刹那
6月13日10時00分
「皆んなおはよーさん、今日は東日本チームやな。
今日終わったら明日1日休みにしたるから頑張れよー」
1回戦目【関東東京高校1年1組】対【東北宮城高校1年9組】
東京校の1組の代表には志木 茉由がいる、志木はメディアなどで多く取り上げられており有名人である為、どの生徒からも警戒されていた。
どの生徒も志木は一騎戦に出るものだと予想されていたらしく勝てない戦いは避けて城内格闘戦で確実な勝利を目指す者もいた。
なのでその者達は絶望しただろう、志木がここにいる事に……。
周りが騒つく、それもそのはずだった目の前で実物を見た者は衝撃を受けない訳がない志木さんはどう見ても、か弱い女の子にしか見えないのだから……。
「じゃ試合開始!」
——それからどうなったかというと……試合時間たった5分という圧倒的な東京校の勝利で終わった。
開いた口が塞がらないとはこの事なのだろう、誰1人として声すらあげる事は出来なかった……。
志木さんのチームは誰1人としてスタート位置から動かず勝利したのである。
デタラメ過ぎる力であった、スタートの合図がかかった瞬間宮城校は定石通り地形図を創造へ取り掛かるのだが志木さんは違っていた。
合図と同時に白い札の様な紙切れを数枚ばら撒く、そのお札は志木の手から離れるや否や意思を持っているかの様に弾丸と思える程の速さで相手に向けて飛んでいくのである。
それも目の前で起きた不思議な事ではあったのだが驚くには早すぎたのである、ここからが巷で【エージェント】と呼ばれる志木 茉由の恐怖が始まる……。
札は一切の音もなく相手に忍び寄り目標を認知するとシュルシュルと札が糸状に解れていき人型を生成する……、手には刀や銃なども装備されており、ここからは悲惨なものであった宮城校のチームに対し10体位の人型のお札がズダダダダッと城内全体に響きわたるほど威力がある重い銃弾を乱射し、射程の死角に入られる様な事があれば刀を持った札が接近戦で気絶するまで嬲り続けるのだ……。
身体中が身ぶるいしている、ほんわかしている女の子がここまで非常な戦いをする事に……。
「ぜ……全員気絶しとるな……、試合終了や」
相手チームにはトラウマものの経験になる事間違いないだろう……。
「じゃあ次のチーム準備しー」
10分のインターバルの後他のチームの試合が始まる。
その試合の間、遠くの方から宇多向かって少女が1人話し掛ける。
「やっと見つけたー! 宇多ちゃーん、私の試合どうでしたかー?」
志木 茉由とチームメイト達であった、……他の生徒達の中を堂々と歩いてくる姿は強者の余裕の様なものを感じ、まさにこれは勝者の凱旋を醸し出す。
「えぇ見てましたよ、茉由貴方本当にえげつない戦い方しますね……。
あんな戦い方ばかりしてたら、いざ札が無くなった時どうするんですか? 体は常に戦闘体制位した方が良いですよ」
「あぅ、信条さんにも同じ事言われた……グスッ」
「はぁ、全く貴方の嘘泣きは見飽きましたよ」
「あらら……茉由ちゃんバレちゃてるね〜」
チームメンバーの長い髪を後ろで束ね結んでいる、少し大人っぽい女性が志木さんの頭を手でわしゃわしゃと、掻き乱す。
元々クセ毛な志木さんは余計にもっさりとした髪型になっていた……。
「うぅぅ……宇多ちゃんも涼ちゃんも酷いよ〜」
志木さんが先程とは違い少し小さく見えた……。
その時『がぁぁあ』とモニター越しに片方のチーム最後の1人が倒された声が響いた。
「試合時間は15分ですか……さて、皆さん次は私達の出番です、作戦の方よろしくお願いします」
——「次は……【関東東京高校1年6組】と【中部石川高校1年9組】やな、ほな準備しー」
僕達のチームは4階からのスタートとなった。
ガチャっと扉を開け城の内部へと入っている。
すると、ジリリリっと城内に警報が数秒鳴り、『いくで、試合開始』とスピーカーから信条さんの声で合図が響く。
開始と同時に宇多が1人、前へ出る。
「皆さん行きますよ!」
宇多は斜め下に向けて右腕を伸ばし、手を全開に広げると、ボォォォオンと最大火力の爆発を放つ。
城はその爆発で全ての階層を崩壊させるほどであった。
「敵を確認しました! それではよろしくお願いします」
——【作戦は京都校と同じ手を使います】
「でもそこで大切な事が1つあります。
それは京都校より爆発のスピード、威力+奇襲能力が優れていないとダメなんですです。
まず爆発スピード、威力は問題ありません。京都校は7分掛けてあの程度の破壊能力です、私なら1秒で城を半壊させる事ができますから」
「宇多さん今さらっと恐ろし事いってるわよ……」
「宇多質問いいかな?」
「何ですか明?」
「布石って言ってたけど、どういう意味なのかなって思って……」
「まず京都校の初回で見せた爆発を封印するのが理由ですね。
あちらは準備が掛かりますから、地形図を作り、私が探索呪術で位置を確認しながら無線で指示をします、そして妙な陣形だと感じたらすぐさま私から爆発を仕掛けます……っとまぁ、あちらもその事は明日の初戦を見れば考えると思うので使わないと思いますがね……」
スラスラと作戦を伝える声に自信の様なものを感じた。
「えーじゃあ奇襲能力っていうのはー」
「それはですね、宗方 遊馬保険ですよ、それでもどちらかが爆発したときの対応ですね」
保険の奇襲作戦を聞き僕はまず、簡単に言っているけど、かなり難易度が高く出来る者は早々いないだろう……っと思ってしまうほど、突起な発想であった。
「待て待て、黒子ならいけるぞ! そういうのは得意だからな!」
「うん、確かに奏ならいけると思うよ、奏の戦闘スタイルは今数が減っているけど足の速さ、小手先が器用な【忍】だから、メインを任せても良いと私は思う」
「イリヤ……そこまで黒子の事を……」
「はぁ……」
上条さんはいつも以上に冷たい目を黒子さんに向けていた。
正直、黒子さんは損な性格をしている、こんな変態気質で無ければもっと上条さんに……いや、かなり好かれていただろうに……。
——「皆の者! 黒子についてこーい」
崩れ落ちる瓦礫から瓦礫に跳躍強化呪術で飛び移りながら相手に距離を縮める。
反射神経促進呪術は勢いよく落ちる瓦礫を移動、また自分達が瓦礫に当たらない様にする為の役割を担っていた。
それにしても……黒子さんはかなり手慣れた様に素早く瓦礫を伝い下へ降りていく、周りをよく見れていて、なおかつ単純にこれは体を自在に操る才能を持っているという事なのだろう。
一切、黒子さんの動きに無駄がない。
「到着!」した瞬間に相手は目を疑っただろう目の前から黒子さんが消える。
「あの女どこに……」
「ここだ」
背後を取られただけではなく、小刀を首元に突きつけられていた。
「まず1人目……」
素早い動きで僕らが到着する頃には5人、黒子さんによって気絶させられていた。
「どうだぁあーイリヤ! 黒子全員倒したぞすごいだろ、だからな黒子を抱いて頭を撫でてくれても良いんだぞ〜」
「はいはい」っと仕方がなく黒子さんの要望に応えていた。
「なっ……なんだよこれ、なぁ妹の爆発は俺らとそんな変わらないって言ってたよな! 宇海」
「昔はそうだったんだよ……、くそッ! 良い気になりやがって」
城内のスピーカーから試合終了の合図が鳴る。
「はーい試合終了な、意識ある人はこっちに来てくれなー」
(はぁ……今日も嫌味電話来るやろな……、なんやろ、なんかもうどーでもよくなってきたわ)
僕らは試合時間2分と異例のスピードで初勝利を飾った。
そしてその仲間と喜びあっている伏見に視線を送る1人の人影……フードを被り全身を白いコートで身を隠している。
だが伏見は気づくはずもなかった、何故が伏見を見ていた場所それは、伏見達がいるキャッスルコンバット用の建物から5キロ離れた高いスギの木の上に立っていたのだった。
そしてその者はボソッ一言つぶやく。
「……やっと見つけた」
「えっ……」
「どうしたー明、明後日の方向なんか向いちゃってー」
「あっいや、ごめんなんでもないよ……」




