プロローグ
初めまして
普段VR・MR・ARといった現実とデジタルがクロスするXR技術のアプリ開発をしているものです。
最先端の技術に触れる中で描いた私なりの未来予想図を物語にしようと思いたって書き始めました。
不定期になりますがぜひ呼んでいただければ幸いです。
澄み切った青空を見ていると、春風千花は決まって同じ光景を思い出す。
「ねぇ、どうしてキミはそんなになってまで空を飛ぼうとしているの?」
『彼』はその言葉に少しの間考えるように作業の手を止め振り向き
オイルの付いた腕で拭ったのか汚れた頬に純粋な笑みを浮かべた。
「そこに空があるから…だね。」
テニスコートより少し広いくらいの薄暗いボロ倉庫の中は『彼』と千花と少し離れたところに監督者であり顧問でもある永洞綾だけがいる。
「君が目指す空には何があるの?」
千花が再び問うまでしばらくの間作業音だけが木霊しボロ倉庫に沈黙が流れる。
「雲に隠れてそれがわからないから探しに行くんだよ」
今度は振り向くことはなく機械をいじりながら答える。
「千花は夢ってどこにあると思う? 僕は夢っていうのは夜空の月に手を伸ばしながら追いかけ地上を走るように、地に足が付いたままだといつまでたってもたどり着けないものだと思ってる…地面から空へ、宇宙へ、羽ばたいて初めて夢へたどり着ける。僕はそれを探しに行きたいんだよ」
そういってスパナをおき汗をぬぐった彼の瞳のまぶしさがとても印象に残っている。
ライトフライヤー号の再現… 百数十年前に生まれた世界で初めての動力付き飛行機の再現
この小さなガレージの中で彼と千花は一つの夢を目指していた。
「千花…僕はね、空に憧れ恋をしているんだ。千花はどうだい?」
「私は…」
あの時の問いに千花がなんと答えたか、今になっては思い出せない。