌われてるって事にならないかい?」


「ははっ、どうだろなぁ」


 すると遠くの方から2人呼ぶ声。


「おーい、酒田さかた次郎坊じろうぼう飯ができましたよ」

 そこには16歳程で手足は細くボサボサした白い髪を肩まで伸ばした少女が2人を呼んでいた。


「おーてん、分かった直ぐ行ぐ」


 てんはこの集落に来る前は都を追放された罪人であり、道中幼い頃母と父は飢えで早くに亡くなっている。

 それから山で倒れているところを酒田さかたにより拾われていた。


 てんは口がボロボロの茶碗に湯で増やしたヒエ粥を入れ、添え物として漬物2切れを2人の前へと置く。


「おっ今日は漬物が付いてるじゃないかい!」

 次郎坊じろうぼうは漬物に木の枝を削って作った不恰好な箸を伸ばす。

 するとてんは箸の伸ばされた次郎坊じろうぼうの漬け物の皿を手で引く。


「あっあっ、おいてん


 てんはにっこりと笑顔で。

次郎坊じろうぼう、貴方今日何してました?」


「えっ……いやー」


「はっはっ! 次郎坊じろうぼう怠けたバチがあたったなぁ」


「すっすまねぇてん明日からはしっかり働くから……」


「フフッ、約束ですよ」

 てんは優しく笑い漬け物の皿を戻す。



 ……とても幸せそうだ。


 すると目の前がブツッと暗くなり、そして再度目の前の視界が開けると景色はがらり変貌を遂げていた。


 始めに視界に飛び込んできたのは次郎坊ぼくの目の前で3人が笑い合いご飯を食べていた家がごうごうと音を立てながら炎に包まれ崩れていく景色であった。


「貴様らの所為でおっ父は……」「死んでしまえ!」

 3人に浴びせられる信頼されていたはずの村人達からの罵倒。

「待ってくれこの疫病は俺達の仕業ではない! はめられたのだ2年前きた下級貴族の晴明はるあきらというものに!」


「黙れ!」

 1人の村人はその場の石を酒田さかたに向け投げつける。

 石は酒田さかたの右眼に当たり、瞳は潰れ血がダラダラと流れ出る。

 それでも酒田さかたは地に膝を額を付け、村人達に嘆願する。


「頼むから信じてくれ……」

 すると村人達の後方から人を掻き分け刀を持った貴族の様な身なりの男が酒田さかたの前にし立ち止まりそこで後ろを振り向き村人達に言い聞かせるように言葉を発っする。


「皆の者騙されるんじゃ無い、この者は人では無いこの世に害をもたらす存在である悪鬼あっきであるぞ!」

「そうだ、その通りだ!」


 村人達の怒りはさらに伝染し加速していく。


 すると貴族の様な男は再度酒田さかたの方を振り向き、しゃがみ込み耳元で何かを囁いていた。


 何を言っているのだろう? 次郎坊ぼくからは何も聴こえない……、けど良くは無い事は確かだろう酒田さかたという人の絶望した顔を見て次郎坊じろうぼうの悲しみ感情が僕にもしっかりと感じられる。


「くそ!!」

 すると酒田さかたは急に立ち上がり、貴族の刀を奪いとるとすかさず貴族の首を刎ねる。


「……お前……なっなんて事を! この村で貴族様をお前は!!」


次郎坊じろうぼうてんを連れて走れ!」


 ブツッ——またしても視界が真っ暗になり、再び視界が開けた時木々が生い茂る場所でてんという少女が小さな角の生えた赤子を抱いて息絶えていた。


酒田さかた……男の子だ、お前も今日から父親だ……酒田さかたこれから本当にどうするんだ」

 酒田さかた雨が降る中産まれた赤子に背を向け立ち尽くしていた。


「……次郎坊じろうぼう俺は決めた、この世を正す為におにを粛清しいつしか晴明きじんを殺す」


酒田さかた何を……」


「——」

 酒田さかたは貴族の男に耳打ちされた事を綴り始める。


 ……そんな、そんな事が合っていい訳がない、これじゃあ僕が信じた事は全て嘘になるのか。

 この世の害、悪はおになんかじゃ無かったって事か。

 この世を歪めているのは……人間、いや人間という鬼がこの世を……!




 ——「さぁこれで終わりですかねぇ」


 楠那くすな小野目おのめに向け鋭く尖った爪を振りかぶる。


 ドォォォオン——その瞬間地面が大きく揺れ寝静まった鳥達が一斉に飛び立つ、それと共に伏見ふしみの叫び声がピタリと鳴り止む。


「何が……は? 何ですかあれはそんな事があり得るのですか……」


 楠那くすなの目の前に映ったもの、身体に縛られていた糸を引きちぎり立ち上がる伏見ふしみの姿、だが眼は悪魔の様に真っ赤に染まり身体中真っ白な肌、そして背中には6本の剣の様な翼が生え揃う。


晴明はるあからは上位貴族になり上がる計画を立てていたらしく、それで眼を付けたのが角付きの魔力……角付きの産まれながらに持つ魔力を手に入れる為角付きの身体を調べているらしい、どんな事をしてもだそうだ、殺しても共に暮らしている村人がどうなろうとだそうだ。

 しまいには角付きによる反乱を起こさせ自分以外の上位貴族を殺め様としていたらしい。

 それまで晴明はるあからは力をつけ生き残る為の調べを急いでいるらしい、ははっそうなればこの国は晴明はるあからの物になるだろうな》】



 ——次郎坊じろうぼう……おに憎め、全てはこの世の為……その為に俺はおにになる今から俺の名は酒呑しゅてん童子どうじ! この世を正す者なり!——







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