プロローグ 俺の或る朝
このサイトでは初めましてになるかと思います。
どうぞよろしくお願いします。
カーテンの隙間から光が差し込む。
顔を動かして時計を確認する。
時刻は6時35分
うん、いつも通りの時間だ。…けど寒くて布団から出たくない。
………
いやいやいや!オフトゥン症なんかこじらせてる場合じゃない!
眠い身体に鞭を振るい、俺は布団から這い出る。
…つもりだったが身体が動かない。
原因はどうやらオフトゥン症じゃないようだ。
「お、起きた。おはよ~」
どうやら、誰かが起こしに来ているようだ。
…待てよ?今どこから声出した?
眠い目を擦りながら視線を戻す。
答えはすぐ判明した。彼女が布団の上に跨っているのだ。
まぁいくらお付き合いしている関係と言えど、目の前、顔がくっつきそうな距離に可愛い女の子が居たら、誰だってドキッとするし心臓その他色んなところに悪い。
俺も眠気が吹っ飛んだ。そして固まった。
「むぅ…お・は・よう!」
「いでででででで!!」
わかった!わかったから頬を抓るな!
「おはよう、水姫…そこに居たら起きられないんだけど」
「え?…あぁ、うん」
とりあえず彼女を退かす。そうでもしないと起きられないし、何より眠気とともに理性も吹っ飛びそうになる。
さて、飯食うか。
俺の名前は常磐勝人。
ここから隣の市にある常北学院の高等部2年生だ。
母親も父親も仕事の都合で日本にいない。
父は外国(主にヨーロッパの方)の鉄道で技術顧問をしていて、滅多に帰ってこない。
母はインドネシアのジャカルタ電鉄という会社に行って、日本製中古車の整備を現地社員に指導しているらしい。こっちは3ヶ月に1回くらいの間隔で帰ってくる。
本当ならどちらかでも親に付いていかなければならないのだが、電車の運転士として働く姉も居るので、両親に無理を言って俺達だけ日本で生活している。
因みに、姉は今日は泊まり勤務なので昼前まで帰ってこない。
朝から大胆に起こしてきたコイツは福原水姫。
俺の同級生であり、彼女だ。
栗色のボブカットに整った顔立ち、学校に何人か存在するマドンナ的女子の1人とされている。
たまに今朝みたいな度肝を抜くような真似をする危なっかしい娘でもある。
顔を洗いキッチンで朝飯を食べる。
テキトーにインスタントコーヒーを淹れて、
テキトーにチーズトーストを焼く。
テキトーだと自分も水姫も認識しているが、これはこれで自分達なりのちょうどいい朝飯なのだ。
食べながら鉄道情報の確認。
この家庭で生活しているからか、俺自身も物心ついた頃から鉄オタだ。水姫も、入学前に出会った俺と、その他鉄道サークルのメンバー以外には知られていないが、がっつり鉄道ファンである。
「今日は4月15日、415系の日だってさ」
「415系かぁ。息長いよなあの電車」
「うん。なんか全線復旧した後も水戸発原ノ町行きの運用が残ったみたい」
「マジかよ」
「勝人、寝ぼけてるの?DJ見たでしょ?」
「いや載ってなかったぞそんな情報(雑誌をパラパラとめくる)…あったわ。しかも4往復」
といった感じにゆるく会話しながら食べ終わったら、制服に着替えて忘れ物チェック。
「教材…ペンケース…財布…パスケース…時計…異常無し!」
さて、行くか。
俺は玄関を出て歩き出す。
「ちょっと!置いてかないでよぉ~!」
「毎日忘れ物確認に時間掛けすぎだよ。そのクセ何かしら忘れ物するしなw」
「…(怒)」
痛い痛い!わかったから耳引っ張るなって!
玄関を出た辺りのこれが毎日の日常。こうして1日が始まるのだ。