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異端なる白銀の後継者  作者: れとると
——《追想の地》編——
40/43

人柱

 ——此処は何処だろう? ……まだ身体が痺れていて思い通りに動かない……、僕はどうなったのだろう。


 記憶が曖昧で、確か……部屋に女の子が入ってきて……そうだ皆んなは生きているのだろうか、すべての傷、痛みを吸収ドレインできたのだろうか……。



 ——身体の痺れが大分無くなってきたな。


 閉ざされていた伏見ふしみの五感が機能を再開する。



「——……どうするか」


 誰かの声が聞こえる、雨が降っているのかよく聴こえない。


「封印が強いですね……次郎坊じろうぼうの瘴気が漏れ出るほどには出来ましたが、これでは肉体《細胞》までは辿りつけなさそうですねぇ」


 伏見ふしみはゆっくりと眼を開け顔を上げる。


「おや、情報では回復は2週間ほどだときいていたのですがね」


「誰……ですか?」


 目の前は半径25メートル程の円型の草原を大きな木々が周りを囲み、その中心には伏見ふしみの倍はあるだろう高さの3つの石碑が並んでいる、伏見ふしみでも危険を察知する程に石碑からは呪が絡んでいるであろう瘴気が漏れ出ていた。瘴気が充満するその場には楠那くすな御殿場ごてんば2人と伏見ふしみを連れ去った伊豆いず姿があった。


「お前……ぅぐ」

 伊豆いずは身体から出す糸で伏見ふしみの身体、口を縛り付ける。


「此奴、呪詛、吸収、使用?」


「あぁ、そうですね……それが良いですねぇ」


 楠那くすな伏見ふしみに胴体に巻き付いている糸を両手で鷲掴み、勢いよく瘴気が漏れ出てている3つの石碑の中心まで投げ込む。


「グッ……」


 石碑の中心は先程までの瘴気とは比べ物にならない程濃く、その場にいるだけで頭痛、目眩、吐き気を発症する程であった。


「生き返った直後に申し訳ありませんが、貴方に選択して頂きたい事があります」


「んー……んー……」


「……ふぅ、これでは会話になりませんね、伊豆いず殿口に巻き付いている糸を取ってあげて下さい」


 伊豆いずは首を縦に頷き、握る右手を広げる。

 するとシュルシュルと伏見ふしみの口元に巻き付いていた糸が解けていく。


「ゴホッ……ゴホッ」

 何なんだこの人達は……何が目的なんだ……、それにしてもこの場所は……苦しい、今にも狂ってしまいそうだ。


「それでは話の続きですね、貴方が今寝転んでいる下にはあやかしながらこの世を憎み魂に呪を絡ませた化け物大天狗、次郎坊じろうぼうが封印されています」


 楠那くすなが提示した選択肢。


 1、この場に漏れ出てている呪の絡んだ瘴気を吸収ドレイン後、身体の一部を提供する


 楠那くすな達は次郎坊じろうぼうの力を手に入れるためには肉体さいぼうが必要であった、だが封印が完全に解くことが出来ない現状に伏見ふしみという存在。

 完璧な力は手には入らないが伏見ふしみに呪いを吸収ドレインさせ、次郎坊じろうぼうの疑似細胞を作ろうとしていた。


 2、呪の絡んだ瘴気がこの場に留まらず、ゆくゆくは街、人がいる場所まで流れ出る。

 それをこの場所で何も出来ないこの現状で人が苦しむ様を傍観する事しか出来ない苦痛を味わう。


 この選択肢は伏見ふしみにとって選ぶ余地など無かった。

「卑怯者……」


「何とでも言って下さい」


 伏見ふしみは再び鬼の呪力を高め、鬼化をする。

 鬼化した後周りの瘴気は甘く、伏見ふしみはこの香りに少し心が癒しの感情を持ってしまった事に悲しみを感じ矛盾を起こしていた。


「最後に確認させて下さい……僕が身体の一部を提供した後、貴方達はそれからどうしますか……この場にいる人達に手を出すのですか?」


「大丈夫ですよ、今回の1番の目的は次郎坊じろうぼうの細胞です、手に入れたのなら撤退し今日の所は皆さんに手を出しません、勿論貴方の事も解放しましょう」


 今日の所は……か


「分かりました、……約束して下さい」


「はい……、それでは伊豆いず殿右腕の糸を解いてあげて下さい」


 伊豆いずは頷くと、伏見ふしみの右腕の糸が解ける。

 伏見ふしみは横たわったまま、右腕を上に向け手を広げ魔力を右掌に集中するイメージをする。



 僕1人の犠牲で皆んなが助かるなら……。

吸収ドレイン!」——




 時間は24時を周り16日を迎えた頃、小野目おのめ達は志木しきの式神兵に連れられ比叡山の入り口に到着していた。


『此処から、1キロ程進んだ場所だと思われます、小野目おのめ先生、それと……白フードさん……』


「大丈夫よ志木しきさん、先程も説明した通りこの人を信用して下さい」


小野目おのめ先生が言うなら……、ふぅーそれでは行きますよ』


 小野目おのめ達は比叡山の地に足を踏み入れる。

 道は獣道が多く雨でぬかるんでいた。


 それから走り続け10分程が経ち山中、充彦みつひこが何かを感じたのか立ち止まり、上を見上げる。


『どぅ……しましたか? 白フードさん』


「あっいや、すみません……少し身体を伸ばしていただけです」


『そうですか……』


 そしてまた、走り始める。


「先生……」

 走り始めてすぐ、充彦みつひこ小野目おのめに近づき志木しきに聞こえない程の声で話しかけてくる。


「どうしたの?」


「この山の周りに漂っていた瘴気のような物が一点に集まっているように感じ取れます、確かあきらの能力は吸収ドレインでしたよね……すこし急いだ方が良さそうです」





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