第11話 フラムと自分会議
フラムとのお話です。
俺は俺1号。タイのダンジョンの攻略が行われた翌日なのだが、今フラムが目の前に居て朝ごはんを食べている。ドッペルゲンガーのレベルがようやく上がり、ドッペルゲンガーLv. 6になったのだ。つまり、今、俺7号が誕生し、フラムを割り当てたのだ。そして、俺は早々に眠ってしまった。
◇笹木小次郎
レベル1
HP:1720/1720
MP:2910/2910
称号:ダンジョンスレイヤー
ユニークスキル: アバター▼
アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)
アバタースロット2(金城メル)
アバタースロット3(ハヤト)
アバタースロット4(ジェシー・ラバック)
アバタースロット5(アリス・ラバック)
アバタースロット6(遠山影子)
アバタースロット7(フラム)
スキル:ストーンスキン
レビテート
ドッペルゲンガー Lv.6
エイジファントム
回復強化
防御強化
体術
変装
隠密
危険察知
インビジブル
拳闘
俺7号はフラムとして夜中の間何かをしていたようだが、元気にパンをかじっている。
「笹木。これおいしいわ」
フラムは俺のことを笹木と呼ぶ。敬意とか好意みたいなものは無い。
「あぁ、最近、メルがハマって買ってくるパン屋の塩バターロールだな。コーヒーはひよりの趣味」
コーヒーが好きなひよりは今眠ってるようだ。マナも夜更かししたらしく、珍しく眠っている。そういうわけで、俺はフラムと2人で朝食を食べるという状況だ。
「そういえば、月のダンジョンは見たんだっけ?」
「見たわ。月だからなのか、うさぎみたいな2足歩行のモンスター?がいる草原が見えたわ。空気はありそうだった」
「日本のおとぎ話にひっぱられてるのかな。確認は必要だが、後回しかな。悩ましいな。ところで、アビスヴォーカの詳細は知っているか?」
「いいえ、知らないわ」
俺7号はペルソナを起動していそうなので、続けて質問をしてみる。
「俺のスキルをムー教授が作ったという話は分かったんだが、深淵派はアバタースキルについて知ってるのか?」
「多分、知らないと思うわ。アバターはムー教授がシステム内で秘匿していたから。逆に考えると、深淵派のスキルメーカーもアビスヴォーカに選択的に強いスキルを与えていても秘匿されていると分からないわね」
「ダンジョンのシステムってゲームみたいな感じだけど、管理者が複数いるのってなんか変だな」
「元々は調和派が作ったシステムだったんだけど、管理権限の要求を各学派が出し始めて、共同管理になったそうよ」
オープンソース系のゲームサーバみたいな概念なんだろうか。いやいや、地球はゲームじゃないし、まったく…。
「なんだか不服そうな顔をしているわね」
「当り前だろう? ダンジョンのおかげでいっぱい亡くなった人もいるんだからな。勝手なもんだ」
「そうね。それは否定しないわ」
いろいろとフラムにつっかかっても仕方がない。俺の小説のキャラだし、なんなら俺なのだから。
「調和派は知的生命体の人類にステータスを提供したのも、ダンジョンのスタンピードから身を守ることを考えていたみたいよ。レベルを上げて倒せるようになってほしいって思ったんでしょうね。でも、思った以上に被害が出たことはムー教授も心を痛めていたわ」
なるほど。魔力を採掘する土地の生物に配慮はしたという事か。
「そうだな。分かったことは、アバタースキルはバレていないってことだ。ただ、エバーヴェイルの詳細は知られていないものの、アビスヴォーカの目の上のたんこぶであることも違いない」
「そうだと思うわ。アビスヴォーカはスタンピードを多発させたいでしょうからね。それに対して簡単に制圧できるエバーヴェイルは邪魔なはずよ。もちろん、他の上級クランもいるけど、エバーヴェイルほど目立っているところは無いわね」
フラムはコーヒーが苦かったようで、ミルクを継ぎ足して飲んでいる。
「ねぇ、ここも危ないんじゃない? 相手は正体も居場所も不明な集団でしょ? でも、こちらは本拠地も顔もばれている。ばれていない人もいるけど、危険なことには変わりないわ」
それについては、昨日寝る直前に考えていた。
「あと半年の間、警戒レベルを上げる必要があるな。ちょっとしたアイデアはあるから、南さんに相談かな」
「どんなアイデア?」
「ここを引き上げて、新たな社屋に移ろうかと思う」
それにフラムが首をかしげる。
「ここの方が安全じゃない? 警備もしっかりしているし」
「もちろん、侵入者とかには強いとおもうけど、ビルごと攻撃されたら弱いんだよね。高層ビルだし。なので、ここを引き払って、新社屋に引っ越すってことでどうかな」
フラムはまだピンと来ていないようだ。新社屋も同じように攻撃されれば同じことだからな。
「んー、いろいろ質問はあるけど、任せるわ。私は何をすればいい?」
「フラムの顔はばれていないし、影子と一緒になってアビスヴォーカ対策をしないか?」
フラムは微笑む。
「いいわね。そういうの好き」
フラムの設定には地球に対する諜報活動をしている人物という側面がある。そのため、目に見えて嬉しそうだ。血が騒ぐのだろう。
「笹木。さっきのアイデアだと、マナとか笹木以外の人たちをちゃんと守れる?」
「あぁ、その点は大丈夫。ちょっと不便はかけることになるけどね。その間にアビスヴォーカを炙りだしてギルドに引き渡すとか、倒すとかしちゃおう」
フラムが微笑む。悪い笑みだ。
「笹木って腑抜けてると思ってたけど、割とクールじゃない。嫌いじゃないわ。あ、フレイヤに悪いから、やっぱり嫌いってことにしておこうかしら」
「いや、無関心くらいでいいよ。美人に嫌いって言われるのは来るものがある」
フラムの言葉に心乱されたが何とか耐えた。フレイヤとはまた別なベクトルの美人だから困る。
「よーし、じゃあ、計画の内容について南さんに相談してくるかな」
そして、腰を上げたところで、南さんからメッセージが届く。
「南さんがくるようだ。あと、ガームドさんと、天白支部長もだって。フラムに挨拶がしたいらしい」
俺も立ち会うことにして、お替わりのコーヒーを入れることにする。
「わかったわ。ところでアリスはどこにいったのかしら? 帰ってきたとおもったんだけど」
「あぁ、昨日のうちにタイに戻ったらしいよ。タイでフレイヤとメルと一緒に泳ぐんだって。そういえば、昨日見た発信機の場所はギルドから捜索が入ったらしいけど、リンク・ビジョンで見た内容以外の手掛かりはなかったみたい。目撃者とかも探しているらしいけど、さっぱりだって」
フラムが目を閉じる。
「本当ね。ギルドの人たちが調べてるわ」
リンク・ビジョンを使っているようだ。
「ところで、リンク・ビジョンなんだけど、遠くを見ること以外は何かできるのか?」
「探し物とかはできるかしら。手元に同じものがあれば、それを探すことができるわ。時間はかかるけど…」
なかなか便利なスキルだな。
「イヤリングの片方を探すのは得意よ」
「確かに。他にも何か使えそうな気がするなぁ」
そうこうするうちにガームドさんが天白さんと南さんを連れてやってきた。
「フラムさん、はじめまして。魔装開発局の局長ガームドです。お見知りおきを。能力についてのお話は聞かせていただきました。本当に稀有な能力です。ぜひ今後もお力を貸していただきたい。よろしくお願いします!」
朝からテンションが高い握手をした後に、衝撃的なことを発言した。
「朝からいきなりですが、先ほどヨーロッパで5か所同時にスタンピードが発生しました。そして、アビスヴォーカが声明を出しました。『あがいてみろ』と…」
さて、大変なことになりましたね。




