第十七話 歓迎会②
「ナナシはどこからきたの?」
ライラがパンをかじりながら聞いてくる。
僕のことが気になるのだろう。
記憶喪失のことを言うべきだろうか。
僕としては隠しているわけではないので言っても問題はない。
「ちなみに私とクルスは『カッセル』ていう村出身。レーナとライオットは『ソーバ』出身だけど」
「ライラとクルスは幼馴染なの」
レーナが付け加える。
「最初にライオットがいて次に私、ライラとクルスっていう順ね」
「そう!だからライオットがお兄さんでレーナがお姉ちゃん!」
確かにそんな感じの印象だ。
「なんでそうなるのよ」
「別にいいでしょ」
「それでナナシは?」
ライラが好奇心を目に宿している。
記憶喪失のことを話すいい機会だ。
ガゼルさんも何も言わないということは、問題はないだろう。
「実は僕、記憶喪失で覚えてないんだ」
僕の言葉を飲み込むのに時間がかかっているのか、少し静かになる。
口火を切ったのはライオットだった。
「それって自分の名前とかなにも覚えてないってこと?」
「うん。だから自分の生まれとか分からないんだ」
「なんか・・・ごめん」
「気にしないでよ、ライラ。僕としてもみんなには話そうと思ってたし」
「じゃあどうやってここまできたの?」
「ああ。それはちょっと長くなるんだけど・・・」
「全然いいよ。みんなもいいよね?」
ライオットが確認する。
こういったところがライオットが慕われる理由かもしれない。
「じゃあまずは僕が森で目覚めたところから・・・」
そうして僕が目を覚ましてからのことを思い出しながら話した。
その間、みんなは相槌を打ちながら聞いてくれた。
「それで、この町で冒険者を目指しているっていう感じなんだけど」
そうして拙いながらも話し終えた。
「そうか。それで冒険者か・・・」
ガゼルさんが言う。
そう言えば、ガゼルさんには記憶喪失であるということしか伝えていなかった。
こうして僕の事情を詳しく知るのは他の四人と同じだ。
「じゃあナナシはもしかしたらいるかもしれない家族や友人を探すために冒険者になったってことか」
「うん。記憶喪失の僕だとできる仕事は限られてくるし・・・それに冒険者は
基本的に自由って聞いたから」
「確かに。それならナナシにとって冒険者は天職かもね」
「じゃあライラもできるだけ協力するよ!人探し!」
「それなら僕も手伝うよ」
ライラの提案にライオットも賛成する。
「もちろん私も。クルスはどうする?」
レーナが横にいたクルスに聞く。
「俺も手伝うよ・・・。仲間だしね」
僕としては一人よりも心強いが、みんなは良いのだろうか。
「僕としては助かるけど・・・良いの?」
僕の問いかけに四人が答える。
「「「「仲間だからね」」」」
「気にしなくていいよ。僕らは冒険者を目指すんだから。助け合いは基本だよ」
ライオットの優しい声掛けに嬉しくなる。
「それじゃあよろしくお願いします」
「あ!敬語禁止~」
やっぱりいい人たちだ。
改めてここにこれてよかったと思った。
そう思っているとレーナが遠慮がちに聞いてきた。
「ところで・・・さっき話に出てきたステラさんってあのステラさん?」
「僕を助けてくれたのはエルフの冒険者のステラさんだけど・・・それがどうかしたの?」
「やっぱり!ステラ・シルフォードさんでしょ!」
「うん。そうだけど・・・」
「いいな~ステラさんと冒険なんて!」
「俺もそれ聞きたかった」
「私も~」
「僕も」
みんな、ステラのことを聞きたいようだ。
「なんたってこの街最強の冒険者だからみんな話を聞きたいんだよ」
ライオットが補足してくれる。
ステラさんは二級冒険者だったはずだ。
強いとは思っていたがこの街最強ときたか。
「それで、ステラさんってどんな感じだった?」
「みんなは話したことないの?」
「そりゃ私たちみたいな冒険者見習いとはレベルが違うでしょ」
レーナの言葉にクリスも賛同する。
「ステラさんに話しかけられる冒険者なんてそういないと思うけど」
「確かにあんまり人づきあいが好きそうではなかったけど・・・そんな感じなの?」
「そうだよ。たまにギルドにいる時見かけるけど、孤高の人って感じ」
「オーラがあるよね」
みんなが口々にそう言う。
僕の知っているステラさんとは全然ちがう。
「僕の知ってるステラさんはよく笑う人だったけど」
「そこ!もっと教えて!」
それからステラさんの話で盛り上がった。
みんなが話してくれるステラさんと僕の知るステラさんの印象は全然違っていて
聞いていてとても面白かった。
ただ、僕がステラさんの戦いぶりをみんなに話すとものすごくうらやましがられた。
やっぱりステラさんは冒険者にとっての憧れなのかもしれない。
そうして話をしていると時間がたってしまい、八時頃になっていた。
「さて、そろそろ片づけるか」
「手伝います」
ライオットとクルスが食器を持っていき、ガゼルさんが受け取っている。
僕はというと、机の上を布巾で拭いていた。
やがて片付けも終わり、そろそろ解散というところで思い出した。
「少し聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何だい?」
ライオットが聞いてくる。
「部屋に照明と時計がないのが気になったんだけど・・・」
「ああ、時計は自分で買わないとだめだけど、照明はあれを使うんだよ」
そう言って指差した先には小さなランプがあった。
「これは何?」
「明かりの魔道具だよ。このつまみをひねると明かりがつく」
そう言ってライオットがつまみをひねるとカチッという音とともに光が付いた。
「おお!?どうなってるんだろう?」
「魔道具ってのは簡単に言うと魔法を使えるようにする道具のことだね。
これは明かりをともす火の魔法を使えるようにするってこと」
「そんな便利なものがあるんだ・・・」
「そう。専門の魔道具製作者がいるんだよね。部屋にはこれをもっていくといいよ」
「ありがとう」
そのまま今日はお開きとなり各々部屋に帰っていく。
「じゃあまた明日!おやすみ!」
「おやすみ~」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
みんながあいさつしてくれるので僕も返す。
そうして自分の部屋に入った僕は早速持ってきたランプを使ってみる。
先程と同じように明かりがともった。
やっぱり不思議だ。
魔道具というものも面白いな。
それから何かしようと思ったが、やることもないので早めに寝るとする。
明日からは本格的に勉強が始まるんだ。
頑張ろう。




