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ラ・ラガス~創造魔法で異世界を生き抜く~  作者: タツノオトシゴ
無謀で勇敢な者に一欠片の自由を
140/180

見落としてた物

 商業国家ファークトで最も人の交流が多いと言われている場所、そしてこれから始まる賢者の石の争奪戦に駆けつけた多くの旅人たちが早朝に行われた宣誓式を聞いてあと二時間後に始まる争奪戦に期待を寄せているからなのか通り過ぎる人が品定めをするような目でこちらに視線を動かしているのが大抵だった。


 いつもだったら何も気にせずに歩けるのだがこの中に賞金狩りの連中が紛れていたら…とかそもそも昨日『アルチャー』二人と参加はしないがただ単に話を聞いていたガドマの四人で作戦会議という名のルール確認でそのまま夜明けを迎えてこの様だ。本当に眠いから勘弁してほしいのだが…体は何故かこういう時に限って平常に動くのが不思議だ、どっかで休憩できる場所を見つけたら速攻で仮眠を取らねば…


「それにしても…思ったよりも大所帯だな。国が主催ということもあってかなりの人間が動いているんだろうな」


「国の名前が商業とか付くくらいだからそれくらいは分かるだろ、というか昨日どこ行ってたんだルウェーお前以外全員居場所が分かっていたんだが」


「ウェールの奴とちょっとな、俺も極力体力を使いたくないからその補い方を学びたかっただけだ。ジェバルは力加減が上手くないからな妥当な筈だ」


 身体の事を心配してやったらこんな言い方をしてくる奴だ、ここで変光星をぶつけてやりたいがこんな人混みの中で暴れると国から追い出される可能性があるからやめておこう。というか海底から戻って来た時よりも傷が塞がったとは思っていたがそんなに『海の王』の回復魔法に抵抗を示す程【血の権力者】はそんなに過剰な攻撃をしていたか?自分もそうだがその攻撃を受けたメンツは傷跡など残さずに完治したというのに何が邪魔しているんだろうか。


 本人も怪我は現在進行で治っているとは言っているから気にはしていないがこの状態が続くようだったら回復魔法の専門家とも言える聖職者のいる神聖国家でも赴くとかしかないが…それまでに何かしらの兆しが見られればいいが今はやる事をしなくてはな


「ジェバルさん!こっち来てください!!」


 元気よく前に進み少し開けた広場で両手で居場所を伝えるシグマリに呼ばれ足を動かとそこにはシグマリ位の小さな女の子が広場の真ん中で通りかかった人に無償でパンらしきものを配っていた。ただそれだけだというのに自然と目線が引き寄せられるような何かがあって…シグマリが手を振る方とは違うがそのまま小さな女の子の元へ歩いていた。


「お兄さんも参加者の一人なの?そんな人にパンを配っているんだ!お兄さんもいる?」


 差し出された小さなパンを手渡しされて【宝物庫】からお金を渡したのだがその時には小さな女の子に何も感じられなかったのだが、ただの疲れだろうか。パンのお礼だけ伝えて近づいてきたシグマリの元に向かおうと振り返ると試みる。


「お兄さんに渡したのはただのパンじゃない、今回の醜い争いの火種の一つ、お兄さんはどう扱う?」


「え?」


「ジェバルさんどうしたんですか?」


 背後から聞こえたさっきパンを渡してくれた小さな少女が言ったとは思えない程低い声が聞こえてビックリして振り返ったのだがもうそこにその少女はおらず人混みの中に紛れたのか消えておりシグマリが何があったのか聞いてきたのでさっきの事を伝えたのだが首を傾げるだけで後からやって来たルウェーに少女の事を聞くとちゃんと寝ていないから変な幻覚でも見たんだろ、と言われてしまった。


 しかし、手元にはその少女から手渡された一つのパンがあるのだが…見た目は一見して普通なのだが中身に何か仕掛けでもあるのか?気になって半分に千切ると中から手で覆うことができる位の藍色の小石が出てきた。


「そんな石が入っているパンをジェバルが言う少女から貰ったのか?【幻想】で他の物に化けている可能性もないわけではないぞ?」


 【幻想】とかいうどれだけ警戒したとしても見破ることが難しいとも言われている魔法の一角を言われてしまえばこの藍色の小石ももしかしたら超煌弾に似たような爆発物とかだったら流石に不味いけどいつの間にか【宝物庫】に帰っていたテトが危険視するような言葉を掛けない位だからその心配は要らないだろうな。頭の中で完結した考えで失くすと嫌な予感がしたので【宝物庫】の中にそっと入れておいとく。


 それよりもこんなことで足を止めるわけにはいかないのだ、待ち合わせ場に遅れることにもなるだろうがそれよりもこのまま寝てしまいそうなのが一番自分が危惧しなければならないことなのだ。二人にはそんな魔法とかは感知しないから大丈夫だと言っておいて欠伸をしながら目的地に向かって歩き出す。後ろでブツブツと何か言われている感じがしたがそれどころじゃなかったから何言っているのか聞き取れなかった。


「それで…実際に争奪戦に参加するのはもうあれで固定なんだよな?」


「オルフィットが確認取りに朝方走り回ってたってガドマが教えてくれたから多分大丈夫、駄目だとしてもそういう細かいことはウェールがやってくれる所があるから…」


「本当に大丈夫なんだろうな?」


 ウェールは本当に裏で色々とやってくれるいい奴だよ、戦闘の時だけは本当に人が変わったようにスイッチが入って周りが見えなくなる位が不安な部分だけど根はいいから信頼しているからそういう事を任せられるんですよ、ルウェー君。今自分がどんな顔をしているのか分からないがルウェーがこっちを見て嫌な顔をしたから言わずとも言いたいことは伝わったようだ。


「あれ?もしかして何時ぞやのルウェー君?」


 歩き続けて数分した頃、小洒落たお店を通りかかった時に掛けられた声はルウェーに向かて掛けられた声なのだが全く関係のない自分もその中に含まれているような不思議な感覚だった。ルウェーってそんなに顔広かったか?元は賞金狩りの人間だったとしてもそんな素性を知っている人だとしたら…一気に目が覚め横で冷や汗を掻いているルウェーを流し見て少し離れていたシグマリを側に寄せて声を掛けてきた方に視線を向ける。


「おーい、ルウェー?久し振りだねーあの時誘った時以来かな?元気にしてた?」


「………何故お前がここにいる」


「欲しいものには貪欲でいるのがモットーの俺にそんな無頓着な人間に見えたりする?そういう風に装ってた時もあったもかもしれないけどそれは性に合わないからね、自分っていう自分を曝け出せる今が一番なんだけど……あれ、もしかして警戒されてる?」


 睨みを利かせるルウェーを横にして自分も店の中で声を掛けた奴と共にお茶を楽しんでいる仲間と思われる存在を流し見つつシグマリを後ろに下がらせる。ルウェーの古い知り合いなのだろうがここまで身の毛を振るい上げるようなこの感覚はまるで……


「そんな顔をしなくても今は何もしないよ、したところで何も出来ずに後ろにさがることになっちゃうからね、あー立ち話も何だし空いている席にでも座ってお話しようよ。どこで何していたか聞きたいし」


「冷静に考えて殺しに快感を抱いている殺人鬼と同じ席で仲睦ましくお茶が飲めるなんてそんな緊張感のない人間ではないと思うがな」


「覚えてくれていて嬉しいよルウェー、一応後ろにいるお二方にも自己紹介でもしとこうかな。えー【神出鬼没】リーヒット・フラディ以後お見知りおきを…」


 礼儀良く席を立って作法に則って動きは記憶の片隅に残っている本来の貴族の作法と何ら変わらないものなのだが、名前以前に二つ名を聞いた途端それまでの冷や汗の原因が分かった。こいつ、自分らが海底に消えた辺りからとんでもない勢いで勢力を増やし続けてヤクザみたいな立ち位置にいる【黒蜥蜴】とかいう団体だったはず…


 別に他人に興味がないというわけではないが一年も時が経って経済も多少とは言えないがかなり動いている事は馬鹿な自分でも分かっている。少しの間滞在するのは確定しているこの商業国家の事くらい前情報が無くそこら辺歩き回るなんてことはもっての外だからな、『アルチャー』が快く情報を提供してくれたから今がある訳だがそれは置いておき目の前で微笑む銀髪の青年がこちらを窺っていた。


「猫人族を連れているパッとしない少年がいるのは耳に入れていたけどまさかジェバル・ユーストご本人とは…面白い人を連れているじゃないかルウェー」


「何しにここにいる、前と同じような惨劇を繰り返す位だったら全力で抵抗するつもりだが」


「ルウェーだって今回の賢者の石に興味津々なのと同じで俺も俺等で欲しい物に一直線に走りたくてね、別にルウェー君が想像している事にはならないよ。そういう風にはならないようになっているし」


「フラ、そろそろ時間」


「あらら、もうちょっとゆっくりお話しできると思ったんだけど時間がそう許してくれなかった。それじゃあ今度会う時は仮初の命を賭けて最高の殺し合いをしよう。じゃあねー」


 ルウェーの言葉にのらりくらりと話をしているとそれまで一言も喋らなかった少女が短くフラディに声を掛けるとルウェーの横を通ってそのまま人混みの中に紛れ込んでしまった。それにしても、あの【神出鬼没】が賢者の石を求めて姿を現すなんて普通有り得るのだろうか…国の中心に向かえば向かうほど自分の首を絞めているのと何も変わらないがあれだけ強く出れる所も考えると名に合った存在ともいえるだろう


「全然どんな人か分からなかったです…」


「シグマリはそれくらいで捉えておく方がいい、あんなネジの外れた奴の言葉は信用しなくていい。あいつに構うと碌な事が無いからな」


「本当に嫌な目覚めだ、変な事で目が冴えるのは御免だ。早めに合流することにしようか」


 両者とも早く合流するのに賛成したところで止まっていた足を動かし集合場所に足早と動かす。争奪戦ではあんな奴とは戦いたくはないな…ルウェーも関わると碌な事に遭わないと言っていたがそもそもどんな関係なのかも気になるな







「フラ、喜んでる?」


「そりゃあ嬉しいよ、これから行われる仮初の命で始まる醜い賢者の石を巡った争奪戦に骨のある人とかがいてくれるだけで今後どう影響を与えるかにも繋がってくるんだから、さ」


「僕らも頑張らないとねー」


 裏路地に入っていくつかの分かれ道を迷いなく曲がって歩き続けると少しお洒落なお店に着く。扉を開けると怖いお兄さんたちがこっちを睨むけど【威圧】を掛けたらすぐに目を逸らしちゃった、店の中を進み奥の部屋に入ると大量の食事を前にして静かに待っている皆の姿があった。


「結構待たせ過ぎじゃないのか?どこで道草食ってた」


「えー?時間潰してたら昔【黒蜥蜴】に誘った子に会ってさ、少しお話してたら遅くなっちゃった」


「私はボスに特段時間に気をつけてくれるだけでいいから…」


「これからは気をつけるよ、プルウ」


「それじゃあ今回は俺の我儘に付き合ってくれてありがとう、皆の力が無かったらこんなこと考えてないからね。あと数時間で始まる争奪戦で完璧な勝利を祈ろうか、乾杯」


 グラスをゆっくりと前に出してこれからの勝利を願って杯を上げた。正直頭の中では必ず現れるだろう【錬金導師】に真似の使用ができない血魔法の使い手のルウェー、あと一匹狼の【色奪】もいるが相手にとっては不足はないこちらもこちらで全力でぶつかるのみだ。

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