表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/63

4-2:退魔

「お前の……森?」

「そうだ!この森は代々あたしの一族が守ってきた!」

「な、なるほど……じゃあ、出口を教えてくれないか?」

「……見たところ、あんたは本当に流れ着いただけみたいだし、いいよ」

案外素直で助かる。

「さっきは失礼したね、うちのが」

「うちの……ああ、さっきの猛獣か」

「ああ、なんだか最近気が立ってるみたいでね……」

女はゆっくりと辺りを見回しながら歩いた。

「そういえば、お前は名前はなんて言うんだ?」

「……答える必要、ある?」

「いや、別に答えたくなきゃいいんだけど」

「じゃあ答えない」

「……」

警戒されているのか、それともただ単に冷たくされているだけなのか……?

「さ、さっき言ってた宗教団体ってなんなんだ?」

無言は辛いので一生懸命話をしようとする。

「ああ、最近何を思ったかこの森によく入ってくる奴らがいるんだ」

「宗教勧誘をしにか?」

「さあ?奴らは宗教じゃ無いとか言ってるけど……まあ、あんたには関係の無いこと」

明確に突っぱねられてしまった。


「さ、ここをまっすぐ歩いて、森を抜けてまっすぐ行けば村につくはず」

「村があるのか?」

「……いくら隔絶されて長いといってもそれくらいの文明はあるよ」

ムッとしたように返された。

「い、いやそういう意味じゃなくて……」

「まあ気にしないよ、どうせあたしは行った事も無い所だし」

「行ったことが無い?」

「あたしはこの森を出ることは許されてないから」

「どういう意味だ?」

「……答える必要は無いよ、さ、行きなよ」

こうまで拒絶されると流石に傷つく。

「ありがとうな、じゃあ、元気で」

とりあえずお礼を言って道を歩き始めた。

「えっ?ああ……うん、じゃ」

戸惑ったような返事が返ってきた。

道半ばで振り返ると、もうそこに女の姿は無かった。

変な奴だった。

まあとりあえず、ここは目指していた『国領外』なのだろう。どうにかしてこの剣の手掛かりを探さなければ。

俺は折れた剣を握り締めた。


……何かがおかしい。

歩けど歩けど森から抜けることができない。

「おかしいな、すぐに抜けられるみたいな言い方だったが……」

とにかく腹が減った。とっとと村とやらにたどり着きたいところだが……

「グルルル……」

腹の虫が鳴き始めた。思えばどれだけ海を彷徨ってたのかも分からないんだよな……

「グルルルルル……!」

それにしても我ながらうるさい腹の虫だ。

「ガアアアッ!」

……ガアアアッ?なんだ今の音……は……?まさか!

「たあっ!」

振り向きざまに剣を抜いて襲撃者を打ち払った。

「ググググ……!」

「やっぱりお前かよ……!」

さっきの猛獣だ。

「お前!しつこいぞ!成敗してやる!」

腹が減ってるのもあって無性に腹が立ってきた。

「来い!」

俺は剣を構えた。……先の無い剣を。

「えっ!?」

辺りを見回すと、さっきの衝撃で折れ飛んだ刃先が転がっているのが見えた。

「嘘だろおい……!こんな馬鹿な話が!あるかよ!」

俺の中の何かがキレた。剣を投げ捨てる。

「だから言っただろ?そんなおもちゃ、役に立たないって」

「!?」

後ろから聞き覚えのある声。

「また会ったね、遭難者」

皮肉めいた口ぶりだ。

「まさかお前!騙したのか!?」

「ああそうさ、悪いね……そいつは大食いなんだ」

なんてこった……今度こそ、終わりだ……

俺は絶望に襲われてしゃがみこんだ。

「グゴアアアア!!!」

猛獣が俺に飛び掛った!……はずだった。

「キャッ……な、何をする!やめ……ろ…!」

背後から恐ろしい声が聞こえる。

俺は弾かれたように立ち上がった。

あの女が猛獣に襲われている……!?

俺の中を凄まじい速さで思考が巡った。

助けるか?助けないか?考えるまでも無く、答えは一つだった。

「う、うおりゃあああああ!!」

唯一の手持ちの武器らしい武器……折れたる封印の剣を思いっきり猛獣に叩きつけた。


「ギャオアアアアア!!!」

恐ろしい叫びを上げ、猛獣は悶え苦しんだ。

「な、なんだ……?」

傷口から黒紫色の煙がもうもうと立ち昇った。

煙は空に消え、猛獣は足を引きずり、森の奥へと消えていった。

「これは一体……」

俺は剣と猛獣の後姿とを交互に見つめた。

何がなんだか分からないが、とにかく助かったらしい。

女は……気絶している。

「やれやれ……」

仕方ない、目覚めるまで待つか……


「はっ!?こ、ここは……?」

「よお、また会ったな、森の主」

「えっ!?」

女は飛び上がらんばかりに仰天した。

「なっ、なんであんたが!」

「色々と言いたい事はあるが、とにかくゆっくり出来るところと……あと食べ物をくれないか」

「まさか、あたしを助けたのか!」

「ああそうだよ」

「どうして!」

「あんま叫ぶとまた倒れるぞ」

「なっ……馬鹿にするな!質問に答えろ!」

「うるさいな、見殺しにされたかったのか?」

「くっ……その……なんというか、その……」

女はしどろもどろになった。

「細かい事は後でいいよ、とりあえず……」

我慢の限界だ、俺は膝をついた。

「何か食うもの……くれ……」

「えっ……ああ、うん……分かった」

女は安堵したような、気の抜けたような言い方の返事をした。


続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ