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江末ふみは馴染めない②

「……侵略なんて言っていない。今回はあくまで調査。我は地球環境の調査のためにこの惑星(ほし)に来ている」


「そうか。調査だったか。すまんすまん」


 先生の言葉に無表情で反論する自称宇宙人と、さらっと平謝りをする地球人の女教師。なかなかシュールな光景だ。

 先程から江末の様子を見ていても不思議ちゃんを演じているようにも見えない。

 おそらく江末は「自分は特別な存在だと思い込んでいる系女子」だ。それが何らかの理由で自分は宇宙人だという方向へ向かってしまったんだろう。


 改めて江末を見ると、一切迷いのない目をしている。こうなってしまうとこちら側の常識は通用しない。

 清沢先生は一人目からこんな電波娘を連れてきてどういうつもりだろうか。最初の依頼者にしてはハードルが高すぎるだろ。


「宇宙人? どこが? ふみちゃんは普通のかわいい女の子じゃん」


 純粋な心を持つ部族出身の綾辻は不思議そうに江末に聞いた。


「……これは我が地球外生命体だということを知られないようにトランスフォームしているだけ。仮の姿」


「本当の姿は?」


「……それは教えられない」


「どうして?」


「…………地球外生命体にも地球外生命体の事情がある」


 地球外生命体は都合のいいことを言い出した。


「むーぅ……」


 唸りながら自称地球外生命体の顔をじっと見つめる綾辻。じっと見つめられている江末は、恥ずかしそうに視線を逸らす。


「…………」


「えい」


 何を思ったか綾辻は、身を乗り出して江洲絵ふみの柔らかそうな頬をつまんだ。


「ふあぅっ……!」


 江末は地球外生命体のくせに可愛らしく反応した。つままれた右頬を手で押さえ、涙目で綾辻の方を睨んでいる。だが童顔のためか睨んだ顔すら可愛らしく、見ているだけでなんだかほっこりしてしまう。


「ねえハルくん。どこからどう見ても普通のかわいい女の子だよ?」


 僕もそう思うけど、本人が地球外生命体だと言い張っているからなあ。


「……まず本人にどうして自分が宇宙人だと思うのか聞いてみたらどうだ?」


「むぅー。それもそうだね」


 綾辻は「よーし」と言いながら再び江末の方に向き直り、


「ごめんねふみちゃん。痛かった?」


「……痛くなどない。我に痛覚など存在しない」


 嘘つけ。甲殻類かお前は。めっちゃ涙目だっただろ。


「そっか。ならよかった♪ それでさ、ふみちゃんはどうして自分が宇宙人だと思うの?」


「……我が地球外生命体であるという啓示を受けたから」


「けーじ?」


「神が何かを示すことよ」


 と会長。


「ふぇー! ふみちゃんは神様から宇宙人って言われたんだね。でもそれってどうやって?」


「……これ」


 江洲絵ふみはスマートフォンを取り出し、少し操作して液晶をこちらに向けた。


「宇宙人診断?」


 画面の下には㈱悪ふざけと書いてある。どうやらこの会社が作ったアプリらしい。


「……その通り。このアプリで我は自分が宇宙人だということを知った」


 おい。どこが啓示だ。めちゃめちゃ胡散臭いじゃないか。こんなアプリ一つで自分が宇宙人と信じこむなよ。

 どうやら江末は僕の予想以上にイタい子のようだ。


「……これをやれば自分が宇宙人かどうかがわかる」


「わーおもしろそーう!ねえねえハルくん、八千草先輩!わたしたちもやってみようよ」


 綾辻は目をキラキラと輝かせて僕と会長に迫った。


「……まあ別にいいけど」


 そんなわけで悩める生徒の相談に乗るために結成された心から部の三人は、自分が宇宙人かどうかを確かめることになった。


 ……初日からこんなんで大丈夫なのか? 

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