第二話 入門
現在カルドランドがある場所では、八百年前の災厄で滅ぶまで広大な古代帝国が栄えていた。
突如開いた魔界への〈門〉からは魔物たちと怪異が溢れ、皇女アデレードとともに人々は命からがら西方に逃れ、そこに新たな国ノヴィレグナを築いた。
やがて、皇帝となったアデレードの孫――のちの〈大王〉デレク――と十二人の勇者たちが〈門〉を閉じ、取り戻した地に自らの国を作った。
この場所は建国から今まで変わることなく、冒険者たちの国だ。
フェルネストはデレクのカルドランド奪還の際、拠点として築かれた城砦のひとつだ。オルテンシアの運転する車は城壁まで到達すると、入り口脇に停車した。
門衛として駐屯していた兵士が近寄って来る。彼の興味はボロ車に乗っている、見知らぬ若い男だった。薄い茶髪の優男で、高そうな剣と魔法銃を所持している。
「オルテンシア、ピーマン頭をやっつけたのか? そいつは誰だ、行くときはいなかったよな?」兵士はそう尋ねる。
「蒼穹のごとく、やつらをぶっ潰した。こいつは帝国からジャンプしてきたという……なんだ、Jから始まる名前……ジェリー・ジャクソン、だったか?」
「さっき教えたばっかでなんで忘れてんだい、オレはジェームズ・ジョンソン」
オルテンシアはどうにも覚えられないらしく顔をしかめ、「また忘れそうだな、これからお前のことをジェイと呼ぶ――ギル、こいつはジェイだ。帝都の冒険者だったらしい」
「なるほど帝国のやつか、色々災難だったな。今後はここで冒険者を続けるのか、ジェイ?」ギルと呼ばれた赤毛の兵士が質問した。
今のところそうするつもりだが、帝国とこちらでは色々と違いもあるだろうから、まずは勉強だ、とジェームズ――ジェイは言う。
「なんだ、真面目なやつだな。冒険者なんか魔法をぶっぱなしたり剣で相手を滅多切りにして、それでおしまいっていう話だろう?」
「いいやギル、帝国は塩無しだからな、こちらとは違うだろう。確かに学ぶ必要はある」
オルテンシアはどうにもノヴィレグナに偏見がありそうだな、とジェイは思った。原因はいろいろ考えられる。彼女がエルフである点、王国人である点、あるいは王国の冒険者という自負のせいだろうか? 悪いやつじゃあなさそうだけどさ。
「それで、街に入るための審査はまだ続くのかい?」
ジェイがそう言うとギルは意外そうに、「審査? ああ、ギルド証を見せてくれ。うん、じゃあ終わり。こんなもんだよ、血まみれで生首を携えてるとかじゃない限り。ちゃんと頭は袋に入れないとな」




