第27話 ライカとヒプノ
皆さま、あけましておめでとうございます!
元日更新は、夜中にしました! 元日の夜更かしって楽しいですよね!
俺は俺7号。俺はフラム担当で、金沢ダンジョンの隠し…もう別荘でいいか、その別荘に滞在している。今は、そのリビングにて、ひより、笹木(影子の分身)、マナ、南さんと一緒に状況を確認している。
このタイミングで、速報で俺1号の影子からアビスヴォーカの情報が送られてきた。
「オーファンネストですか。全滅していたと思ってましたが、アビスヴォーカのメンバーになっていたんですね」
南さんが自分の端末にメモしている。
「アビスヴォーカの建前で取り込まれれたオーファンネストが気の毒ですね。結局はお金のために動く組織じゃないですか。ホロウくんが可哀そうです」
マナの意見も頷ける。最近、ホロウの動向や発言を共有しているせいか、すっかり親しみが湧いてきている。それに、ひよりが異論があるようだ。
「僕は建前と本音っていうところは違う気がする。組織だと方針が変わることがあるからね。ダンジョン人たちの深淵派と調和派の争いみたいに、派閥で考え方が違うってこともあるし、オーファンネストが身を寄せた時と状況が変わってるんじゃないかと思った」
マナは何度もうなずく。
「確かに、エバーヴェイルも最初はお金のために配信とか色々頑張ってましたけど、途中からダンジョン攻略に貢献するって、こじにーの意見に乗って方針が変わりましたね」
それに苦笑いする笹木。
「確かに最初は配信の収益が入って嬉しかったよね。フレイヤなんかもスパチャを喜んでたし。でも、方針が変わったというよりは、最初は無かった方針が固まってきたってところじゃないかな」
「すごく昔の事みたいですけど、まだ半年前ですね」
マナが笑い、笹木もそれにつられる。ひとしきり笑った後、南さんが切り出す。
「この先どうしますか? 影子さんはオーファンネストが鍵と思っているようですけど」
笹木が少し考える。こいつも影子の分身だし、何なら今の影子が笹木なんだが、南さんは知る由もなし。
「ダメもとで、オーファンネストの懐柔を図ろうかと思います。最善はアビスヴォーカの捕縛、解体に協力してもらうこと。もし、協力が得られなくても、おとなしくしてもらうだけでもいいですね」
笹木の言葉に南さんも同意のようだ。
そして、次に捕縛されたひより女史の話になる。
俺はスキルによって皆の目の前に大画面の映像を映し出している。その映像はスクリーンではなく、空中に映し出されている。これはフラムのペルソナが教えてくれた便利機能で、フラムの視覚を他人と共有するものだ。見た目は、空中に浮かんだスクリーンで映画を見るような感じだ。
そこには1台のバンが映っていた。当初3台のバンで走っていたのだが、途中で別れたのだった。俺はバンではなく、ひより自身を追っているから惑うことなく追跡ができている。
「新社屋で罠をはってよかったね。なんというか、ここまで上手くいくとは思わなかった」
笹木が言うことも一理ある。ただでさえ目立つエバーヴェイルが新社屋でお祭り騒ぎなわけだ。罠のにおいがぷんぷんすると思う。ここは、千種が流した情報が上手く働いてくれたんだろうと思う。
「あの、みなさん普通にしてますけど、こんな風に見られるのってすごいですよね」
南さんが感心している。ちなみにこの映像を撮影することもできる。ただし、専用の魔道具である必要がある。
その時、ひよりが乗せられたバンは名古屋港近くの倉庫に入っていく。
「お、止まったね。ここが拠点かな?」
笹木はそう反応しながら、コーヒーのお代わりを注いでいる。
「あら? 車を乗り換えましたね。念には念をいれてということでしょうか」
マナが言うようにひよりが入れられた袋と共に大勢の男が車を乗り換える。乗り換える際の会話もちゃんと聞こえてくる。
『ちゃんとボーナスでるんだろうな』
『あたりまえだ。ガームド局長肝入りの女だぞ、かなりやばい橋を渡ってるんだからな。船まで20分だ。目立たずに急げ』
また移動が始まる。ひよりは気絶した振りをしている。男たちに思い込ませている内容としては、薬品による昏倒状態だ。しかし、実際はしっかり目が覚めているため、意識を失っている振りをして会話なども聞いている。
20分という時間が空いた訳なので、別の人物たちを追跡することにした。今回の襲撃前に会いに来た獣娘のところだ。
獣娘はさすがに着衣で男性と2人で車に乗っている。
『俺たち最近空回りだな』
男がぽつりとつぶやく。
『あーしのせいじゃない。ファーストと会えなくなってから急に雑な組織になったからだ』
獣娘が心底残念といった様子で返す。ただし、彼らは日本語でコミュニケーションをとっているわけではない。フラムの力で同時翻訳がなされているのだ。便利なものだ。
『結局隼人ひよりは誘拐されたね。しかし、突入した奴らの半数は捕縛されたよ。レベルも100を越す者も多かったはずなのに、さすがエバーヴェイルだね』
男は素直に感心している。
『でも、幹部を誘拐されてちゃあ世話ないね。せっかく忠告してやったのにさ。ほんとに頑固さが裏目に出たね』
獣娘は呆れているというよりは、少し落ち込んでいるように見える。
『ライカ、君も素直じゃないな。その隼人ひよりが酷い目にあわないように、港に向かっているんじゃないか。どうせ隼人ひよりの説得も上から目線でやったんだろう?』
その指摘にむすっとするライカと呼ばれた獣娘。口を尖らせる。
『そんなことないし』
反論というほどではない弱い否定だった。
『でも、よくエバーヴェイルに好意的にいられるね。アルカトラズの人質が殺されないか監視してただけなのに、炎の魔女に退治されかけたよね』
『あれは、あーしが飛行型のモンスターになったのが悪かっただけだ。ヒプノと一緒に脱出するために仕方なかったとは言え、もう少し変身対象を選べば良かったよ。あの時の炎の魔女は本当に怖かったけど、おかげでサンフランシスコに犠牲者が少なくて済んだんだ。感謝こそすれ、憎くはないさ』
男は笑う。
『僕も海に飛び込んでサンフランシスコから30キロも遠泳させられたけど、同じく炎の魔女には感謝してるよ。ますます組織の中で微妙な立ち位置になるね、僕たち。そろそろ、粛清されるんじゃないかな。それにしても、素直なライカは可愛いな』
『ばっか! 急に色気づくんじゃないよ』
『はいはい。着いたね。船には乗る気かい?』
『当たり前だろ』
ライカとヒプノという2人組は車を置いて、ひよりを連れ込む先である船に向かって歩いて行った。
そこまでの状況を身ながら、ひよりが2人の写真を記録する。ギルドへ送って照会を依頼している。
「フレイヤが倒した巨大なワイバーンはライカと呼ばれたあの娘だったんだね。僕さ、簡単にゴールデンゲートブリッジで消滅したから怪しいと思ってたんだよね」
ひよりの言葉を受けて南さんが口を開く。
「変身をワイバーンから鳥さんにでも切り替えたんでしょうか」
鳥さんっていう南さん可愛い。
「確かに橋からたくさんの海鳥が飛び立ったのを映像で見ました。その中に紛れ込んだんでしょうか」
マナの推理は正しいように思う。そして、その後、海に飛び込んで逃げたのが、もう一人の男、ヒプノなんだろう。
「さぁ、ひよりが船に乗せられるわ。アビスヴォーカからの連絡が待ち遠しいわね」
俺の言葉に皆が少し緊張を見せたのだった。
改めまして、あけましておめでとうございます。
昨年9月から書き始めた本作品ですが、多くの方から感想や評価をいただけて続けられております。
本当に感謝です。
この物語も大詰めになってきてまいりましたので、お付き合いいただければと思います。
では、本年もよろしくお願いいたします。




