第14話 クーデター
「一体どういうことなの?」
アムはアスカに尋ねた。
アスカは何が言いたいのかと聞き返した。
「ヤマト、まるで別人じゃない!」
「後でどうとでもするわよ……今は、あれでいいの」
アムは意図の読めないアスカを睨み続けた。
『さぁー!いよいよ全国大会決勝戦!登場するのは………前回の優勝者、世界ランカーでもある実力者、キリュウ選手ー!』
アナウンスと共にキリュウが現れ、会場が沸き上がる。
誰もが歓声をあげ、キリュウの活躍を期待する。
チームドラコのメンバー達も大声でキリュウを応援する。
マルゴイとチェールも真剣な顔つきで観戦する。
『この大声援。さすがはキリュウ選手!彼が統率するチームドラコはその完成された強さから、王国のあだ名で呼ばれることもあります!』
「お兄ちゃん……負けないで」
アムは両手を合わせてキリュウの勝利を祈る。
アスカはそれを見るとキリュウとは反対側の入り口に目を向ける。
「勝者の入場ね」
アスカは周りに聞こえないよう呟いた。
『そしてそのキリュウ選手に挑むのが、驚異の大躍進!翼ヤマト!』
ヤマトが入り口から現れ、Gキューブの前に立った。
キリュウと向き合い、視線を交わす。
「久しぶりだな、ヤマト」
「そうですね」
ヤマトは少しだけ微笑みながら答える。
キリュウは更に言葉を続ける。
「………マルゴイとチェールが世話になったようだな」
「いえ、大したことありませんでしたから」
あの二人の話題になった瞬間、ヤマトの表情が変わった。
不敵に笑い、見下すような目で二人のことを思い出している。
「……変わったな」
「ええ、僕は強くなったでしょう?」
「………確かにな。お前は強くなったよ」
『ここまで謎のカスタムソルジャー、ブラスター・ウイングを駆って勝利をもぎ取ってきた奇跡のルーキーです!』
二人の会話を無視して、司会のアナウンスは続いていく。
「………行くぞ、ヤマト」
「ええ、闘いましょうか」
二人はそれぞれ自分の機体を発進させる。
「ブラスター・ウイング!」
「ブラックナイト!」
ブラスター・ウイングとブラックナイトが同時にフィールドに降り立った。
フィールドは遺跡ジオラマ。
初めてキリュウと戦った時と同じフィールドだ。
「懐かしいですねぇ、あの時を思い出して」
「そうだな」
「今回は僕が勝ちますけどね」
ブラスター・ウイングがブラックナイトに向かって駆け出した。
ブラックナイトは襲い来るビームジャベリンを盾で何度も防ぎ、反撃に剣を突き出す。
ブラスター・ウイングはそれをかわすとバックステップで距離を取ってビームライフルからビームを発射する。
ブラックナイトはビームをかい潜りながら接近し、ブラスター・ウイングに切り掛かる。
ビームジャベリンで剣を弾き、逆側の刃を突き出す。
ブラックナイトは盾で受け止め、押し出した。
バランスを崩したブラスター・ウイングに切り掛かる。
が、ブラスター・ウイングはブースターを起動させて、地面スレスレを背面で滑空する。
ブラックナイトが近寄らないよう、ビームライフルで牽制する。
ブラックナイトは盾で防いで足を止めた。
「さすがですねキリュウさん。弱い眼鏡の人とは大違いだ」
ヤマトはクスクスとチェールのことを笑う。
「……マルゴイはどうだった?」
「………ああ、そんな人いましたね」
本当に忘れていたようで、ヤマトはポンッと手を叩く。
キリュウは目を細める。
「お前は、戦った相手を尊敬する奴だった。いつだって、相手の良さをリスペクトするような、そんなファイターだった」
「でも、相手は僕のこと尊敬しないし……あんまり大事なことじゃないでしょう」
「お前はいつだって相手を良く見て戦う男だった。なのに………今のお前は何だ!」
キリュウはヤマトを叱る。
しかし、ヤマトはクスクス笑うばかりだ。
「僕はちゃんと見てますよ?その証拠に………未来が見えます。貴方の動きが、僕の勝利する姿が!」
キリュウは拳を握り締め、ヤマトをキッと見つめた。
「もう何も言うまい……俺とお前、どちらが強いか決めるだけだ!」
「ええ、続けましょう。ここからが……銀河の始まりです!」
ヤマトの瞳が、虹色に輝いた。
ブラックナイトはブラスター・ウイングに剣を振るう。
ブラスター・ウイングは巧みに剣を避け、ブラックナイトの空振りが続く。
それでもブラックナイトは果敢に攻め続ける。
その瞬間、ブラックナイトは転倒した。
ブラスター・ウイングが足を引っ掛けて転ばしたのだ。
「くっ!」
ブラックナイトはすぐさま起き上がり、ブラスター・ウイングに切り掛かる。
ブラスター・ウイングはビームジャベリンで剣を受け止め、ブラックナイトを受け流す。
後ろから切り掛かるブラックナイトの剣をかわし、再び切り掛かる前に回し蹴りで吹っ飛ばす。
「スターブースト!」
《スターブースト》
ブラックナイトの体が暗黒に輝き、スピードとパワーを大幅に上げてブラスター・ウイングに向かう。
しかし、ブラックナイトの攻撃は当たらない。
まるでどこから来るのか分かっているかのように鮮やかにかわされ、当たりそうになっても軽くビームジャベリンで弾かれる。
横に振るわれた一閃を変形してかわし、距離を取るとバルカン砲を撃ちながら突っ込む。
バルカンを盾で防ぎ続けるも、ブラスター・ウイングのタックルには耐え切れず転倒する。
変形を解くと地面に降り立ち、ブラックナイトに背を向けたままビームライフルを発射する。
「くっ」
何とか盾で防いで起き上がる。
後ろへ跳んでブラックナイトに近づくと跳んだまま回し蹴りを繰り出し、ビームジャベリンを突き出す。
ブラックナイトは剣を横に振ってビームジャベリンが当たる前に切り付けようとするが、ブラスター・ウイングは身を屈めてかわす。
屈んだ勢いで回し蹴りをして足を払い、宙に浮いてしまったブラックナイトを蹴り飛ばした。
「お兄ちゃん!ヤマトに勝って!」
アムは身を乗り出してキリュウに呼び掛ける。
ゴン太郎とカジオも息をのんで見守る。
アスカはヤマトをジッと見つめる。
ヤマトの成長に、アスカは頬を緩ませる。
「戦えば戦う程強くなる……きっと、貴方なら」
「くっ………」
キリュウは焦っていた。
ヤマトの様子がおかしいのは分かっていたが、まさかここまで強いとは思っていなかった。
(この確実で緻密な操作………付け焼き刃ではありえない。紛れも無い実力だ。なら、この違和感は何だ?)
キリュウはその不安を振り払うように一気に畳み掛ける。
いずれにせよヤマトがスターブーストを使う前に仕留めなければならない。
「使いませんよ。貴方ごときに」
ヤマトは微笑みながらキリュウに告げる。
そして、PCDの操作に戻る。
ビームジャベリンと剣が幾度もぶつかり合い、ビームジャベリンがブラックナイトを切り付ける。
怯んだブラックナイトを思いっ切り蹴っ飛ばす。
「くっ、必殺アクション!」
スペリオルアクション《ナイトナイトメア》
ブラックナイトが剣を向けると、ブラスター・ウイングの周囲が黒い球体に包まれる。
そして、ブラックナイトは剣を何度も振るう。
これで球体の中に斬撃が発生する。
「………馬鹿な」
キリュウは思わず呟いた。
球体の中に斬撃が発生し、必殺技はちゃんと機能している。しかし………音がしない。
機体に斬撃が当たる音がしないのだ。
ヤマトを見ると、PCDを操作している。
「まさか……かわしているのか、見えない中で!」
ブラスター・ウイングは斬撃をかわしていると言うのか。
ブラックナイトの剣が振るわれる度に起こる斬撃はその速度と数からしてかわせるものではない。しかも、見えない空間の中となれば尚更だ。
しかし、現にブラスター・ウイングにダメージは無い。
「駄目ですよ。必殺アクションはこう使わないと!」
スペリオルアクション《JETデストロイヤー》
黒い球体から変形したブラスター・ウイングが飛び出す。
ビームを発射しながらブラックナイトに接近する。
避けようとするが、足場を攻撃された上にビームを何度も喰らって盾と剣が砕け散る。
全身を輝かせたブラスター・ウイングにぶつかり、バチバチと火花をあげながら遺跡に突っ込んだ。
休む間も与えずにブラスター・ウイングはブラックナイトの首を掴んで壁や床に叩き付ける。
そして、ブラスター・ウイングはビームジャベリンで何度もブラックナイトを切り裂く。
そして、ビームジャベリンを振るいながらブラックナイトを通り抜けた。
その瞬間、ブラックナイトの四肢や手足が切り裂かれ、大きな爆発が起こる。
ブラスター・ウイングは、砕け散ったブラックナイトの残骸を肩越しに睨んだ。
鋭い碧眼が輝き、敗者を蔑む。
『……………き、決まったあああああ!今年度の全国大会を制したのは、ブラスター・ウイング。翼ヤマトだあああああああ!』
静まり返った会場も、司会のアナウンスで息を吹き返した。
新しいチャンピオンを讃える声でうめつくされる。
「僕の勝ちですね、キリュウさん」
ヤマトはキリュウにクスクス笑いながら話し掛ける。
キリュウはヤマトに向かい合う。
「ああ、だが今のお前は………いや、やめておこう。負け惜しみは見苦しいからな。ただ、これだけは覚えて置いて欲しい」
キリュウの言葉に、ヤマトは「えっ」 と驚く。
「お前は今日から日本一だ……その意味を、責任を忘れないでおいてくれ」
キリュウはそれだけ言うとブラックナイトの残骸を持って退場した。
ヤマトはただ去り行くキリュウを呆然と眺めていた。
何だか我に返った気分だ。
キリュウの言葉の意味を考える。
しかし、分からない。
勝ったという実感も忘れ、ブラスター・ウイングを眺めた。




