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スペル・エラー ~娘が生まれるのに異世界へ召喚されたので、何があっても帰ります~  作者: とろたま愚鈍
第一部:第一章|ヴェーラ編

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プロローグ「俺の世界の終わりには」

——白と赤。


雪が積もる白銀の世界にいた。


体が動かない。

寒いはずなのに、もう何も感じなかった。


視界の端に、何かが見える。


遠い。

ひどく遠いのに、なぜかよく見えた。


白い雪の上に、横たわる体。

俺の、体だ。


——頭が、ない。


ああ、そうか。

だから遠いのか。だから寒くないのか。


不思議と、怖くはなかった。

ただ静かに、そう理解した。


「……っ。」


彼女は、泣いていた。


この子が、ここまで泣くのを初めて見た気がした。


いつも凛としていて、何があっても揺れない奴だったから。

それなのに今、両手で俺の頭を抱えて、声を殺して泣いていた。


冷たい指が、頬に触れる。

涙が、落ちてくる。


呼びかけたかった。

泣かなくていいと、伝えたかった。


でも声が出なかった。

もう死ぬのだから、当たり前だ。


「——————。」


心の中でだけ、名前を呼んだ。

雪が、降っている。

白い世界が、ゆっくりとにじんでいく。


会いたい人がいた。

帰りたい場所があった。

でも、もう、それは叶わない未来だ。


未来は、もう見れない。

それでも、不思議と、空っぽではなかった。

ここまで走ってきた過去だけは、確かに俺の中に残っていた。


後悔はある。

悲しくもある。

願いもある。



——せめて、「彼女」が幸せでありますように。



そう願いながら、俺は過去の中へ沈むように、意識を閉ざした。


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