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2対2

『予想より早かったな……カノン以外は撤収しろ!』


俺はグラン達に念話を飛ばす。


「気を付けろよ!」


グランはそう言ってイリスとマリアを連れて走り出す。


「ここからは逃がさないわよ?」


そんな声と共に現れたのは、30代前半くらいに見える女性だった。


何となく誰なのかは分かるが、鑑定っと……


----------

種族・人間 名称・セシリア

職業・魔剣士・Dランク冒険者 年齢・35歳

HP・496 MP・1231

スキル

感覚系

身体強化Lv3・威圧Lv2

戦術系

剣術Lv4・魔法剣Lv1

魔法系

魔力操作Lv10・詠唱短縮Lv1・火属性Lv3・風属性Lv6・魔力感知Lv1

技能系

狂言Lv1


----------


やっぱりカノンの母親だった。



狂言のスキルには突っ込まないようにして、他のスキルを見る限りは魔法使いよりのスキル構成のようだ。


ただ、職業は魔剣士になっているし、剣術もそれなりのレベルであることから、典型的な魔法使いタイプだと侮ると痛い目を見るだろう。


そして、この魔法剣というスキルが気になる。


----------

魔法剣

剣に魔法効果を付与できる。使うたびに剣に負担がかかり、破損しやすくなる。

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なるほど、市販されている魔法剣の効果を疑似的に作り出すものか。


その代償として、使用した武器は段々と脆くなっていくようだが、安い武器を使い捨てにして、高価な魔法剣を使えるのなら、ありかもしれない。


カノンの両親のステータスは、言ってしまえばカノンの下位互換だ。


確かにHPなど、カノンが負けている部分もあるが、俺のフォローでどうにでも出来る部分だけだ。


この二人とやりあった所で、ステータスだけ見ればカノンには負ける要素はない。


最も、一番大事であろう経験値では大敗しているので、格上に挑む覚悟は必要だろうが……。


「ハク、三人をお願いね」


『それはいいが、俺がやるからカノンは立ってるだけでいいんだぞ?』


「ダメ。これは私の問題だから。でも、私一人じゃ無理かもだから、力を貸して」


カノンはそういうと、フードを取った。


「お?」


カノンの顔を見たフレッドは少し意外そうな顔をした。


「なんだ、生きてたのかよ。くたばればよかったのに」


「残念ですけど、あれくらいじゃ死にませんよ?」


カノンは実の両親相手に敬語を使っている。


「あら、カノンじゃないの、あんた一人でどうにかなるとでも思ってるの?」


二人そろって馬鹿にした顔をしてくるが、ある意味好都合だ。


「何とか出来ると思っているからここに居ます」


「ふん、面白い。セシリア!」


「えぇ、……ファイヤーボール!」


セシリアはカノンめがけてファイヤーボールを飛ばす。


目の前にグラン達がいるというのに態々こっちに飛ばすということは、カノンを先に狙っても問題ないと考えているのだろう。


まあ、確かにグランでもDランク、イリスとマリアはEランクだし、この二人にしてみれば大した相手ではないのだろう。


カノンに関しても、半月前の時点の能力は把握しているであろうことから、一番弱いカノンを先に狙ったということかもしれない。


しかし、今のカノンと俺がそれくらいでやられるわけがない。


『任せろ、アクアウォール』


俺が魔法を発動させると、カノンとファイヤーボールの間に水の膜が生成される。


「!?」


ボシュ…


目の前のフレッドが大きく口を開けて驚いている間にも、ファイヤーボールは水の膜に触れて消滅した。


『今のうちに撤退しろ』


念話でグラン達に呼びかけると、後ろの方で走っていく音が聞こえた。


セシリアの気配は動く気配のないことから、フレッドと同じく驚いていると思われる。


「?どうしましたか?」


カノンはわざとらしく首を傾げる。


「カノン……魔法が……」


「カノン、貴女魔力の封印が解けたの?」


二人が唖然としながらも声を掛けてくる。


「封印?そんなものありませんよ?ステータスを調べても、私は魔弱のままです」


カノンはそう言ってローブを脱ぎ捨てる。


その下に来ているのは、カノン専用の防具だ。


「そ、その恰好……一体何の……」


「今の魔法はハクのおかげです」


カノンはそう言って竜装を発動させる。


カノンの瞳孔が縦に開き、犬歯と爪が鋭く伸びる。


そして露出の多い肌は、所々に鱗が現れた。


竜装の本来の能力だ。


いつも出していた翼は、この変化を背中に集中させたものに過ぎない。


竜装の神髄は、竜の肉体を纏うことによる身体能力の向上だ。


因みにこの姿をイリスに見せた所、竜人に似ていると言われた。


なのでカノンと俺で名付けたのが……


「竜装・バージョンドラゴニュート」


因みに前から使っている翼を出すだけのは、バージョンフライと呼んでいる。


なんの捻りもないが、その方が分かりやすくていいだろう。


「な、な、な……」


フレッドは驚きのあまり声も出ないらしい。


「か、カノンちゃん、それは……」


セシリアもフレッドのところに戻ってきた。


フレッドほどではないが動揺しているらしく、声が震えている。


まあ無理もないか、ついこの間、自分たちが無能だと斬り捨てた娘がこんな能力を使っているのだから。


「今の私を、あなたたちが知っている私と同じだと思うと、大けがしますよ?」


カノンはそう言って不敵な笑みを浮かべた。


「カノン、言うようになったじゃないか。これは親として、お仕置きが必要だな」


フレッドはそういうと、背中に背負っていた大剣を抜いた。


ズボッ!


その瞬間、二人の周りの地面からスライムの触手が伸びた。


そして一瞬のうちに二人を拘束して、触手の先端は地面に突き刺さってその場につなぎとめる。


「な、なんだこりゃ!?」


「か、カノン!何をしたの!?」


「え?()()何もしていませんよ?」


突然のことに慌てる二人に対して、カノンは普通に言い返す。


確かにカノンは何もしていない。


むしろ、俺に対しての指示すらしていない。


これは俺が勝手にやったことだ。


そして触手は止まらない。


触手を枝分かれさせると、その先端に麻痺針を発動、それを二人に向けた。


「く、こんな…物!!」


しかし、麻痺針が二人を突き刺す瞬間、フレッドは触手を力任せに引きちぎってしまった。


そしてそのままセシリアを拘束していた触手も大剣で切り裂く。


「くそ!こんな時に!」


フレッドは地面に手あたり次第大剣突き刺していく。


カノンが動いた様子がないことから、まったく別の魔物の奇襲とでも思ったのかもしれない。


「そこには何もいませんよ?いるのはここです」


カノンがそう言って自分の胸を指す。


「か、カノン?どういうつもり?」


服に張り付いていたスライムを叩き落としたセシリアが笑顔でカノンに聞く。


まあ、その眼は全く笑っていないが。


「え?どうもこうも、私はあなた達と話をしに来ただけですよ?」



カノンはそう言って姿勢を正す。


「今まで育ててくれて、ありがとうございました」


カノンは二人に頭を下げた。


それはただのお礼ではない。


カノンにとっての、自分を捨てた両親への決別の印だ。


カノンは頭を上げると、にっこりとほほ笑んだ。


「というわけです。文句があるなら聞きますよ?」


聞くだけですが、という副音声が聞こえた気がするのは気のせいではないだろう。


二人を見ると、セシリアは目が座っているがまだ平常心を保っている。


しかしフレッドは、顔を真っ赤に染めて怒りで手が震えていた。


「お前が…誰のおかげで生きてられたと思ってんだ!!!」


怒鳴るフレッドにカノンは冷めた視線で返す。


「私が今生きていられるのはハクのおかげです。あなたには殺されかけた。それだけです」


カノンが淡々と言い返す。


「……そのハクって奴を連れてこい。ぶっ殺してやる!」


そう言われて素直に出ていく奴がいるなら、そいつはよほど自分の腕に自信があるか、もしくはただの馬鹿だけだ。


「それで出てくるのなら、その人はただの馬鹿だと思いますよ?」


「…………分かった。もういい。とりあえず死ねや!」


色々吹っ切れたのか、フレッドはいきなりカノンめがけて大剣を振り下ろしてきた。


ガキン


そんな音と共にカノンは魔法剣で大剣を受け止める。


体格差は充分にあるのに二人が拮抗しているのは、カノンの方が身体強化のレベルが高いからだろう。


それに加えて、竜装での身体能力の向上もあるのだ。


押し負けるわけがない。


「な!?」


自分の一撃を受け止められるとは思わなかったのか、フレッドは驚愕の表情でカノンを見る。


「フレッド!下がって!…フレイムアロー!」


セシリアの声を受け、フレッドはすぐさま飛びのく。


この辺りは流石Cランク相当の実力者といった所か。


その場に残されたカノンに対して、炎の矢が飛んでくる。


しかもその数は5本もあり、直撃コースを描いているのは2本だけだが、他の矢はカノンがどこに逃げても当たってしまうぜ絶妙な配置だ。


『任せろ』


「うん」


そんなやり取りの直後、カノンの周りにスライムで出来た壁が出現した。


そして炎の矢はスライムに直撃したが、すぐに鎮火してしまう。


「スライム?カノン、どういう手品なの?」


流石におかしいと思ったのかセシリアが警戒しながらも訪ねてくる。


「今のがハク。私の相棒ですよ?あなた達が相手にしているのは私一人ではなく、私達だということです!」


この戦い、2対1ではない。


そう二人は気づいたが、すでに手遅れだった。




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[一言] 教える必要ないよね馬鹿なの
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