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第九話 魔物②

「ナナシ、ちょっと下がってて」


ステラさんは魔物と相対しながら言う。

僕は言葉通りに徐々に後ろに下がり始める。

戦闘となれば僕ができることはない。

せいぜい邪魔にならないようにするだけだ。

それから僕が後ろに下がる間、魔物は突撃してくることはなかった。

じっくりとこちらを観察している。

警戒心が強いのかもしれない。


やがてステラさんは僕が十分離れたのを確認すると魔物の正面に立った。

その動きにつられたのか、魔物の注意がステラさんに向く。


僕はその光景を岩の後ろから見ていた。

離れていても伝わる緊張感。

これが戦うということか。


直後、魔物がステラさんめがけて突撃してくる。

それをステラさんは軽快なステップで横に飛び、回避する。

だが、攻撃は終わりではなかった。

そのまま止まることはせず、むしろ、助走をつけながら再度突撃してくる。

昨日のビッグ・ボアと同じ戦い方だ。

だが、威力は数倍だろう。


ステラさんは回避した後、そのままの勢いで走り出し、突撃してくる魔物の正面に入り込んだ。

これでは攻撃に当たってしまう。

僕がそう思ったとき、ステラさんは思いっきり地面を蹴り、飛んだ。

魔物は急に止まることはできず、そのまま突撃してくる。

そうしてステラさんの真下を魔物が通り過ぎる瞬間、僕は見た。

ステラさんの右手に白く光る短剣が握られているのを。

交錯の瞬間、ステラさんは探検で魔物の体を真っ二つにした。

勝負はステラさんの勝ちだ。


「楽勝ね」


そう言ってこちらに来いと手招きをしてくるステラさんに僕は見惚れていた。

とてもきれいな戦い方だったからだ。

一切の無駄がない動きがステラさんが『二級冒険者』だということをはっきりと示していた。

そのまま動かない僕に焦れたのかステラさんが「もう大丈夫よ」と言った。

その言葉で僕はハッとなり、慌てて駆け寄る。


「助けていただいてありがとうございます」

「どういたしまして」

「それで・・・これはビッグ・ボアですか?」

「いや。これは違うわよ。タイラント・ボアっていうやつ」

「タイラント・ボアですか」

「そ。まあ違いと言ったら大きさだけだけど」


そういうステラさんの言葉を聞きながら、真っ二つになったタイラント・ボアを見ていると

少しづつ、灰のようになっていることに気づいた。


「ステラさん、灰みたいになっていってますけど丈夫ですか?」

「あれ、話してなかったっけ?魔物は死んだらそうなるわ」

「じゃあ昨日のやつも・・・」

「まあ、こうなったわね」


昨日はそこまで気が回らなかったけれど、こうやってなくなっていたのか。

そうして数分後、体は灰になり、風で散っていく。

後には紫色に光る宝石のようなものが残された。

それを手に取り、ステラさんは言う。


「これが魔石。魔物は魔力を持ってるって話はしたでしょ。これがその原因」


そうして魔石を僕に見せてくれる。

紫色の宝石のようだ。

やがて紫の光は徐々に消えていき、手元には紫色の魔石が残った。


「光らなくなっちゃいました」

「それは魔力が抜けたからよ。もう一度魔力を流し込めば光るわ」


そういってステラさんは魔石に手を伸ばす。

すると再び、輝きを取り戻した。


「これ、どうするんですか?」

「ギルドで討伐の証拠に使うわ」

「なるほど。これで証明するわけですか」

「そ」

「何かに使ったりするんですか?」

「魔道具に使ったりするみたいよ。そこらへんは専門外だから詳しくないけど」

「一応、使い道はあるんですね・・・」

「まあ、これで金を稼いでるから」


魔石をステラさんに手渡す。

ステラさんは魔石をバッグの中に入れた。

その時、腰につけていた短剣に気づく。

上着に隠れて見えにくいが、さっき使ったものだ。


「ステラさんは短剣で戦うんですね」

「そうよ。魔法も使うけど」

「魔法を使う剣士ですか」


それなら一人で行動していることにも納得だ。

どちらも一人でできるならある程度自由に動けるだろう。


「あの、失礼ですが・・・見せてもらうことはできませんか?」

「いいわよ。ほら」


意外と気安く見せてくれる。

そこまで大きくはないが、白色の宝石のようなものでできている。

光が反射してとてもきれいだ。

表面も透き通っている。


「これでどうやってタイラント・ボアを切ったんですか?」


この短剣では刃が足りない。

ステラさんの何倍もあるタイラント・ボアを一刀両断することは不可能に思える。

ステラさんは自慢げに話し始めた。


「これ、魔法剣なの。魔法剣『リヒト』」

「魔法剣?」

「そう。魔力を流すと効果を発揮する剣のこと。さっきは刀身を伸ばしたの」

「それで、一刀両断ですか。じゃあこれは魔石が使われているんですか?」

「そうよ。それ、フェンリルの魔石が使われてるの」

「フェンリルって」

「神獣とまで言われている魔物ね。もちろん強いわ」

「そんな魔物を倒したんですか?」

「違うわよ。私でもフェンリルには勝てないから。

 これ、母からもらったものなの。故郷を出る時にね」

「とても大切な物ですね」


すると何かを思い出すような顔をしてから、愛おしそうに言った。


「そうよ。私の宝物」


ステラさんは魔法剣をしまって言った。


「教えてくれてありがとね」

「なんのことですか?」

「魔物の襲撃」

「いえ・・・結局戦いはステラさん任せですし」

「そんなことないでしょ。冒険は助け合いよ」


そう言って笑うステラさんはとてもかっこよかった。

僕もふっと笑って「そうですね」と返した。

少しでもステラさんの役に立てたことが嬉しかった。


その後僕らは再び、寝床に戻った。

次はステラさんが見張っていてくれる。

眠る前にもう一度ステラさんにお礼を言うと

ステラさんは「真面目なやつね」と言って笑ってくれた。

寝床に入り、目をつぶる。

僕は頭の中でステラさんの戦いぶりを思い起こした。

どうやら脳裏に焼き付いて離れないみたいだ。

とてもきれいだったな・・・。

そう考えながら僕の意識は深く沈んでいった。




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