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それから一週間が経ちました。
花瓶の花は少しずつ萎れていき、赤ずきんは溜息をつきました。
ある日のこと、赤ずきんはお母さんに頼まれてお使いに行くことになりました。
おばあさんのお見舞いです。
森の中にあるおばあさんの家に行くのは、少年との約束を破ることになってしまいますが、病気のおばあさんを放っておくわけにはいきません。
パンと果物、葡萄酒が入った籠を持って赤ずきんは久々に森へ向かいました。
赤ずきんが森の中を歩いていくと、いつか少年と行った花畑を通りがかりました。
其処はあの日と変わらず、四季の花が咲いています。
赤ずきんはしゃがみこみ、一輪の花を手折りました。
橙の花を籠に入れ、赤ずきんは立ち上がりました。
「さぁ、早く行かなくちゃ。おばあさんが待ってるんだもの」
コンコンコン。
たどり着いた森の中の家の戸を叩きます。
「こんにちは、おばあさん
赤ずきんよ。お見舞いに来たの」
「おやおや、こんな所まで来たのですか?お入りなさい、赤ずきん」
ドアを開けて部屋に入った赤ずきんは、あちこちに違和感を感じました。
「おばあさん?おばあさんの耳はずいぶんと 大きいのね」
「そうですとも、お前の言う事が、よく聞こえる様にね」
「それに目が大きくて、光っている。おばあさんの目って紅色だったかしら?」
「怖がる事はないのです。可愛いお前を、よく見る為なのだから 」
「それから何と言っても、その大きなお口。おばあさんのお口があんまり大きいので、びっくりしちゃったわ」
「そうですとも。大きくなくては、お前を食べられないからね!」
そう言った狼は瞳を紅く輝かせ、赤ずきんに牙を剥きました。
「馬鹿な娘ですね。わざわざ遠ざけてられてもやってくるなんて
…まぁ、こちらとしては好都合。逃げないでくださいね?赤ずきん
これでやっと、あの生意気な若を倒せるのですから」
「嫌よ!あなたの言うことなんて聞かないわ!」
「おやおや…威勢のいい事で。食べ甲斐がありそうです」
何処か遠くから、狼の遠吠えが響きました。
丁度その方向は―――赤ずきんの住む村があったような。
「久々の柔肉。皆喜んで食べるでしょうね?
さて、私もお腹が空きましたね…
餌として役立たないなら、食べてしまいましょう」
「嫌っ助けて!レオ!!」
「トワに触れるな!」
迫る牙に赤ずきんが自分のさいごを思った瞬間に、橙の声が響きました。




