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第十六話 歓迎会①

あれから一通り自分の部屋を探索した。

床に穴が開いているといったこともなく、きれいに使われていたようだ。

それに埃もたまっていない。

もしかしたら事前に掃除をしてくれたのだろうか。

僕は持っていた鞄を下ろし、中身を出した。

中にはあの森で使用した、縄、布などが入っている。

これを見ているとあの日々を思い出してしまう。

といっても数日前なのだが。

そうして一応、部屋を整理した時には日も暮れ、部屋が暗くなっていた。

そういえば明かりが見当たらない。

部屋を見渡してみても、明かりになりそうなものはない。

もしかしたら夜は活動しないのか?

とりあえず明かりのことはガゼルさんに聞いてみよう。

そう思っていると、トントンと扉をたたく音が聞こえた。


「ナナシ?いる?」


この声はライオットだ。

何か用だろうか?

僕はノブを掴み扉を開けた。


「よかった。もう六時過ぎてるけどご飯は食べないの?」

「え!?もうそんな時間ですか?」


そういえば部屋には時計もなかった。

ライオットさんは食堂に現れない僕を気にして声をかけに来てくれたらしい。


「そうだよ。体調でも悪い?」

「いえ。全然大丈夫です。忘れてただけなので助かりました」

「そっか。ならよかった。僕もこれから行くところだから一緒に食べない?」


ライオットさんなりの気遣いだろうか。

とても助かる。


「はい。一緒に食べましょう!」


ライオットさんと一緒に食堂に向かうとクルスさんの他に二人の女の子がいた。

桃色の髪を後ろで束ねた元気そうな子と、肩の高さで切りそろえた銀色の髪の子だ。

どうやら桃色の髪の子がクルスさんに話しかけているようだ。

銀色の髪の子はそばで何も言わず寄り添っている。


「みんな。ナナシがきたよ」


ライオットさんが三人に声をかける。

すると、桃色の髪の子がバッと振り向いて言った。


「彼がナナシ君!?初めまして。私、ライラ!」


ものすごい笑顔で自己紹介をしてくれる。

印象通り、元気な子だ。


「ナナシです。よろしくお願いします。ライラさん」

「敬語じゃなくていいよ~。それと私はライラで!」


肩をバシバシたたきながら言ってくる。


「あ、それ僕も思ってた。みんな冒険者を目指す仲間なんだし、敬語はいらないよ」


ライオットさんもそう言ってくる。


「わかりまし・・・分かったよ。ライオット、ライラ」


今まで敬語で話していたせいか、落ち着きがないがせっかく二人がこういっているのだ。

僕としても彼らと仲良くなりたい。


「いいね~。ナナシは二人とはあった?」


そう言ってライラが目線を向けた先にはクルスさんと銀色の髪の子がいた。


「はい。あ、えっとそうだね。クルスさんとはさっき会ったよ」

「さっき資料室でね」

「そうなんだ!じゃあレーナとは初めてだね」


銀色の髪の子がレーナさんだろうか。


「初めまして。レーナです。よろしく」


淡々と話をする人だ。

ライラとは違って冷静な印象を受ける。


「私もレーナでいいよ。クルスもそれでいいよね」


レーナさんがクルスさんに聞く。


「うん。俺もクルスでいいよ」

「クルスは不愛想に見えるかもだけど、ただ人見知りなだけだから」

「みんななんでそんな普通に話せるんだよ・・・。初対面だぞ」

「ほらね。緊張してるだけだから」

「よろしく。二人とも」


一通り挨拶をしていると奥からガゼルさんの声が聞こえた。


「おーい。準備で来たぞ!」


その声を合図にカウンターに次々と料理が置かれていく。

サラダと、焦げ目のついたパン、それから野菜が入ったシチューだ。それと六人分の飲み物だ。

ふわっとかおる匂いについ、笑みがこぼれる。

とても美味しそうだ。

ライラとレーナがカウンターから料理を運び、机に置く。

ライオットとクルスは周りの席から椅子を運んできた。

瞬く間に、料理と六人分の座席が用意された。


「よし!そろってるな!」


ガゼルさんがこちらに向かってくる。


「今日はナナシの歓迎会だ!」

「「いえ~い!!」」


ライラとライオットが盛り上げる。

クルスとレーナは落ち着いていた。


「僕の歓迎会ですか?」

「そう!ナナシの歓迎会!」

「急だったからいいもんは用意できてねえが許してくれ」


ガゼルさんが申し訳なさそうに言う。


「いえ。全然そんなことないです。ありがとうございます」

「じゃあみんな、飲みもんは持ったな」


ガゼルさんが音頭を取る。

それに合わせてみんなはコップを掲げた。

僕も見よう見まねで同じようにする。


「それじゃ新たな仲間に乾杯!!」

「「乾杯!!!」」


ガシャッとコップをぶつけ合い、一気に飲む。

僕も同じように飲むと、口いっぱいに果物の味が広がった。


「美味しい!!なんですかこれ?」

「ベリーをそのまま絞ったジュースだ。ここらへんでよく取れるんだぜ」


果肉がゴロっと入っているがそれがいい。

これはやみつきになりそうだ。

そのままシチューをスプーンですくって口に入れる。

これもまろやかさで満たされ、美味しい。

鶏肉だろうか。シチューの中の具材は大きめにカットされているがよく火が通っており柔らかい。

口に入れるとたちまち溶けてしまう。


「そいつはパンにつけるとうめえぞ」

「やってみます!」


ガゼルさんの言う通り、パンをちぎってシチューに浸してから食べる。

少し焦げたパンにシチューが染み渡り、優しい味わいになる。

触感もよく、とても美味しい。


「ガゼルさんの料理はおいしいでしょ!」


ライラが自慢げに聞いてくる。


「うん。すごくおいしいよ!」

「だってさ!よかったね!ガゼルさん」

「おう!うまいって言葉は作ってよかったと思えるからな!」

「これも食べなよ」


そう言ってライオットが差し出してくれたサラダを食べる。

野菜もだが上にかけられているものがそれをさらに引き立たせている。


「それ、ガゼルさん特製のドレッシング。美味しいでしょ」

「すごいですね!自分で作っているんですね」

「自分で言うのもなんだがうまいと思うぜ」


恥ずかしそうに言うガゼルさんだったかそう思ってもいいと思う。

それほどまでに美味しかった。


「ちょっとライラ。シチューが服につきそう」

「あ、ありがとう。レーナ」

「もうちょっと落ち着けよ、ライラ」

「だって、新しい仲間だよ!うれしいのは抑えられないでしょ!仕方ないじゃん」

「そうだけど、限度があるだろ」

「クルスだってほんとは嬉しいくせに」

「な!?別にそんなことないし!」

「じゃあ嬉しくないんだ?」


言葉に詰まったクルスが僕の方を向く。


「いや違うからな!」


美味しい料理とともに会話が広がる。

ライラとクルスが言い合いをし、レーナとライオットがなだめ、ガゼルさんがそれを見守る。

なんだかんだで僕も楽しい。

これからもっとみんなと仲良くなっていきたい。




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