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これからの事

町に戻った翌日、カノンはギルドに併設されている図書館に来ていた。


あの日持ち帰った日記はまだ開いていない。


カノンの収納の中に仕舞われている。


因みに、イリスたちとはギルドに依頼の完了報告をしてすぐに分かれた。


なので三人が今何をしているのかは分からないが、後で必ずお礼に行こう。


カノンが見ているのはこの国の地図だ。


日本地図ほど正確ではないし、町や川、道などが大雑把に書かれているだけだが、それでも十分な情報がある。


この図書館では、冒険者のランクがEランク以上なら無料で利用出来て、それ以外の人でも入場料を払えば入れる。


本の持ち出しこそできないが他の紙に書き写すことは問題ないらしい。


この世界には印刷技術が存在しないので、本は全て人の手で書き写されているらしくかなり高価だ。


ただし、白紙の紙やノートなどは多少割高ではあるが意外と安く、メモ帳程度は普通の冒険者でも持ち歩いているらしい。


だからカノンは日記を書いていたし、あまり裕福ではない村でもそれくらいを買う余裕はあったようだ。


なので本の値段の殆どは内容を書き写すための人件費のようだ。


なのでこの図書館の持ち出し禁止も、高価な本を盗まれたり紛失したりするのを防ぐための物だ。


カノンの他にも何人かの人はいるが、殆どが本の内容を書き写している。


「あ、あった。ハク、ここ見て」


ふと、カノンは目的のページを見つけたらしく、そこを指で指している。


『ん?これは……、迷宮?』


カノンが指した所には、雪の迷宮と書かれていた。


「ハクはダンジョンって知ってる?」


『いや、知らない……何となくは分かるが…』


ラノベとかゲームに出てくるダンジョンと同じ認識でいいのなら何となくは分かるが……。


「ダンジョンって、魔物がずっとわき続ける場所ってイメージらしいの」


カノンが説明してくれたことによると、ダンジョンは大きく分けて二つに分類される。



一つが洞窟型の迷宮と呼ばれる場所。


一部の例外もあるが、基本的には地下に向かって広がっている物らしい。


もう一つは、森や廃村などがそのままダンジョン化したもので、こちらは魔境と呼ばれるらしい。


ダンジョンの共通点として、周りの地域に比べて魔物の脅威度が跳ね上がり、魔物の種類も周りとは全く違うものになるらしい。


そのため、ダンジョンでしか手に入らない素材も多く存在し、ダンジョンが近くにある町では冒険者は日々ダンジョンに潜って魔物を討伐しているそうだ。


そしてダンジョンの特徴として、魔物が全滅したとしても勝手に生まれてくるというものがある。


魔物の生まれ方は基本的に二通りあり、一つは他の生き物と同じく有性、もしくは無性生殖で増えていくもの。


そして魔物特有の増え方として、魔力溜まりと呼ばれる魔力の濃い場所に魔石ができ、それを核にして生まれるというものだ。


因みに今まで俺たちが倒した魔物にも魔石は存在しているのだが、俺たちはあまり回収していなかったりする。


というのも、俺たちは収納で丸ごと回収してしまうし、この間のゴブリンのせん滅の際も、カノンは気を失っていたり、魔石ごと焼き払ったりしたため、回収する機会がなかったのだ。


昨日のファングウルフは、カノンが丸ごと収納に放り込んで、道中でイリスたちと共に解体したので魔石をはぎ取ったが、あまりいい値段にはならなかったりする。


話がそれたが、本来は魔物が生まれるのにはある程度の規則性があるはずなのだが、ダンジョンではそれが当てはならないのである。


カノンが知っているのはここまでらしい。


ここまでは、村に来た冒険者から教えてもらったことがあるようだ。


そして、カノンが指した雪の迷宮も、その冒険者から教えてもらったらしい。


「この迷宮って、全部の階層で雪が積もってるらしいんだよ。だから一回行ってみたいねって、話してたことがあったの」


カノンはそう言ってそばに置いてあった一冊の本を手に取り、それをめくっていく。


そしてあるページを指さした。


そこには雪の迷宮について書かれていた。


『ふむ……、つまりここは、入るのにランク制限がある……と…』


そこに書かれている事を要約すると、この迷宮に入るには冒険者ランクがD以上でないといけないらしい。


そして、ここで出てくる魔物は最低でも脅威度Dランク以上らしい。


大事なのは、迷宮の特徴として、階層が分かれており、迷宮の魔物は基本的に階を跨いで移動することはない。


それと同様に、迷宮の外にあふれ出ることも基本的にはないらしい。


勿論例外もあるが、今回はどうでもいいだろう。


迷宮の魔物は階層ごとに強さが分かれているのが一般的らしく、ここも例外ではないらしい。


なので浅い階層に限れば、今のカノンでも突破できるということだ。


とは言っても、ここに行くには冒険者ランクを上げないといけないので、しばらくはお預けだろう。


『なるほど、つまりとりあえずは冒険者ランクを上げることが目標だな』


「うん、そうなるよね」


なんかカノンが落ち込んでいる。


多分、ランクによる制限など考えてもいなかったらしい。


というか、まさかカノンだけで突破できると思っていたわけじゃないよな?


流石に封印者(シーラー)でも限界はあると思うぞ?


『まあ、とりあえずは迷宮に入れるように特訓しよう。そのついでにそこの情報も集めればいいだろう』


「うん、そうだね……。あ、そうだ!」


カノンはなにか思いついたように本を取りに向かう。






















「ここはどう?」


カノンが取ってきたのは、この国の名所が書かれている本だった。


というか、なんでそんな本があるんだ?


カノンが見ているページには、大きな滝の絵が描かれている。


ただし、その滝の上にはあり得ない光景が描かれている。


そして見出しには、竜の滝と書かれている。


『竜の滝?』


「うん、ここも冒険者の人から聞いたんだけど、竜だしハクも興味あるかなって」


そのページには、確かに二体の竜が描かれている。


滝の上で戦っているようにもみえる。


説明文によると、その昔、山を流れる川の上で二体の竜が戦い、その余波で川が抉られて滝になったらしい。


確かにこれには興味はある。


『確かに面白そうだが……危険はないのか?』


そのページには危険度の事は書かれていない。


もう少し情報を集めた方がいいかもしれない。


『ないとは思うが……いまだに竜が出てきたりしないよな?』


流石にドラゴン相手に戦って勝てるとは思えない。


最弱の竜の名は伊達ではないのだ。


「自慢になってないよ!?」


『あれ?心を読まれた?』


「声に出てたよ!」


カノンの突っ込みを受けつつ、俺は心に中で苦笑いをする。


まあ、自慢になっていないのは確かだが……。


「でも、ここってこの町から近いから、行って行けないこともないよ?」


そう言ってカノンが地図を指さす。


それを見ると、確かにこの町からある程度は近そうだ。


地図の縮尺が正確ではないだろうから、この町とアレーナ村の距離を見ての目算も含まれているが、多分徒歩で五日もあれば着くだろう。


竜装で飛んでいけば、魔力消費を考慮しても二日で着きそうだ。


『まあ行って行けないこともないのは確かだが……』


「でも、とりあえずはランク上げかな?Dランクなら、どっちも行けるしね」


『そうだな、とはいっても、昨日帰ってきたばっかりだから、今日は休んで明日から依頼をこなすか』


俺がそういうと、カノンは頷いて本を仕舞い、図書館を出た。




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