表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/63

第十一話:帰還

「困ったことになった……」

森の中を何やら引きずりながらうろうろしている旅人が一人。白波である。

帰ろうとして目印の木を探すも、一向に見当たらないのである。

「あの色の違う木もこの人の能力だったのかな…」

そういって引きずっている物―――気絶しているジャドを見やる。

「そろそろ日も暮れてきたし、早く森から出ないと」


その頃。

「村長!あいつまだ帰ってないんですか!?」

アジ村村長宅にて、苛立たしげに言うのは鉄男である。

「ぬぅ…確かに遅いな…よもや敗れてしまったわけでもあるまい」

村長も心配したような表情だ。

「だいたい村長が無責任に押し付けたりするから…!」

「そんな事を言ってくれるな鉄男よ…今はただ必ず帰ってくると信じるのだ」

「相手はあの盗賊野郎の本拠地なんですよ!?殺されてたっておかしくは…」

鉄男は浮かんだその不吉な考えを打ち消すように首を振った。

「くそッ!こうなったら俺も行く!村長!防具とか借りていきますよ!」

そういって鉄男は村長宅の倉庫に向かう。

「ちょ、ちょっと待たんか鉄男!」

村長の制止も聞かず、鉄男は飛び出して行った。


アジ村の歴史は長く、村長を務めるのも代々続いてきた家系である。

それゆえ、この倉庫にはかなり古い時代の物まで転がっている。

「何か役立つ物は…これなんか使えそうだな」

そういって鉄男が引っ張り出したのは、蒼い宝石の嵌った腕輪であった。

「他になんか……!?」

それを腕に嵌め、他の物を探そうとした途端、腕輪の宝石が突如光り始めた。

「うおっ…なんだこれ!?」

その輝きはだんだんと増していき、鉄男は耐えかねて目を瞑る。

「なんだったんだ一体…」

光が静まり、目を開けた鉄男の前にはなんと…

「あれ?ここは…?」

鎖に繋がれた大男を引きずった旅人…白波が現れたのだった。


時は少しさかのぼる。

森をさまよっていた白波は、見覚えのある場所へ出てきた。

「ここは…確か」

「オイ貴様!見ない顔……あっ!?貴様は!?」

木の上よりかかる雷鳴めいた声。木の上には…案の定、小柄な男!

「あれ、君…抜け出せたんだね」

白波は驚いたように言う。

「抜け出せたんだね、じゃねぇ!貴様のせいで俺がどれだけ苦労したことか…」

「そりゃ丸っきり逆恨みじゃないか…それより、どうやって抜け出したんだい?」

「うるせぇ!ゴチャゴチャ言うな!今度こそ貴様を倒す!」

そういって男は辺りのツタのうち一本を引っ張った。

「!!」

白波は足に痛みを覚えた。トラバサミだ!

「これで貴様がいかに素早くとも避けることはできまい!俺の勝ちだ!ハッハハハハハハハ!」

笑いながら木から飛び降りる小男!

「くっ、抜けない……」

もがく白波に対し、小男は鉤手甲を構える!

「死ねェ!!」

その時!白波の腕にはまった腕輪の赤い宝石が光を放つ!

「!?」

そして白波は忽然と消失!勢い余った小男は…

「何故こうなるんだあああああああ!」

またも口を開けたままの落とし穴へと呑まれていったのだった。


話は村長宅倉庫へと戻る。

「お前…いつのまにここに!?」

「わからないよ…私にも」

突然の出来事に混乱する白波と鉄男。

「さっきまで森で迷ってたんだ」

説明を始める白波。

「そしたら突然、この腕輪が…」

「光りだしたのか」

「そう、一体何が起こったのか…」

「俺もここでこの腕輪を見つけて…」

不意に、鉄男が白波の引きずる男に気がつく。

「おい、そいつはもしかして…」

「そう、なんとか…やっつけたよ」

「そうか…とりあえず、村長の家まで行こう」

倉庫を後にし、村長の家まで向かう二人であった。


「ふーむ、不思議な事もあったもんだなぁ」

事情を聞いた村長が感心したように言う。

「ほんとですよ、なんなんですかこの腕輪」

「わしにも分からん…そもそも赤い方の腕輪しか存在すら知らんかったわ」

「いい加減な管理だなぁ全く…」

鉄男は呆れたように言う。

「まあとりあえず、この腕輪は二つでセットであり、

別々の者がつけると一方の元に他方を呼び寄せる力がある、ということだろう」

「どういう仕組みなんですかね」

「わしにもさっぱりだ…」

「それより、この人はどうすれば?」

白波が未だ気絶しているジャドを示して尋ねる。

「そうだな、今夜はわしが預かるとしよう。それより疲れておるだろう、ゆっくり休んでくれ」

「分かりました、ではまた明日」

白波と鉄男は村長宅を後にした。


「しかしなあ」

帰り道、鉄男が声をかける。

「なんだい」

白波も返す。

「お前、ずいぶんと変な奴だよな…」

「なんだい急に、失礼な」

「あぁいや、そういう意味じゃあない…普通、ただ立ち寄った村のためだけにこんな面倒事は引き受けないだろ」

「……何でだろうね、自分でもよくわからない…」

「何だそりゃあ、気まぐれってことか?」

「いや、何というか、困ってる人を見ると助けなきゃいけない気がするんだ、何でだろうね」

「俺に聞くなよ…そうだな、お前の失った記憶と何か関係があるのかも…な」

それを聞いて白波は驚いたような顔をした。

「…その考えは無かったな」

「まあ、ただのお人よしってだけかも知れんが、な」

鉄男は笑いながら、そう言った。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ