最強ヒロイン。
何も言わずフラッと部屋を出て行ってしまった綾瀬さん、
少し不審に思い立ち上がると後ろの扉がガラッと開いた。
「あ、綾瀬さんどこ行って__」
そう振り返り言った時綾瀬さんは何故か私を後ろから抱きしめた。
「ッ!?」
「はぁ~っ」
訳も分からず顔を赤くしながらパンクしている私に、
綾瀬さんがさらにキツク抱きしめ、
綾瀬さんの腕によって普通よりあると言われる胸が押し上げられ息がし難くなる。
「あっ、綾瀬さんっ、苦しいっ、」
「ちょっと待て。」
「なっ、なっ、」
耳元でそんなことをボソッと言われもういっぱいいっぱいになりキャパオーバーした。
「ッふんッ!!!!」
「はッ!?」
抱きしめる綾瀬さんの腕を掴み思わず背負い投げをする。
「ッうわぁぁああッ!!?」
ゴンッと豪快な最強ヒロイン誕生の音がした。
そんな時ガラッと襖の開く音がした。
「何々ッ!?何事ッ!?」
急いでやってきたのかワタワタとしたようすの久子さんは
床で伸びている綾瀬さんと真っ赤な顔で息が荒い私を見る。
「なっ、何っ!?」
*
朝飯を取りに厨房へ向かうといつもとは違う早いテンポの包丁を使っている音がした。
いつも俺の朝飯が置かれている場所にそれは無く、
作り忘れて急いでいるのかと思い、音のする方を覗いた。
「っ...。」
思わず驚いてしまった。
包丁を鳴らしていたのは久子さんや友遊佐さんや従業員ではなく、
「ん?...あっ、綾瀬さんっおはようございます。」
まさかまさかの凛火だった。
「はよ...、なんでお前が?」
短すぎる軽い挨拶をし、率直な質問をする。
「あぁ、なんか綾瀬さんと私の分の朝ご飯が足りなかったみたいで、
久子さんが凛ちゃん綾瀬さんの分もついでに作っちゃってと言われまして。」
「...久子さんらしいな。」
「ですね。」
ライヤ達とバーベキューをしたことがあったがやはり凛火の手際は最高に良い、
いつから作り始めたかわからないが既に和食らしい焼きジャケや卵焼きは出来上がっていた。
「もっらいっ。」
「え?あッ!!!!!!」
皿に乗せられていた卵焼きを一切れ摘み食いする。
「おっ、うまっ。」
予想外の美味さに真面目に驚いてしまった。
凛火の方を見ると頬を膨らませ、
ぷりっぷりっといった例えが正しいような怒り方をしていた。
「もおぉぉぉッ!!
数限りあるんですからッ 食べないでくださいよッ!」
卵焼きの皿を見ると確かに5個になっていた、
きっと3個ずつにする気だったのだろう。
「ちょっとッ聞いてるん_」
「じゃあお前が一つ食べればいいだろ。」
卵焼きを一切れ指で摘み、凛火の口に半ば強引に入れる。
「ムグゥッ!!??」
「なっ?」
*