第21話 ジェシーと強敵
海底ダンジョン編です!
俺はフレイヤ担当の2号。今は、アリスの姿で海底ダンジョンに乗り込んでいた。横ではジェシー姿の俺5号が安全地帯を作っている。海底ダンジョンだが、完全に水没というわけではなく、天井があり洞窟湖のようなエリアとなっている。入口にはかろうじて陸地があるため、そこに湖上の城みたいなものが建つ。
洞窟湖は鬼火のようなものがポツポツと浮いていて照明になっている。しかし、蝋燭の明かり程度であり、奥までは見通せない。しかし、アリスのラビリンス・ドリフトを使うことで構造は把握できる。把握した構造が不思議だ。
「このダンジョン変だよね。階層がないよね」
俺がそう言うともう1人のアリスも頷く。細長いトンネルのようなものが続き、その後に、ドームのような広い空間があるのだ。真ん中には小島がある。
「今見えている所はほんの入り口で、更に奥に行くともっと広い空間があるよ」
「さて、安全地帯は作っておいたし、空気もあるし、気圧は地上と変わらない感じだな」
ジェシーが作戦を立て始める。スタンピードを起こしているダンジョンだから、モンスターの排除が優先だ。そのため、入口から奥へと順番にモンスターを狩りつつ進む方針となった。
「敵は無数…小さいのがいっぱいいて、奥にバカでかいのがいるな。ボスだろうか。順当に倒す必要があるが、洞窟エリアということで広い空間に出るまではフレイヤの力が思う存分使えないな。俺2号は影子になるのはどうだ? 雷の魔法みたいなのを使えただろう」
確かに巨大なサメたちに攻撃を加えていたのを知っている。それを聞いて、俺は影子になる。
「おらの遠山流忍術が必要ですね」
「ああ、後は足場だな。俺が何とかしよう」
そういうとジェシーは何か建物を作り始めた。いや、建物だと思ったものは船だった。小型のフェリーのようで自動車が何台も積めそうな甲板がある。
「パパ、船なんてつくれるのね」
アリスが口笛を吹く。
「ああ、少し試してみたらできたんだ。ニューヨークのダンジョンの1つが湖エリアが多くてね」
「これ、動くんですか?」
俺の質問にジェシーがニヤリとする。
「ああ、ちゃんと動く。さぁ、乗って移動といこう。ただ、敵を殲滅することも考えて、安全地帯の機能は付けずに移動するぞ。お客さんを歓迎しないといけないからな。さぁ、戦闘だ」
ジェシーがそう言った矢先、何かが船の上に乗り込んできた。びちゃっと水の滴る音とともに複数のモンスターが船の上に立つ。
「半魚人か?」
それは魚のような頭にうろこで覆われた人のような四肢をもつモンスターだった。手には槍のようなものを持っている。そんなものが10体以上、さらに増えていく。
「ぽんぽこ分裂術」
俺はさっそく分身する。数は多いが、こちらも分身を10人以上に増やして対応する。
「まるで昔の海賊映画みたいだな」
ジェシーが半魚人の頭をへし折る。
「魚のにおいがするわね」
アリスは半魚人の足を払い倒れたところを、更に踏みつける。ぐしゃりとつぶれる半魚人。
「遠山流忍術 落穂」
影子たちは、半魚人たちの槍をかいくぐり、その首を刎ねていく。
「あぁ、刀が臭い…」
しかし、そんなことを言っていても仕方がないと、次々くる半魚人たちを対処する。そのうち、ジェシーから声がかかる。
「ちょっとデカいのがくるぞ。ちょっと試したいことがあるから、対処は任せてくれ」
その言葉通り、海中から半魚人の親玉のようなモンスターが飛び出してくる。どちらかというと人魚だろうか。足はなく、魚のひれだ。巨大な三又に分かれた槍、三叉槍を持っている。半魚人はジェシーと同程度の大きさだが、こいつはその4倍はある。乗ってきた船が傾くほどだ。
「フレイヤだけじゃないぞ。技を改良しているのはな」
そういうと、何やらジェシーの前に巨大な拳が見える。
「テリトリーを活用すれば、こんな技もできるんだぞっと」
言葉通りに考えると、いつもバリアのようなドーム型の障壁を拳に変えているのだろう。ジェシーはボクシングのストレートをその巨大な拳で再現すると、その巨大な半魚人にぶち当てる。それを受けた三叉槍が折れ、半魚人の上半身は折れてはいけなさそうな方向に折れる。そして、即座に消滅してしまう。
「ちょっと強すぎたか」
「「ちょっとじゃないですよ!」」
散らばって半魚人の対応をしていた分身たちが口をそろえてつっこむ。
「パパ、それが親玉だったみたいね。半魚人たちが逃げてくわ」
アリスが死にかけの半魚人を湖に蹴りこむ。こうして、半魚人たちの侵攻は収まったのだった。
その後、ゆっくりと船は進んでいく。すると、昔の帆船、客船、軍艦、そして、飛行機などが墓標のように佇んでいる地帯に差し掛かる。浮かんでいるものもあれば、座礁している様子のものもあり、一様に言えるのは幽霊船という言葉が似合うところだ。
「これぞバミューダトライアングルといった様相ね」
アリスの言葉どおり、朽ちた帆船はいつの時代の物だろうか。もちろん、ダンジョンだから生成されたオブジェクトみたいなものなんだろうが、雰囲気がある。
「おっと、今度のお客さんは骸骨たちのようだ」
ジェシーの言葉どおり、その船からは骸骨の船員や軍人たちが現れる。
「弓とか銃を持っているな」
ジェシーが言うが早いか、そいつらは弓と銃を構える。
「そうはさせないですよっと」
影子たちが動く。手裏剣を投げつけると、多くの骸骨が倒れていく。
「おれも」
ジェシーが先ほどの技を披露する。骸骨ではなく、それらが乗っている船を殴って沈没させる。
「遠いのは厳しいな」
ジェシーの技は射程が短いようだ。そうは言っても、30メートル先を殴れるというのは短いのだろうか。
「なんか、軍人さんの骸骨がやばそうなもの持ってるよ」
アリスが指さす方には、ロケットランチャーっぽいものを構える軍服を着た骸骨がいる。笑っているようにカタカタ言っている。
「まかせて」
アリスがその場で足蹴にすると、その軍服骸骨が弾き飛ばされ、暴発したロケットランチャーが大きな爆発を起こす。
「今のはなんだ?」
ジェシーの質問にアリスが少し悩む。
「足蹴りだけ飛ばす技? さっき試してみたらできたのよ」
アリスも新技を考えていたらしい。転移して蹴るのがアリスの真骨頂だと思ったが、遠隔での攻撃もできるということらしい。
「どうやってるんですか?」
俺が訊ねると、今度はあっさりと答えてくれる。
「足が飛んでいるわけじゃないけど、靴の先だけがあっち側に出てくるの。こうやってね」
そういうと、ライフルを構えていた骸骨たちの頭がサッカーボールのように高く飛ばされ、水面に落ちていく。
「いいなぁ。おらの技は地味かも」
そう言いながら、船に這い上がろうとする骸骨たちの首を狩っていく。その後、首がなくなっても元気な骸骨なんかもいたが、砕くようにしたら問題なくなった。
「そんなことないと思うなぁ」
そんな、アリスの声が聞こえる。
さらに進むと、何やら声が聞こえてくる。いや、歌と言った方がいいだろう。何かが歌っているようだ。
「綺麗な音色ですけど、なんの歌?」
ジェシーもアリスも分からないと首を振るが、皆、顔が険しくなる。
「危険察知が動いてますね」
スキルがこれが攻撃だと伝えてきているのだろう。嫌な予感がする。歌で攻撃というと催眠や魅了なんだろう。
「これで大丈夫なの」
俺はすかさずメルになり、ミレイズ・ヴェールを全員にかける。継続回復に状態異常回復もついた優れものだ。
「なんか、頭がすっきりしたな」
ジェシーが礼を言ってくる。
「あ、あそこ」
小島に人魚が数匹?数人?いる。美女の上半身が惜しげもなく晒されており、こちらに向けて思わし気な視線を送りつつ歌を歌っている。
「娘の前だ。コメントは控えておこう」
ジェシーは、その人魚を見据えている。
「パパ、鼻の下が伸びてるわよ。まぁ、美人だし、おっぱいも大きいけど」
すると人魚たちは、歌に効果がないと気づいたのか、水の中に飛び込んでしまう。
「あれ? 襲い掛かってこないの?」
「いや、こっちにくるぞ。さっきの半魚人や骸骨たちよりも動きがいい」
近くに波が立ったと思うと、水面から飛び出てきた人魚たち。陸上で不利かと思いきや、思った以上に長い下半身は蛇のように滑らかに動く。そして、その躍動的な侵攻に応じて、上半身もブルンブルンと躍動する。
「パパ、真剣に戦ってね」
「わかってる。アリス、手ごわいぞ。この敵は」
ジェシーは、鋭い爪をもって襲い掛かってくる人魚に対し、受け流しながらじっくりと戦っている。打撃系をつかわずに関節技で対処している。
俺にも人魚が襲い掛かってくる。メルの攻撃に関しては初体験なのでペルソナに任せてみる。すると、なんだか目の前で揺れている巨乳が妬ましく思える。これは、メルの感情だろうか。なんだか、いらつくので、幸子さんに教えてもらった連撃を加える。苦戦しているジェシーの前の人魚も蹴散らす。
「裸でうろうろしないの! ていやぁああああああああああ!」
俺の気合の連撃で人魚の半分が消滅していった。それを見たアリスが拍手をする。
「強くなったわね。立派に前衛よ。私も負けられないわ」
アリスも負けじと残りの人魚を蹴散らす。こちらは文字通り、足で対処していた。
そして、すこし残念そうな
「やはり、女性の見た目だと本気は出せないな。あぁ、ある意味強敵だった」
ジェシーの苦しい言い訳に、アリスが肩をすくめる。
「あ、広い空間に出たの」
人魚たちの襲撃が終わり、俺たちは海底ダンジョン中央の大きな空間へと足を踏み入れたのだった。
アバターたちの成長が少しずつみられる回となりました。
いよいよ中央部分に踏み入れました。
何がでてくるか、乞うご期待!




