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カスタムソルジャー  作者: バームクーヘン
第2章 炎翼銀眼
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13/25

第13話 ロウズブレイク

翌日、いよいよ全国大会の二日目となった。

準決勝と決勝とあって、観客も前日よりも更に増えて混んでいた。


カジオ達も困っていたが、ラフレの誘いで最前列の席に座ることが出来た。


「最前列でも離れてるじゃないか」


「文句言わないの」


ゴン太郎が愚痴を零し、ラフレが窘める。

さっきキリュウの準決勝が終わり、会場は興奮覚めやらぬ所だ。



「次はいよいよヤマトさんのファイトですのね!」


ラフレは体をくねらせながら心躍らせる。

すると、アムは顔を曇らせた。

それを見てカジオも不安になる。


「ヤマト、大丈夫かな?」


「………酷い目にあってはいないとは思うがなぁ」


ゴン太郎がアムを慰める。

ラフレは状況が分からず首を傾げる。


『さぁーっ!続いてはチェール選手の入場です!』


司会のアナウンスと共にチェールが会場に現れた。

眼鏡をかけ直し、Gキューブの前に立つ。


『束縛のクイーンの名を持つチェール選手の対戦相手は奇跡のルーキー、翼ヤマト!』


続いてヤマトが入って来た。

Gキューブの前に立ち、ジオラマを見つめた。


フィールドは草原のようだ。



チェールはヤマトに話し掛けた。


「まぐれでマルゴイに勝ったようだけど、調子に乗らない方がいいわ。貴方みたいななよなよした奴に実力があるはずないもの」


「………」


ヤマトはチェールの挑発に反応せず、ジッとフィールドを見続ける。

チェールはそれが気に入らないのか、イライラする。


「ちょっと、何か言い返したらどうなの?それとも言い返す根性も無いの!?」


声を荒げるチェールに、ようやくヤマトは反応を返した。



「……ああ、すいません。貴女何か言ってたんですか?相手にしてなかったので」


「な…!?」


チェールはヤマトの態度に唖然とした。

ヤマトは瞳を虹色に輝かせて薄ら笑いする。



アスカは会場に来るとアムの隣に座った。

アムは驚きのあまり声をあげそうになる。


「貴女、!」


「しっ。静かにして。大事になるから」


アムはカジオとゴン太郎に目配せすると、渋々頷いた。

確かにアスカは今パーカーを被っているので騒がなければ周りにばれたりしないだろう。


アムは気になってアスカに尋ねた。


「ヤマトに、何したの」


「だから、そんな心配するようなことしてないわよ。ただ……今、必要なことをしてもらうだけ」


アスカの意図が読めず、アムは口を閉ざした。



「っ、随分生意気なこと言うじゃない」


「先に言ったのは貴女ですけどね」


笑顔で言い放つヤマトにチェールは不快感を募らせる。

そして、自分の機体を取り出した。


「その生意気な口、二度と開けないようにしてやるわ!」


「出来るのならどうぞ」


ヤマトもブラスター・ウイングを取り出し、同時にジオラマに出撃させる。



「ブラスター・ウイング!」

「ロウズイゾルデ!」


二人の機体が同時にジオラマに降り立った。


チェールの機体のロウズイゾルデは黒いボディに銀色のパーツを取り付けた女性型の機体だ。



ロウズイゾルデは自分の武器を取り出した。

ロウズイゾルデの両手に短い鎖が付いたリングが握られる。


ロウズイゾルデはリングを振るった。

すると、空間に歪みが発生してそこから鎖が現れた。

鎖はブラスター・ウイング目掛けて飛んで行く。


ブラスター・ウイングはバックステップで一旦かわすと、ビームジャベリンで鎖を切り裂いた。


「じゃあ、今度はこちらから」


ブラスター・ウイングは空を飛びながらロウズイゾルデに接近する。




「これは、一体……」


チェールはすぐに異変に気付いた。

ブラスター・ウイングは鎖を次々と切り裂いて進んで来る。


しかし、その鎖が現れるポイントが分かる前から移動し、鎖が現れた瞬間に切り裂いている。


そのため、得意の相手を縛って戦う戦法が出来ず苛立ちを募らせる。


「どうしたんですか?イライラしちゃって」


ヤマトは顔をしかめているチェールをクスクス笑い、操作を続ける。


ビームジャベリンがロウズイゾルデの体を傷付け、ブラスター・ウイングは思いっ切り蹴り飛ばす。

そして、起き上がろうとする度にビームを放ち、ロウズイゾルデを弄ぶ。



「く、鎖で縛れていたら今頃………」


チェールは試合の流れを後悔する。

ヤマトはそんなチェールに話し掛けた。


「そんなに攻撃したかったんですか?だったら……」


ブラスター・ウイングはビームライフルとビームジャベリンを両手に持つと、後ろへ放り投げた。




「はぁ!?」


チェールだけでなく、アムやカジオ。会場にいる殆どの人が愕然とした。

ヤマトは一体何を考えているのか。


アスカだけがやれやれ、といった感じで溜め息を付いた。



ビームライフルは芝生の上を転がり、ビームジャベリンは大地に突き刺さった。


「……っ!?馬鹿にして!!」


チェールは完全に頭に血が上り、鎖をけしかける。


ブラスター・ウイングはステップや浮遊でひょいひょいと鎖をかわしていく。


チェールの怒りも限界になる。


「スターブースト!必殺アクション!」


《スターブースト》


スペリオルアクション《ジャッジオブワールド》


ロウズイゾルデの体が輝き、必殺技を放つ。



フィールドの至る所の空間が歪み、今までとは比較にならない量の鎖がブラスター・ウイングを襲う。


ブラスター・ウイングは高速飛行形態に変形すると、鎖の間を駆け抜きつつバルカンを発射する。



「……嘘、でしょ!?」


チェールは愕然とした。

ブラスター・ウイングが捕まらない。


大量の鎖に隙間は殆どないのだが、ブラスター・ウイングの放つバルカン砲により僅かな隙間が出来る。

ブラスター・ウイングはその隙間を潜って鎖を回避する。


しかし、この大量の鎖の動きを見切るのは不可能で、ましてやその隙間を潜らせるなど不可能なはずだが………


しかし、現にブラスター・ウイングに鎖は掠りもしない。



チェールは震えた。

今の今まで見下していた相手が恐ろしくなった。


ヤマトは瞳を虹色に輝かせながらチェールを嘲笑った。


「だめですよ。必殺アクションはこう使わないと!」


スペリオルアクション《JETデストロイヤー》


ブラスター・ウイングの体が紫色に輝き、更に加速して飛行する。


先端から放たれるビームが必要最低限の鎖を撃ち砕き、ロウズイゾルデに接近する。


ブラスター・ウイングがロウズイゾルデに突撃した。

光り輝くブラスター・ウイングに押されてバチバチと火花をあげながら地面を引きずり回される。


地面は固いコンクリートとは違い、柔らかい草原だが潰されるかのように押されているため、ロウズイゾルデはバチバチと悲鳴をあげる。


「こんな所でぇ!」


ロウズイゾルデはがむしゃらにリングを振って鎖を出す。


すると、偶然鎖がぶつかってブラスター・ウイングが離れた。

ブラスター・ウイングは変形をといて地面に降り立つ。


ロウズイゾルデは勢いが消えないまま転がり続ける。

とは言え、一応はブラスター・ウイングから逃れたのだから安心だ。


そんな時、チェールの目にあるものが映った。



ブラスター・ウイングが放り捨てたビームジャベリンが地面に突き刺さっており、それがロウズイゾルデの転がっている先にある。


チェールは必死に操作してロウズイゾルデを動かそうとするが、全く言うことを聞かない。



そして、ロウズイゾルデの背中がビームジャベリンにぶつかり、バチバチと火花があがる。

勢いは止まらず、ロウズイゾルデの体は真っ二つに裂かれて爆発した。


ロウズイゾルデは更にバラバラになって地面に散乱する。



『決まったあああああ!決勝に進んだのは翼ヤマトだあああ!!』


司会の声に会場は盛り上がるが、アム達は唖然としていた。

あれは、本当にあのヤマトなのだろうか………?


アスカはボソッと呟いた。


「今は………それでいい」




チェールが震えながらひざまづいた。

ヤマトは虹色に輝いく瞳でチェールを見ながらクスクス笑った。


「いいファイトでしたね」


「この………」


チェールは言い返そうとしたが、自分の失態を考えると何も言えなくなった。


ヤマトはブラスター・ウイングを丁寧に撫でながら呟いた。


「次は……キリュウさんだね」


ヤマトは次の倒す相手のことを考えて、笑みを零した。

ヤマトには、もう切り刻まれた黒い騎士の姿が見えていた。

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