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借賊(あらすじを読んでください)  作者: 甲斐谷 郡児
第二章:真実を求めて
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第四十話:解放

「おい!お前ら!止まれ!」

……城の衛兵に早速見咎められる。

「は、はい!」

鉄男は大人しく従う。無理に逃げれば却って危険だ。

「……見ない顔だな……もしや」

早速強行突破か……?三人は身構えた。

「ゾルグ様の雇った傭兵か?」

「え?あ、ああ。そうだ」

鉄男は咄嗟に話を合わせる。

「ということは『その時』が来たんだな。クク……俺ももうすぐ大臣になれるってワケだ」

「『その時』……?」

「決まってるだろ、女王の暗殺だよ。あの生意気な小娘を玉座から叩き落すのさ」

「あ、ああ。その話か」

「噂では囚人野郎はその役を断ったらしいぜ……お前たちはその代わりなんだろ?」

「そ、そのとおりだ。よく知ってるな」

「まあな!俺はゾルグ様一の忠臣……すなわち未来のNo.2となる男だからな!」

衛兵は鼻高々に言い放った。

「さあ!無駄話は終わりだ!とっとと準備をしてこい!今日を逃せばチャンスは無いぜ!」

「なんでだ?」

「……お前、聞いてないのか?今日は月に一度の祈りの日で、女王が護衛抜きでいるからだよ!」

「へ、へえ、そうなのか」

「そうなのかってお前……なんか頼り無いやつだな」

「面目無い」

「まあいいさ。とっとと行けよ。早くしないと女王が来て祈りの間の扉が閉じちまうぜ」

「おう」

衛兵は去っていった。


「どうやら女王は今日祈りの間とやらで祈りを捧げる日で、暗殺人はそこにあらかじめ潜む手はずらしいな」

「らしいな、じゃないわよ!あっさりと見つかっちゃって!今みたいなアホじゃなかったら牢屋に逆戻りよ!?」

「ま、まあまあ。結果的にいい情報が得られたじゃないですか」

「ただ……祈りの間ってどこだろうな」

「……それを探すしか無いわね、今度は見つからないように」

三人は再び行動を開始した。


「……というわけで、だ。お前には祈りの間に潜んでもらう」

「なるほど……暗殺にはうってつけの場というわけか」

ゾルグの部屋では、ゾルグと暗殺者の話し合いが行われていた。

「だが、俺なら別に護衛がついていても簡単に殺せるぞ」

紺色の服の暗殺者は自信ありげに言う。

「いや、あの部屋で殺さねばならん……しかも、伝えたとおりの方法でだ」

「何故だ?」

「お前が知る必要は無い」

「……お偉方の考える事は分からん」

暗殺者は肩をすくめた。

「まあ、行って来る」

そう言うと暗殺者の姿は足元から徐々に消えていった。

「ぞっとせん奴め。これでは我輩の命が狙われても気付かんな」

扉が開き、再度閉じてからゾルグは息を吐いた。


「ここが……祈りの間、か?」

しばらく後、鉄男達は神秘的な青い扉の前に立っていた。

「そうみたいですね」

グラントは扉に刻まれた西の大陸の古代文字を読む。

「これは魔法文字と呼ばれる物で、『聖なる祈り』という意味です」

「やっぱり、見覚えあるんだよなぁ……これ」

鉄男が呟く。

「え?でも鉄男さんは東の大陸出身なんですよね?西の大陸の人でも見た事無い人の方が多いですよ?」

「うーん……どこで見たのかなぁ……」

「それにしても、聖なる部屋のはずなのに見張りがいないのは変ですね……」

「普段は誰も入らないから必要無いのかもしれない」

そんな事を話しながら、三人は重い扉を開けた。


部屋に窓は無く、壁と床はくまなく黒に塗られ、白い文字が書かれていた。

そして、中央よりやや奥には剣が突きたてられている。

「ここが……祈りの間か」

やや息詰まるような感覚を覚え、鉄男が呟く。

「まだ誰も隠れてないみたいね」

リディアは部屋を見回した。

「これは……!!」

グラントが壁に書かれた文字を見て目を輝かせた。

「これも魔法文字ですよ!ここまで鮮明に残された物は珍しい……これは解読の必要がありますよ!」

「ほぉ、そんなにたいそうなモノなのか」

「はい!それはもう……えっ!?」

不意に掛けられた声は……鉄男の物でもリディアの物でも無い!

振り返るが二人とも怪訝な顔をしてこちらを見ている。

「お前達は何者だ?こんなところで何をしている?」

空中から声!

「どうみても女王では無いな……」

声がするあたりの空間が歪み、徐々に人型が現れる!

「俺のポリシー。仕事の前に余計な殺しはしない。……今なら見逃してやる」

現れた紺色の服の男は超然と言い放った。

「仕事っていうのは……女王の暗殺、か?」

鉄男が尋ねる。

「答える必要は無い……去るのか?死ぬか?お前達は選べばいい」

「残念だが、俺達は女王を救うためにここにいる」

「……なぜだ?」

「何故って……」

「お前達に女王の何が分かる?俺には分からんが……殺されるのにはそれなりの理由がある。経験測だが」

「だからって……見殺しにしろっていうのか?」

「……ではどうする?俺を殺すか?」

「……それは……」

「俺だってだれかの命を救うために殺しをするのかもしれない……お前にそれを裁く権利は無い」

「でも!」

「殺さずに俺を止めようなんてことは考えるなよ、死なない限り確実に殺す……俺のポリシーだ」

「じゃあそのポリシーを曲げてもらうしかないわね」

いつの間にかリディアが暗殺者に急接近!その目を覗き込む……が!

「えっ!?」

「なんだ、俺の顔がそんなに珍しいか」

フードの奥の顔には目が……ない!いや、それどころか!口以外の顔のパーツは無い!

「仕事柄、顔を隠したがる依頼人が多くてな……こっちから目を潰せば信用してもらえるだろ」

暗殺者は口をゆがめて笑う。

「鼻は邪魔だから取った。血生臭くて敵わないんでな、穴も塞いだんだ」

リディアは息を呑んだ。……狂っている!

「口は一応商売道具の一つだからな、これだけは残してあるんだ……あと耳もだ」

鉄男も身じろぎした。

「そこの……男、身長は……175センチ3ミリ。少し動いたな。目が無くたって見える」

「なん……だと……!?」

「目が無いから隙だらけだとか、間抜けな事を考えるなよ、俺は耳で見る」

しばらくの静寂。誰も動かない……いや、動けない。少しでも動けば、この得体の知れない男に殺される。

「さあ、去るのか?それとも殺されるか?俺はどっちでもいい」

鉄男は考える。

この男……フードで隠れてはいるが相当の痩躯。力比べに持ち込めば……勝てるか。

「勝てるかも、と考えているな」

不意に至近距離から声!

「なっ……!?」

鉄男の目の前には不気味な顔!

「微妙な表情筋の動きで考えてることだって分かる……試してみるか?」

暗殺者は拳を構えた。

鉄男はなるべく表情に出ないよう考える。

無理だ。この動いたことに気付かないほどの早さでは……勝てない。

「悟ったか」

……読まれている!

「なら去れ……そろそろ仕事の時間だ」

「くっ……」

「……!?待てッ!一人……足りんぞ!」

暗殺者は急に声を荒げた。

「呼吸音が二つしかない!あと一人はどこだ!この俺に気付かれず動くなど不可能だ!」

鉄男は辺りを見回し、その元凶を見つけた。

リディアが半透明状態でゆっくり動いている。

リディアには実体が無い。触れることはできるが、それは魂の接触によるものである。ゆえに、本人の許可というものが重要となるのだ。

実体が無いので、当然ながら呼吸の必要は無く、筋肉の収縮音も無い。

つまりは、声を出さなければ暗殺者からは『消えた』ことになる。

リディアは暗殺者の背後に移動し終えた。

そして光弾を溜め始めた!

「後ろかぁッ!」

その音に暗殺者が反応した時には……もう遅い。

「えいっ!」

振り返りざまに顔面に光弾を食らい、暗殺者は吹っ飛んだ。

だが……まだ立ち上がろうとしている!

鉄男は反射的に動き、追い討ちをかける!

「調子に……乗るな!」

だが暗殺者の立ち直りが早い!

「ぐぇ……」

恐ろしい正拳を食らって鉄男は吹っ飛ぶ!

「鉄男ッ!」

「……フン、死なない、か……やはり武器無しではな……」

暗殺者はゆっくりと床に突き刺さる剣の方向へと歩いた。

「これでトドメをさしてやろう」

そして剣を抜こうとする……その時!

「油断したなッ!」

「えっ……」

またも背後で攻撃準備をしていたリディアに、今度は先に攻撃をしかける!

「不自然な空気の淀み……集中していれば読めない物でもない!」

光弾を溜めている状態のリディアは無防備だ!暗殺者の蹴りを食らって吹き飛ぶ!

「そん……な……」

「うおおおおおおお!!!」

暗殺者は雄叫びと共に剣を引き抜いた……!

その時!

「な、なんだこれはッ!?」

グラントがうろたえた。

壁の白文字が……蠢きだした!

文字は形を崩して繋がり一つの輪となり、そして抜き放たれた剣へと収束していく!

轟音!突如として鳴り響いた轟音と共に、天に掲げられた剣は光を放ち……天井を吹き飛ばし巨大な光の柱を作った……!


続く

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